軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54 副官の奮起

魔王さんとアスタレスさんばかり注目されるが、新たな住人は彼らばかりではない。

アスタレスさんと共に転がり込んできた魔族副官。バティとベレナも相変わらずここに居座っている。

そんな彼女たちにも、ある変化が起き出していた。

* * *

「聖者様、ご相談があります」

と言ってきたのは二人娘の片割れ、バティだった。

いつもは大抵ベレナと二人一緒に行動しているのに珍しい。

「聖者様は、衣服をご所望なのだとか」

「よく知ってるね。誰から聞いたの?」

正確には、プラティのような女の子が着るオシャレな服だけど。

衣服自体は俺でも作れるのだが、ファッションセンスの問われる部分はさすがの『至高の担い手』でもどうにもならい現状。

仕方なく、俺の作った『衣服としての機能を果たすだけの衣服』は、俺やオークボたちの専用となっている。

最近じゃプラティだけでなくアスタレスさんやベレナ、目の前にいるバティと女メンバーも増えたので、棚上げにしていたオシャレな服の購入はますます喫緊の問題となっているのだが……。

「実は私、実家が縫い物屋をしておりまして」

「ほう?」

「とは言っても片田舎で繕い物をする程度の小店だったんですが。店が潰れて、御飯のために魔王軍に入り、運よく出世できたところにアスタレス様の目に留まって、四天王副官にまでなることができました」

「なるほど」

何か来ている予感がグイグイする。

「ですが親から習った縫い物の技を、この手はいまだ忘れてくれず、いつの日か自分のデザインした服を流行らせたいという夢を秘めながらアスタレス様の下で働いてきました。無事軍役を勤め上げることが出来たら、退職金を元手に服屋を開こうと思っていたんですが……!」

いいね、この流れはいいね。

「ここで作らせてくれませんか? プラティ様やアスタレス様が喜ぶような衣服を!?」

「素晴らしい!!」

これこそ渡りに船。

ずっと棚上げにしてきた問題の解決法が、向こうからやって来た。

「好きに作ってくれ! 服作りに集中したいなら畑仕事を休んでもいいぞ! 今俺たちがもっとも求めているのは、それだからな!」

「あざっす!!」

交渉が成立した。

「使いたいものがあれば何でも言ってくれ! 針やハサミ道具全般はオレが作ったものがあるし、原料の糸や布もちゃんとある!」

主に栽培した綿花から作った木綿生地が!

「そのことなんですが、聖者様……!」

「なんだ? 改まった口調で……!?」

「聖者様が育てた不思議な植物で作った生地もいいのですが……。まだありますよね? 他にも」

「!?」

目ざといヤツめ! あれに気づいたというのか!?

それは、先生のところから卵を産む鳥モンスター、ヨッシャモを譲ってもらったことが発端になっての話だ。

ヨッシャモの発見を機に、俺は思った。

『ダンジョンには、もっと他にも役に立つモンスターがいるかもしれない』と。

そこで先生の洞窟ダンジョン、ヴィールの山ダンジョンに発生するモンスターを一体一体洗い直してみた。

そこで発見した。

プラティやヴィールなどは「こんなモンスター何の役にも立たない」と捨て置いた一種に、俺の興味は釘付けとなった。

それは一見してただの芋虫だった。

動きはトロいし、醜いし、食べられる部分もないしで一見何の役にも立たなそうな芋虫モンスター。

大きさも普通の芋虫と比べて一回り大きい程度。モンスターだから蝶に羽化したりもせず、ただひたすらダンジョンを這いまわるだけの無意味存在らしい。

あまりに存在が無意味すぎて名前すら付けられなかった芋虫モンスター。

ソイツが、糸を吐いた。

――お蚕様じゃあああああああああッッッッ!?

と叫んだね、発見したその瞬間。

俺が元いた世界で、布製品の最上級品シルク=絹。

それは蚕という蛾の一種が、幼虫の時期に作る繭が原料となっている。

その蚕と同じように糸を吐く芋虫に、俺はピンと来たのだ。

すぐさま持てるだけ持って帰り、家で飼うことにした。

庭先で土ほじってミミズとか食ってるヨッシャモどもがハンターの目で見てきたので、迂闊な場所では飼えない。

屋敷内の一室を丸ごと『お蚕部屋』にして大切に育てていると、狙い通りに糸を吐いた。

その糸を材料にして機織りし、モンスター蚕による絹織物を作成してみた。

現物は、既にある!

「それを嗅ぎつけたわけか……! やるなバティ……!」

別に隠したつもりはないけれど、プラティやヴィールからはずっと理解されず「虫気持ち悪い」「部屋を無駄にするな」とさんざん言われていたので、やっと俺のやりたいことを理解してくれる人に出会えて嬉しい!!

「虫が吐く糸を材料に布生地を作るなんて、さすが聖者様。発想が斬新すぎます! チラッと現物を見させていただきましたが、魔都にあるどんな高級な布地よりも綺麗で丈夫そうでした。是非とも私に、あの布地で服を作らせてください!」

「いいとも!!」

拒む理由がなかった。

せっかく極上のシルク生地を作っても、それを衣服に変えてくれる仕立て人がいなければ話にならない。

その仕立て人が、探すまでもなく向こうから現れたのだ!

俺は彼女にすべてを任せることにした!

俺が育てて作り上げたシルク生地を、バティ、キミに託す!!