軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

545 ダンジョン三昧

「悲しいにゃーん! 始まった瞬間終わりなんて悲しいにゃーん!!」

「卑怯だぞ! 主と言えばダンジョンの最奥で待ちかまえているものじゃないのか!? それが何で入り口にいる!?」

S級冒険者のブラックキャットさんとゴールデンバットさん。

初見ダンジョンの探索無事終了。

理由、ラスボスが入り口にいたから。

初見殺しとかハメ技とかが可愛く思えるほどの極悪設定。

先生のダンジョンに無断で挑む者は皆こうやって死ぬのだ。

「しかし! どんなダンジョンにも攻略法は必ずある!」

「「な、なんだって!?」にゃん!?」

シルバーウルフさんがしたり顔で言う。

「ヒントをやろう。このダンジョンのノーライフキングはただのノーライフキングではないということだ! 強さという点でもそうだが、そもそも普通の凶悪残忍な不死王と遭遇したなら我々はここまでダラダラと話し込めるものか!?」

「そう言われればたしかに……?」

「今までの経験から鑑みるに、私らとっくに皆殺しにされてないとおかしくないにゃー……」

しかし彼らは生きている。

それの意味するところは……。

「つまり先生は、普通では考えられない話の通じるノーライフキングなのだ! 礼儀を尽くしてお願いすれば、ダンジョンに入ることを許可してくれる!!」

シルバーウルフさん……?

「ヒントって言いつつ、答え全部丸明かししてるじゃないですか?」

「『礼儀を尽くす』『お願いする』とかいう発想がコイツらから出てくるのかっ? て語っている途中から不安になったものだから……!」

この二人の態度とか見ているとシルバーウルフさんの危惧は大いに同意できた。

「せっかく友好的な先生に失礼な態度をとったらどうしようもないし、ここは私が率先して模範を示し……!」

シルバーウルフさん、先生に向かって頭を下げて言う。

「ダンジョンを探索させてください! お願いします! ……そら、お前たちも倣わんか!」

「お、お願いしますにゃーん!?」

シルバーウルフさんの迫力に圧され、頭を下げるS級二人。

それに対して先生は。

『うむ、いいよ』

「「「やったー!!」」」

いつものように寛大だった。

いつも通りの先生だ。

『礼儀作法は大事なのでな。お前たちも一等の肩書きを持ち合わせるなら、それに相応しい立ち居振る舞いで後輩たちの模範となるのじゃぞ』

「はい、わかりました!」

返事がいいのはシルバーウルフさんだけだった。

「よーし! 許可が出たから早速探索に行くのにゃーん!!」

「最初に最下層へ達するのはオレだ! 発見が叶わなかったらせめて制覇はオレが初達成する!!」

他の二人はもう興味がダンジョンに絞られ、他のことなどかまいもせぬと突入する。

「もうヤだコイツらあああああッ!!」

泣き崩れるシルバーウルフさん。

『おぬしも苦労しておるのう』

そんな彼を、先生が肩に手を置き慰めた。

* * *

そしてダンジョンへ本格突入する一流冒険者二人。

しかし人間としても一流かと言うと、二つは必ずしも一致しない。

「おおおおッ! ダンジョンの内部は整っているぞおおお!!」

「主ありダンジョンの基本的特徴にゃああああんッ!!」

「出てくるモンスターが秩序だってるぞおおおおお!!」

「欲しい素材がある時狙いやすいにゃああああああんッッ!!」

「行き止まりがあるぞおおおお!」

「こっちには階段があるにゃあああああん!」

「階段下りるぞおおおおお!」

「下りたら上がるにゃああああああ!!」

……。

感動しすぎて日常の何気ない一つ一つが大切なことみたいになっとる。

嬉々としてダンジョン探索するゴールデンバットさんとブラックキャットさんは、まさにテーマパークへやってきた子ども並みのハイテンションであった。

「まあ、生粋の冒険者が初めてのダンジョンに入ったらああなるよな。仕方ない」

シルバーウルフさんが黄昏れるように言うのだった。

先生のダンジョンは、俺たちが素材回収しやすいようにかなりまとまって整理されている。

だから行こうと思えば最下層まであっさり行き着けてしまう。

ゴールデンバットさんとブラックキャットさんの二人も、そもそもが一流冒険者であるだけにあっさり制覇。

それでも出てくるモンスターの貴重さに圧倒のご様子だった。

「よぉし! 次は近くにあるというドラゴンのダンジョンだ! 行くぞブラックキャット!!」

「ちょっと待つにゃん……! 感動しすぎて脇腹が痛いにゃん。休憩挟むにゃん……!」

「ああもう! これだから三流冒険者は……!?」

そしてなおも新たなダンジョンを求めようとする貪欲さ。

その飽くなきハングリーさが彼らをS級まで押し上げたのか……!?

「しかし感動するだけ屈辱的だな……。何故このダンジョンを最初に発見したのがオレではないのだ……!」

なんかよくわからない文句を言うS級冒険者の人。

「ゴールデンバットは、新発見ダンジョンの最多記録を持っているからな」

シルバーウルフさんが説明してくれる。

「誰の目にも触れてない未発見ダンジョンを見つけ出すのは、冒険者最大の功績の一つなんだ。その功績を何度も積み上げてきたヤツにとっては、自分以外の誰かが新発見をするのは悔しいことなのだろう」

このダンジョンは俺始め色んな人の目に触れてきておりますが……!?

『たしかににゃー! コイツの探究心は場合によっては迷惑なのにゃー!』

「うわッ? 博士?」

ブラックキャットさんの発言かと思ったら違った。

いきなり肩に飛び乗ってくる猫。

ただの猫と思うなかれ、姿形こそ猫であるが、その正体は不死の王ノーライフキングの一人、その中でももっとも長く生きる通称、博士だった。

「うわー、博士にゃん! お久しぶりですにゃん!」

『貴様も、日々弛まず猫道を研鑽しておるかにゃー?』

ブラックキャットさんと博士。

同じ猫キャラとして二人揃うとにゃーにゃー煩い。

こないだのダンジョン攻略競争で遭遇して以来なかよしになった模様。

「それよか博士、さっきの口ぶりは何です? なんだかこの人を知っていたかのようですが?」

「はあ、何を言っている? しゃべる猫の知り合いなどブラックキャットだけで充分だぞ?」

ゴールデンバットさんも博士に面識はない模様。

『まあ、知らないのも無理ないにゃ。記憶を消してるからにゃー』

「え?」

『コイツのダンジョン発見癖はいい迷惑なのにゃ。ワシは自分のダンジョンを人目に晒したくないのに、迷惑顧みず見つけ出してくるからにゃー』

そういえば前に言ってたっけ。

博士は、あまりにも長く存在し続けて朽ちかけになった本体を、自分のダンジョンに封印して隠している。

そこから精神波的なものを発して、受信した猫を通して世界を見ているのが博士だ。

つまり本拠地に隠された本体は、博士の急所であって居場所を知られてはマズいのだ。

『博士のダンジョンがどこにあるか、正確な位置はワシも知りませんの』

先生ですら把握できていない、完全未知の博士ダンジョン。

「そんなダンジョンがあるなら必ず見つけ出してやる! オレの次の目標は決まったな!!」

話を聞いて喜び勇むゴールデンバットさんであったが……。

『見つけてくるから困っているにゃ』

「え?」

『それも何度も何度も。見つけられるたび記憶を消して人里に帰しているというのに、それでもまた見つけてくるから厄介にゃ。かれこれ十回以上は記憶消してるにゃ』

「え? え? えええ?」

自分でもわけがわからず、目をパチクリさせるゴールデンバットさん。

居合わせたシルバーウルフさんやブラックキャットさんも圧倒され言葉を失う。

『しかし博士も情け深いですのう。他のノーライフキングなら自分の領域を侵された時点で殺しておるでしょうに』

『殺したら殺したで、あとのヤツが続いてくるから厄介なのにゃ。記憶ごとなかったことにするのが一番いいのにゃ』

つまり、このダンジョン新発見が得意なS級冒険者は、自分が忘れたことにも気づくことなく、同じダンジョンを新発見してきたと?

その事実すら忘れていると。

『この際だから言っとくけど、ワシのダンジョンはもう見つけてくれるなにゃ。そのたび記憶消して送り返して面倒なのにゃ』

「オレは、実は自分でも知ってる以上にダンジョンを発見していた……!?」

同じのを何度もな。

彼も彼で恐ろしい才能と精神の持ち主なのかもしれない。

『ついでに言っておくと、ここのダンジョンもそうにゃ。聖者は、自分の住処が大っぴらになることを望んでいないにゃー』

『そうですな、ワシやヴィールのダンジョンが冒険者ギルドに登録されたら、聖者様の農場も騒がしくなるでしょうな。聖者様に迷惑をかけてはなりませぬ』

先生まで一緒になって言う。

『今日もコイツらの記憶消しとくにゃー、それが一番後腐れないにゃ』

「「えええええええええッッ!?」」

それを聞いてダンジョンジャンキーの二人、ゴールデンバットさんとブラックキャットさん揃って世界の終りのような悲鳴を上げる。

「そんな待ってくれ! こんな素晴らしいダンジョンと出会えたというのに、忘れてしまうというのか!?」

「それはないにゃーん!! 勘弁してくれにゃん! 私と博士の仲にゃん!?」

縋りつくが、相手は絶対者。

そこを忘れてはいけない。

彼らがこうと決めたら、普通の人類にはどうしようもないのだ。

『……まあワシらも鬼ではないにゃー。条件を二つ三つ飲めば、お前らの記憶には手を付けずにいてやってもいいにゃ?』

「本当にゃん!? さすが博士は話がわかるにゃーん!!」

にゃにゃんにゃ煩い。

『一つは当然、ここのことを誰にも言わないことにゃん。でも他にもお願いしたいことがあるにゃん』

「何でも言ってくれ! この素晴らしいダンジョンにまた潜れるんなら、どんな約束でも交わしてやろう!」

『今、何でもって言ったにゃ?』

実はここまでが計画通りであった。

そもそも、何で俺たちはS級冒険者の皆様をお招きしたか?

その目的が今まで語られてこなかったが、そろそろ判明させる頃合いだ。

これから始める新しい催しごとに、是非とも彼らの協力が必要だったので……。

上手いこと交渉してみた。