軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

547 対決、銀狼vs金蝙蝠

こうして開催当日となりました。

チキチキ! 第三回風雲オークボ城ッ!!

前回前々回と好評だったのが、今回さらに話題を呼んで参加希望者が最高記録を塗り替えました!

どこまで行くんだオークボ城!

というわけでこれまで同様、賑やかにお送りしていきたいと思います。

オークボ城があるのは、人間国はダルキッシュさんの治める領内。

普段は閑静なこの土地も、今日だけは都会のごとき大賑わい。

見物人だけでも地を埋め尽くすようであり、それらをターゲットにした出店も並び、レタスレートの豆屋さん、ヴィールのラーメン屋など大賑わいだ。

そして今回はさらに人気を呼び込む特別企画が用意された。

それこそS級冒険者。

シルバーウルフ&ゴールデンバットの真剣勝負。

本戦に先駆けて、人族の頂点に立つ二人がオークボ城の並みいるアトラクションに挑戦していただくこととなった!

そのことを開会の辞で告げると同時に、会場は大興奮に包まれた。

「ゴールデンバットだとおおおおッ!?」

「シルバーウルフ様ああああああッ!!」

「栄えあるS級冒険者の二人が出場されるなんてとんでもないことだべえええッ!!」

「どこまで凄いことになるんだ、このオークボ城はよおおおおおおッ!?」

そこかしこから歓喜と戸惑いの声が上がる。

それもこれもS級冒険者というビッグネームゆえ。

いつか誰かが言っていた『S級冒険者は、人間国では魔王以上の名声をもつのだ』という指摘がまたしても証明されることとなった。

これよりセレモニーとして、すべての行程に先んじて最高の二人にオークボ城アトラクションへと挑戦してもらう。

しかもただアトラクションをクリアすればいいというわけではない。

そりゃ人類最高クラスの能力を持った二人。『クリアすることは当たり前』という前提で、二人にはより高度な『競争』をしてもらうことになった。

つまり『どちらが先に全関門をクリアできるか?』という速さを競い合う。

二人だけで同時にスタートし、オークボ城のすべての関門を潜り抜け、天守閣へとたどり着く。

先にゴールした方が勝ち。

全冒険者の最高峰に立つ二人の、どちらがより優れているか白黒ハッキリつけさせるという世紀の一戦でもあるわけだ。

そりゃ会場は沸きに沸き返ることだろう。

「すべて計画通りにゃーん!!」

関係者席からふんぞり返っているのはもう一人のS級冒険者。

猫の獣人ブラックキャットさん。

その他のS級冒険者もオークボ城の盛り上げに協力してくれているが……。

ピンクトントンさんは自営特設リングでファンとの触れ合いプロレスとか。

カトウさんはトランポリン芸を披露したりとかそれぞれ独自のデモンストレーションに余念がない。

「この人だけ何もしてない……?」

「何を言っているにゃーん!? 私はこの歴史的一戦の仕掛け役として一番活躍しているにゃーん!!」

コイツ、プロモーター気取りか!?

「私の深遠な考えを知るにゃーん! ただ盛り上げたいならS級冒険者全員で勝負させるのが本命。オールスター感が出て興奮するにゃーん! それなのにあえて選手を二人だけに絞る! その意図とは!」

答えはCMのあと!

とでも続けてきそうな勿体ぶった口ぶり。

「S級冒険者は特別にゃーん! しかしその中でも特に特別なのが、あの二人にゃーん!!」

S級冒険者は、四天王などと違って明確なチームではない。

あくまで階級だ。

あまりに厳しい審査基準のため常に片手で余る程度の人数しかいないので、一括りにされがちだが。

そして最強世代と名高い今のS級冒険者にも、明確な序列が付けられているという。

なんと言っても最高格、序列一位のゴールデンバット。

それに続く序列二位シルバーウルフさん。

序列三位ブラックキャット。

「まあ世間からの無責任評価にゃーん」

「ピンクトントンさんとカトウさんは四位五位?」

「あの二人は総合力でこそ上位に入らないけど、一点突破の個性があるからにゃーん。何しでかすかわからないジョーカー扱いにゃー」

なるほど。

ならば今、勝負の場に立っているゴールデンバットとシルバーウルフさんはまさに全冒険者のツートップ

ナンバーワンとナンバーツーの戦いともなれば、そりゃ盛り上がることであろうよ。

「もしもシルバーウルフちゃんが勝てば……序列一位の交代にもなりかねないにゃーん! その期待で会場は沸騰にゃーん!?」

「え? なんで?」

皆なってほしいの?

シルバーウルフさんこそ全冒険者の頂点に?

「当たり前にゃーん? アレを見るがいいにゃーん」

ブラックキャットの指し示す先。

そこには既にスタート地点に立って『よーいドン』の掛け声を今や遅しと待つ一流冒険者二人の姿があった。

「成り行きではあるが面白い展開になったな。そう思うだろうシルバーウルフ?」

先に声を放つのは現一位のゴールデンバット。

蝙蝠の獣人である彼は、何とも形容しがたい蝙蝠ヘッドの持ち主で、その点狼の獣人で、犬顔のシルバーウルフさんと共通する趣がある。

ただ蝙蝠の顔って……。

俺も詳しく見たことがないから何が正しく蝙蝠顔なのかもよく知らない。

ただやはり聴覚自慢だけあって耳の造りが物凄く、特徴的だ。

「オレはかねてからお前を完膚なきまでに叩きのめしたいと思っていた。お前の存在が目障りだからな」

「…………お前の方が私より上だろう?」

かねてより準備されていた魔法拡声器で、二人のちょっとした会話も数万といる全観客に余すことなく伝わるようになっています。

本当に用意がいいなウチのスタッフは!?

「本戦前のマイクパフォーマンスは盛り上げの本命にゃーん!!」

コイツの指示か!?

それはさておきスタート地点での対決ムードは否が応にも白熱する。

「フン、オレがナンバーワンであることなど当たり前。そこに得意になったり苛ついたりする理由などいない。しかしシルバーウルフ、お前がオレに続くナンバーツーの冒険者であることには歯痒い思いをしていた」

「なんでだよ?」

二番目が一番目を煙たく思うのはわかる話。

上へ行こうとするのに、ありきたりな障害であって目の上のたん瘤だからな。

しかし上が下を目障りに思うってどういうことだ?

この不条理に居合わせた観客全員が首を捻った。

「お前は、全冒険者の中で唯一オレの域に達する可能性を秘めた男。それなのにお前は自分の才能を無駄に扱っている。協調だ組織だと無意味なことにかかりきり、冒険者の本分を忘れている」

「冒険者ギルドの存続のためだ。ギルドあっての冒険者だろう」

シルバーウルフさん不動の言い返し。

「多くの冒険者が、ギルドの相互扶助なくして活動を続けることはできない。組織の世話になった一人一人が組織に恩返しすることは正しいことだ」

「それはオレたちのような一流には当てはまらない。組織に頼らねば冒険者としてやっていけない三流などに、お前という一流が煩わされる。それこそが才能の無駄使いだと言っているのだ」

「私もまた駆け出しの頃はギルドの世話になってきた。ギルドから紹介された先輩冒険者たちにたくさんのことを教わった。その恩を返し、今度は自分が後輩を導く。ただそれだけだ」

「そうして無駄にしている時間を自分の冒険に費やせば、もっと大きな成果が上がっていたろうということだ!」

「その成果も引き継ぐ者がいなくては意味がない」

なんか思った以上に白熱した舌戦になっている。

あの二人、今日こうして対決の舞台を整えられる以前から確執があったということか?

「アイツらは冒険者としてのスタンスが真っ向から対決してるにゃーん」

傍から見守るブラックキャットが『クックックこれは面白くなってきたにゃーん』と言わんばかりだ。

「探究、発見、一獲千金。……それらのロマンを純粋に追い求めるのがゴールデンバットの信条なら、シルバーウルフはギルドに奉公することで冒険者全体を支えていこうとするスタンスにゃーん。考えの違う二人はことあるごとに衝突してきたにゃん!」

そんな二人を一対一で戦わせる。

その狙いは!

「お前の蒙を啓いてやろうと前々から思っていたが今日こそまさにその好機! 完膚なきまでに叩きのめし、お前がどれだけ時間を無駄にしたか教えてやろう!」

「言いたい放題ぬかしおって……! だったら私もお前を正面から叩きのめしてプライドをへし折ってやるまでだ!!」

周囲も『ウオオオオオオオッッ!!』と盛り上がる。

ゴールデンバットとシルバーウルフ。

考えの違うトップ冒険者二人。その主張と誇りを懸けた争いに興奮も湧き起こるというものだ。

「いい感じに盛り上がってきたにゃーん!! あの二人だけで争わせたら、ああいう感じにプライドを懸けてくるのは必至。お遊びムードも消し飛んで真剣勝負の緊張感にゃ!!」

出来上がった空気のヒリつきように満足しているブラックキャット。

ここまで計算してのことであったなら、イベントを盛り上げるためなら手段を選ばぬ、まさに策士!?

「さあ争うがいいにゃ! この一戦が冒険者ギルドの明日を決めると言っても過言じゃないにゃー!!」

あの……?

これ、そもそもはオークボ城のセレモニー企画であったはずなんですが……。

いつの間にか冒険者の未来とプライドを懸けた戦いに!?