軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

583 小さな魔王

我こそは魔王アザル。

偉大なる魔族の頂点なり。

年齢は四十七。身長はジュセンチの葉十四枚分じゃ。

……チビじゃないぞ?

体は小さくとも心は大物! それが新生魔国を治める魔王アザルの有り様じゃ!

我が治める新生魔国は、洋上に浮かぶ孤島、スポンチナ島に本拠を置く大帝国じゃ。

孤島と言えども総面積は数十万人を住まわせるに充分あって、もはや大陸と言っても差し支えないほどじゃ!

……まあ、島全土を人里として使えればな。

島の大半は険しい山岳地であり、住居どころか農地にも適さん。

僅かばかりの平地を開墾して作物を育て、そうして何とか生き残ってきた我が国。

そんな我らだが、その祖先は大きく繁栄していたという。

広い大陸に住み、巨大な城砦を築き、数百万の軍隊を率い、世界全体を支配するほどであったという。

その大帝国が消え去ったのは、今より五百年前。

時の魔王が乱心し、触れてはならぬ禁魔法を発動させ、強大なる旧魔国はこの世から消え去った。

その大崩壊から逃れきった僅かな生き残りが、我らの先祖だ。

海を渡り、大陸から離れることで大崩壊から逃げ延びた。

そして幾多の苦難の末にここ、スポンチナ島へとたどり着き、少しずつ開拓を広げ、今日の繁栄となっているわけだ。

今の我々があるのも、先祖たちが勇気をもって海洋に乗り出したから、そうでなければ旧魔国の崩壊によって皆死に絶えていただろう。

過去に感謝しつつ、今を謳歌せねばな。

そんなある日のこと。

我が城お抱えの魔導士が慌てて何か報告してきた。

そいつが研究する通信魔法? というのが出所不明の魔法信号をキャッチしたとか。

何から何までサッパリわからん報告であったが、要所要所を掻い摘んでわかりやすく要約すると……。

『我が国の外にも魔族が住んでいる』

ということらしかった。

えッ? ウソ? そんなバカな? いやマジで?

となった。

旧魔国のあった大陸は大崩壊によって滅び去り、我ら以外にもう人類は残っていないはずじゃなかったのか?

我が国お抱えの魔導士たちを総動員して究明に当たらせ、そして判明したことは……。

・島の外にも人類がいる。

・魔族もきっちり生き残っている。

・というか旧魔国は滅びてない。

歴史に伝え聞く大崩壊は、かつての大陸にあった旧魔国の首都を全壊はさせたが、それだけに留まり魔国自体はまったく無事であったという。

大陸に残った魔族は、やや離れた地点に新しい魔都を作り、そこでつつがなく国家運営を継続させている。

つまり旧魔国はいまだ健在ということだった!?

「なんということだ……!? この世界には我々だけだと思っていたのが違ったというのか!?」

「それでですね、他にも報告せねばならぬことが色々……!」

調査を命じた魔導士が次々言ってきおる。

「調査の結果、大陸にも魔王が存在して旧魔国に当たる国を支配しているそうです」

「何ッ!? 我の他にも魔王がいるというのか!?」

「ちなみに明君らしいです」

いらんわそんな追加情報!

そこをわざわざ強調したら対比して我の方が暗君みたいではないか!

「明君だったら、頑張って命令を遂行した私を褒めてくださいよ」

自分で言うなよ、却って褒めたくなくなるだろう?

……しかし、ここまで詳細にわたって調べ上げた成果はたしかなもの。褒めてやらねば指導者の資質が問われるのも事実だ。

「まあ……、そりゃあ、よくやったな?」

「何で疑問系なんですか?」

「いや、凄いなあと思っているのはたしかじゃぞ? 建国以来五百年、まったく不明のままだった外の情報をこんなに迅速に、かつ詳細に調べ上げたんだから大手柄じゃ」

凄すぎて疑っちゃうくらいに。

「一体どうやって調べたんじゃ?」

「簡単なことです。外世界の存在を知るきっかけとなった魔法通信。それをより突き詰めていくことで外界の者とコンタクトをとることに成功したのです。魔女プラティは、我々の求める情報を逐一丁寧に提供してくれました」

ふーん。

「それどころか、こちらが望むのであれば大陸にある旧魔国の首脳と橋渡しもしてくれるそうです。魔王様、いかがいたしましょう?」

「え? そんなところまで話が進んでいるの?」

我が思った以上に展開速くてしんどいくらいなんじゃけど?

ううむ、どういたそう?

国外との対話など、我が新生魔国始まって以来一度もないことじゃ。前例がないからどうしていいかわからず我ドッキドキじゃぞ?

「僭越ながら意見申し上げます。魔王様は、是非とも大陸の旧魔国と会談を持つべきかと」

お、おう?

推すのう……?

「魔王様もご存じの通り、我らが国情は日一刻と悪い方へ進んでおります」

そんなん言われんでもわかっておるわ!!

所詮孤島の国じゃからのう。

利用できる国土も狭く、そこから生み出せる資源の量も限られておる。

その資源で賄える国民の数ものう。

建国以来五百年。

その間争いらしい争いもなかったおかげで順調に人口増加し、ポコポコ生まれては増え続け、そろそろ島内で養える限界人数を突破しようとしてるんじゃ。

このままでは間引きでもしないと国全体が立ち行かなくなってしまう。

もちろんそんなことはしたくない。

王として一人の魔族として、人間性を捨てぬままに問題を解決する方法といえば、精々新天地を探し求めて開拓希望者を送り出すことぐらい。

それですら棄民政策のそしりは免れぬ。

しかしそれでも万全を期して新土開拓を成功できるようにと研究させたものの一つが通信魔法でもある。

たとえ離れていても連絡を密に取れれば本国からの支援も取りやすいと考えたのじゃ。

それが思わぬ結果を呼び込んでしまったが……。

「旧魔国は、広大なる大陸にありますので人を受け入れる余裕もあるはずです。是非ともあちらの魔王と交渉し、問題解決の糸口を探してはいかがでしょう」

「そうさの……!」

魔導士の意見にも一理ある。

我が国に収まり切れなくなった人口を旧魔国に引き受けてもらえば、海の向こうにあるかもわからぬ新天地に懸けるよりもずっと安心確実じゃ。

そのためにもう一人の魔王に会って、頭を下げることも一国の王ならすべきじゃろう。

しかしながら……。

魔王である我が……。

本来たった一人であるはずの魔王たる我が他人に頭を下げるなどと……。

「いいじゃないですか。元々低いところにある頭なんだから、どれだけ下げても」

「誰がチビじゃああああああッッ!!」

我は小さくない!

モノの長さを示すのに使われるジュセチの葉十五枚分ぐらいの身長はあるわい! 詰めればな!

「大体、下げるなら向こうこそが頭を下げに来るべきじゃろう!? 我こそ旧魔国から正統な流れを受け継ぐ本当の魔王じゃぞ!?」

「いや、元々の国土はあちらなんですから、その主張は無理筋では?」

「そんなことないもん!!」

我こそ正当なる魔王!

真なる魔王!

そうじゃ、これより公文書にはこう記録せよ!

我が国の呼称は真魔国!

正当なる流れを受け継いだ本当の魔国だと!

そして我は真魔王!

この世にただ一人の正真正銘の魔王だと!

それ以外はニセの魔王とか、魔王の亜種よ! 大陸に住むという自称魔王などはな!

よし! 大陸のニセ魔王に伝達せよ!

我が上でお前が下!

『我らこそが魔族の正統であるから、お前たちは従え』とな!

「そ、そんなことを言ったら戦争になってしまいますよ! せっかく再会できた同族なんですから、もっと親しく接しないと!」

「煩いわ! こういうのはなんだ、強気に出ておかないと舐められるんじゃよ!! 外交とはそういうものじゃ!」

外交とかしたことないけどきっとそうじゃ!

我は我のやり方で、新生魔国……もとい真魔国の新しい未来を切り開いてみせるぞ!

* * *

それから数十日ほど経って。

我が政務に精励している間、急遽結成された外交チームは旧魔国との交渉を進めていたようじゃ。

ある程度まとまってきたようなので、我へ報告しにきた。

「旧魔国より提案がありまして……受けるかどうかの採択をお願いいたします」

「何を提案してきたというんじゃ?」

「親善試合です」

急遽、外務大臣に就任させた魔導士が言う。

旧魔国の連中が言うには、五百年もの間断絶のあった両国はお互いのことをほとんど知らない。

交渉を円滑に進めるためにも相互理解は必要不可欠であり、そのために試合を行おうという。

何故ならば、戦いこそが至上のコミュニケーションだから!

「なるほど……強さこそが重要という魔族の価値観を向こうも失っていないということじゃな?」

よかろう。

そういうことなら我が真魔国の精鋭を選りすぐって試合に出場させようではないか。

そして全戦全勝し、格の違いを見せつけ、どちらがどちらに従うべきか教えてやろう!

どちらが真の魔国であるかを!!