軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

525 開催ダンジョン競争

ついにこの日がやってきたー。

……と、俺も心躍っております。

俺です。

ここは竜の皇帝ガイザードラゴンが住む孤島。

つい先日まで、この島は何もないサラ地だった。均したような草一本生えない土剥き出しの平地だったが、それが、何と言うことでしょう……!

「こんなに立派なお家が建って……!?」

お家って言うかもう、城だな。

聳え立つ巨城だ!!

これが遂に完成した新ガイザードラゴン、アードヘッグさんが住み暮らす新・龍帝城!

皇帝の大神殿!!

「おれが……、おれが苦労して作り上げるはずだった龍帝城が……!!」

その主人となるべきガイザードラゴンのアードヘッグさんは、巨大なる門前で呆然と立ち尽くしていた。

現在、人間バージョン。

「これを築くために修行を重ね、イメージを鍛え、成長した証として築き上げるはずだった龍帝城が……!?」

他人の手で築き上げられております。

何かゴメンね?

成り行きでこうなったとしか……!?

「いやー、今回もいい仕事をしたのだー!」

「久しぶりに一から築き上げるのも楽しかったな」

「皇帝竜の城に、き、妃の趣味が加わるのは当然のことなのよ!!」

満足げな表情でワラワラするヴィール、アレキサンダーさん、ブラッディマリーさんの面々。

コイツらが城主を差し置いて城の建築を推し進めた狼藉者たちだ。

「すべてはアードヘッグがグズグズしていたのが悪いのだ! ドラゴンはいつも即断即決! 地上最強の生物が思いあぐねることこそ在り方にそぐわぬのだ!!」

「そうよ! 特にアナタは、その竜の頂点に君臨するのだから、及び腰などあってはならないことなのよ!」

謎の説教を食らうアードヘッグさん。

いいじゃないか躓いたって、ドラゴンだもの。

「ぐぬうう、たしかに言われてみればそうだなあ。今回は、我が優柔不断の報いとして受け入れよう。……そうだな、竜の皇帝たる者、つねに即断即行であらねば!」

「その意気よ! さすが我が夫!!」

……なんかブラッディマリーさん、前会った時よりグイグイ来てない?

あの人こそ即断即決というか、即断即行が著しいというか。

「こないだマリー姉さまの実家で助けた人類たちに、色々吹き込まれたみたいですわー」

とシードゥルさんが言った。

何?

「ニンゲンどもは産んで殖えるだけが能の生き物だからな。ま、その長所も取り込んでドラゴンは益々究極生物に近づくがいいわ」

と先代ガイザードラゴンのアル・ゴールさん。

何?

「とにかく準備は整った! あとはここにニンゲンどもを誘い込み、コテンパンにしてやるだけなのだ! その時ニンゲンは思い出すのだ、自分たちが支配されている生き物だということに!!」

よくわからんヴィールの意気込みを受けて、本格的に動き出すダンジョン競争勝負。

そう、最初はそういう話でスタートしたからな。

魔族と人族がそれぞれ代表を出して、ダンジョンの攻略で競い合う。

勝った方がこれから世界全体のダンジョン管理を担っていくんだ。

新時代の色を決定する重大な一戦といえよう。

勝つのは魔王軍か?

それとも人族の冒険者たちか?

勝負の舞台として、新たにガイザードラゴンとなったアードヘッグさんの城以上に大きく立派なものはない。

「まあ……、好きに使ってくれ」

アードヘッグさんの萎びた返事に申し訳なくなった。

こうしてすべての意思が集約され、訪れた戦い当日……!?

* * *

会場となった新・龍帝城は、思った以上の人だかりとなっていた。

「お祭り騒ぎだあああああ!?」

ごった返す人、人、人!?

何百人いるんだこれ? 何千人!?

なんでこんなに人が集まっているの? 全員参加者!? さすがに違うよね!?

「おお聖者殿! よくぞ参った!」

人ごみの中から目敏く俺を見つけたアレキサンダーさん。

寄ってくる。

「アレキさん!? このバカ騒ぎは一体!?」

「勝負といっても、当事者だけでは寂しいからな。それに重大事を決めることだから結果を見届ける証人は多い方がいいと思って見物客を呼び込んだのだ」

見物客!?

それじゃあもうマジでただの催し物では!?

「魔国、人間国から広く希望者を募ったら、数千人になってな。急遽観客席を用意するのに苦労したわ」

「やっぱり千人単位でいた!?」

そりゃあ、この人ゴミだもんなあ!

こんな孤島によく集まったもんだ。移動手段何!?

「もちろん転移魔法だが」

「便利だなあ、あの魔法!?」

「聖者殿のところの住人たちが全面協力してくれて助かったぞ。何しろあれだけまとまった単位の転移魔法使いを抱えているのは、聖者殿のところのみだからな」

そして知らないうちにウチの子らが大活躍していた!?

たしかに『悪用されたら大変だから』という理由で厳しく規制されている転移魔法を、自転車替わりのように気楽に使っているのは我が農場だけですが……!?

「他にも観客用のスタンドを建てたり、色々設営してくれたのはそちらのオークたちの手腕だしな。聖者殿の協力には心から感謝している」

「やっぱりアイツらも関わっていた!?」

大きなイベントあるところ必ずやってきて、なんか建てていく建築マニアの農場オーク!

オークボ城や農場博覧会の経験が生きておりますわ!

よく見たら、あちこちに出店が立ってお祭り騒ぎに一役買っておるが、その出店を切り盛りしているのはウチの農場のゴブリンたちでは!?

「納豆ー、納豆はいりませんかー?」

「イベントプロデュースがほぼウチの独壇場……!?」

駅弁の立ち売り箱みたいなのに納豆詰め込んで売り歩くホルコスフォンとすれ違った……!?

ウチの農場の住人たち……、すっかりイベント運営に手慣れて……!?

「彼らのおかげでイベントの成功は約束されたようなものだな。私自身ダンジョンを営む者として、聖者殿のクオリティに感服する」

これ半分近く俺の知らないところで進んでたんですがね?

俺も感服していますわ。

仲間たちのお祭り好きに。

「さあ、共に参ろう聖者殿。こっちが観戦席だ!」

アレキサンダーさんに連れられてきたのは、これまた豪勢な作りになった……、ここは……!?

「どういう場所?」

「本来は新生龍帝城の正門前に当たるが、そこに観戦用のスタンドやらを置きメイン会場としたのだな。観客は満席、熱気に満ち溢れておる……!」

このアレキサンダーさんのウキウキした口調よ。

まるで自分のイベントのようではないか。

たしかに巨大な城壁に囲まれ見上げるほどに巨大な門の対面となるように、三方を囲む観客席は数千人を収容できる規模だった。

そこへ詰めかける人族と魔族。

恐らく互いの代表者を応援するために詰め掛けたのか。

「シルバーウルフ様ー! 頑張ってー!」

「エーシュマ様レヴィアーサ様ー! 魔族に再び勝利をー!!」

もう既に大盛り上がり。

「ん? あっちの席は……?」

その中で不全に盛り上がりが足りない一区画。

そこに居並んで座っている方々は、まんじりともしない表情で一言も喋らない。

見た目の感じ魔族でも人族でもなく、あの感じは……?

「……人間に変身したドラゴン?」

「その通りだ。さすが聖者殿よく見抜かれた」

本当にな。

ヴィールとか見慣れているおかげで違いに気づけるんだろうか?

「あれは、あちこちに住んでいるグリンツドラゴンやグリンツェルドラゴンだな。新たな皇帝竜の居城、竣工祝いにやってきたのだ」

「ほう……!?」

「参内したということは新皇帝竜の新支配体制に屈服した意思表示でもあるが、実際のところはアードヘッグの手腕を見るための視察というところだな。面従腹背が香り立っておるわ」

ふっふっふ、と悪い笑いを漏らすアレキサンダーさん。

たしかにアードヘッグさんは今や一番偉い竜(実力はさておき)だし、そんなドラゴンが新居を建てたらご機嫌伺いくらいにやってくるのはパンピーの義務とも言えようが……。

ん?

何かコソコソ話している?

「……これが新たな龍帝城……?」

「知っているか、新たにガイザードラゴンとなったアードヘッグとやらは、これをみずからの力でなく他のドラゴンに築かせたそうだ」

「自分ではやらずに、他者に頼るとはなんと情けない!?」

「しかし、そのために働かせたのがブラッディマリー姉上にヴィール姉上、さらにアレキサンダー兄上まで働かせたと……!?」

「何だその面子は!? いずれもかつてのガイザードラゴン最有力候補ではないか!?」

「そのような強豪たちを労働を強いたと!? 彼らはアードヘッグとやらに臣従しているというのか!?」

「それだけ強いということなのか? これは迂闊に反逆しては即刻レッサードラゴンに……!?」

……なんか勝手に分析して勝手に恐れを抱いておる……?

ああなったら、アードヘッグさんの新居お披露目も大成功といったところかな。

様々な影響効果を生みつつ、イベントは本番へと進んでいく。