作品タイトル不明
542 タコ焼きパーティ
前回から引き続きでタコ料理に挑戦します。
タコさんウインナーとかタコスとか、ギャグに走りすぎて顰蹙を買ってしまったからな。
夫の威厳を意保つためにも、今度こそちゃんとオーダーを満たしたタコ料理を完成させねば。
で、タコ料理。
どんなのがあるかなと自分の記憶に検索をかけてみる。
酢の物、唐揚げ、和え物、煮物……。
美味いことは美味いがタコのオリジナリティを生かせるかというとやや疑問。
もっと『タコならこれ!』となるようなズバリの料理はないだろうか?
タコわさ。
美味しいよねタコわさ。
しかし酒の肴の印象が強すぎる上にウチの農場まだワサビを生産していないから作れない。
本当そろそろワサビ作りに着手した方がいいかもな。
その上で他に何があるかというと……。
……そうだ。
これぞってヤツがあるじゃないか。
代表的なタコ料理……。
「タコ焼き!!」
あれこそタコオブタコというべきものだろう。
だし汁などを混ぜて練った小麦粉を専用の鉄製器具に入れて焼く。
上手いこと引っくり返して球状に討焼き上げるアレだ。
中に入ったタコの歯応えがくせになる。
タコ焼きを提供してあげれば、あのタコさんも満足してくれるのは間違いない……いや、自分で言ってておかしいということはヒシヒシ伝わってくるが……とにかくタコ焼きを作ってみようじゃないか。
食材的に不足していないものはない。
農場に備蓄してある食材で全部賄えるはずだ。
あえて足りないものがあるというなら。
「…………タコ?」
肝心なものがないじゃないか。
さてどうしたものか。
食材としてのタコを手に入れたいなら漁に出るしかないんだが。
しかし肝心のタコ自体が既に目の前にいるんだよなー。
大ダコのクラーケンさんが。
どうすればいいの?
『ふふふふ、困っているわねプラティの旦那様?』
おう困っているよ。
表情読むくらいなら、このいかんともしがたい状況をとっとと解決しやがってください。
『タコのお肉がいるなら私を遠慮なく使いなさいな!』
「うわあ、豪快」
クラーケンのタコ足の一本がひとりでにポロリと取れて、俺の眼前に転がった。
そして本体の方は、断面から新しい足が生え変わってくる。
それまでにかかった時間は精々三秒と言ったところか。
『私も元は精霊だから再生能力は高いのよ! その足を使って存分に美味しいタコ料理を作ってね!!』
このタコがいれば一生食糧事情には困らなそうだった。
さておき、せっかくだからこのタコ足で美味しいタコ焼きを拵えるとするか。
……ああ、まだ駄目だ。
タコ焼きを作るのに必要なタコ焼き器がない。
あの円形のくぼみがたくさん並んでるアレ。
タコ焼きを作る以外に用途がないから今まで何かの機会に作ったこともなく……。
「新造するしかないか」
原料は……またマナメタルでいいかな?
* * *
構造も単純だし、今回はドワーフさんたちの手を煩わせるまでもないと思って自分で作った。
割と大きめのものを作って、一度に五十個は焼けるようにした。
きっと業務用にも引けを取らぬはずだ!
貰ったタコ足を茹で上げて細かく切り刻み、生地を作って準備完了。
焼いてみるぜ!
「ほう……、またなんか不思議な調理法ねえ?」
「この丸い窪みに入ってるヤツをコロコロ転がしていくうちに丸くなっていくのだ。ボールみたいだ面白いな!」
いつものことで真っ先にプラティとヴィールが嗅ぎつけ、続いてオークゴブリンエルフや人魚たち。
さらに学生たちまで寄ってきて大賑わい。
……露店のタコ焼き売りになった気分だ。
まあそれでも長年鍛え上げた俺の料理の腕はひるむことなく、上手いこと焼き上がったタコ焼きにドロドロのソースとマヨネーズ、そして最後に青のりをかけて完成!
「タコ焼きだ! 食らうがいい!」
「「「「「わ~い!」」」」」
次々タコ焼きに手を出していく農場の住人達。
「美味しい!」
高評価。
「外はカリカリしているのに中はフワッと! そして中心にはたしかに弾力と歯応えがある何か! そうか、これがタコね!?」
「歯応えの重厚なハーモニーなのだ~! この生地は小麦粉で作ったものだな! さすが小麦は万能なのだ!」
ヴィールとプラティ以外にも、多くの人たちがハフハフ言いながらタコ焼きを頬張っている。
そして肝心のクラーケンも……!
『エクセレント! 凄いわこれよ! この味よおおおおおッ!!』
みずからタコ焼きを食して感動にむせび泣いていた。
……。
なんともシュールな光景だった。
あれも自分の足を食らうタコと評していいのだろうか?
『勝てる! これならカニ野郎がどんなものを出してこようが勝てるわあああああッ! ありがとうプラティちゃんの旦那様ああああッ!!』
気に入って下されたら何よりということで……。
じゃあ、もっとジャンジャンタコ焼きを作っていくとするか。
生地もたくさん用意したし、今の三倍は作らないと到底なくなりそうにない。
タコも大分余っているし、食うヤツもたくさんいるしでセーブする必要もあるまい。
ガンガン焼いていくぞ!
これぞタコ焼きパーティだ!
「……となったら、具をタコに限定する必要もないかな?」
たくさん焼くならそのうちいくつかは冒険してみるのもよきこと。
変わり具はタコ焼きパーティの醍醐味と言ってもいい。
闇鍋の気分でとんでもない変わりタコ焼きを作り出すのもいいかもな!
「では納豆はどうでしょう?」
いきなり出てきたホルコスフォン。
今回はオチが最初に来たか。
しかし納豆がいかなる状況でも美味しさを発揮する万能食材であることは、これまでいくらも繰り返されてきたオチでわかっている。
タコの代わりに納豆を入れる納豆タコ焼き!
やってみようではないか!
「美味い」
無論タコのような歯応えはないが、納豆独特の下味がタコ焼きにさらなる旨味を付加している。
やっぱり恐ろしいな納豆。
何にでも合う。
「では今度は、チーズなど入れてみてはどうでしょう?」
うむ、基本だな。
バターだとまた大地の精霊たちが騒ぎ出すし、どうせ熱で溶けてこぼれ落ちていくだろうから、ここはチーズでよかろう。
チーズタコ焼き。
これも上手い。
「同じ肉類で、細かく刻んだソーセージを入れてみるのはどうです!?」
「エビを入れましょうエビ!」
「シイタケなんか入れても変わった食感が味わえるのでは!?」
「おもち! おもち!」
「ラーメンを入れてもいいのだ~!!」
論百出し、どんどん賑やかになっていく。
いかなる具材でも包み込み、美味しさに変えてしまうのがタコ焼きの包容力であり強みであろう。
こうやってワイワイ言いながら焼いて食っていくのも実に楽しいし、いいなタコ焼きパーティ!
せっかく作ったタコ焼き器も二度と使わないのはもったいないし、定期的にパーティするか。
ただ一つ問題があるとしたら……。
『ねえ、中にタコを入れなかったらタコ料理にならないんじゃない?』
クラーケンが恨みがましい視線で俺のことを見詰めていた。
『これがタコ料理にならないとカニとの勝負に使えないんだけれど? ねえいいの? これタコ焼きでいいの?』
そもそも中にタコが入っていなければタコ焼きですらない。
クラーケンの冷めた視線にさらされながら、ちょっとやりすぎたかなと反省する俺であった。