軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

503 温泉風物探し:温泉卵

というわけで探してみよう。

温泉であると嬉しいマストアイテム。

まず最初に思いついたのが……。

「温泉卵だ!!」

名前に『温泉』ってつくぐらいだし。

美味しいよね温泉卵。

というわけで本物の温泉でストライクゾーンど真ん中の温泉卵を試作して見ようではないか!!

* * *

というわけで温泉宿(予定地)に舞い戻っております。

「転移ポイントがあると行き来が楽でいいぜ!」

周囲では、オークたちが入浴施設や宿を建てる作業で賑やかだが、その傍らで既に汲み上げられている温泉に生卵をin。

「マスター! それは納豆に入れるために用意しておいたエッグです! ご無体です!」

いいじゃないか。

ホルコスフォンは納豆に加えるように常に生卵を一ダースほど抱えてるんだから一個ぐらい使わせてくれ。

さて、温泉卵は沸騰しない適度のお湯で作るのがポイントだ。

温泉の温かさがちょうどいいので温泉卵という名がついたんだろう。

生卵を手拭いで包んで、布ごと温泉に浸してみる。

温かいお湯に浸かって待つこと十分……。

「そろそろいいか」

温泉から引き上げ、まだ殻をまとったままの卵を……。

「オデコに! はあああああッ!」

己が額に叩きつける!

その衝撃でヒビの走った卵の殻を! 右手だけで持って!

「割れたああああッ!」

説明しよう!

この俺は卵を片手で割ることができるのだった!

これも『至高の担い手』の効力だろうか!?

とにかく殻からこぼれ出た卵の中身は……?

「これはいい感じに半固体!」

黄身も白身も、固形に固まりつつドロッとした質感を失っていない!

生卵ほど液体ではないが、完熟ゆで卵のごとき鋼の密度も持ち合わせていない。

いい感じに中途半端!

「これこそ温泉卵の質感! 実験は成功だな!」

「ほうこれは……!」

ホルコスフォンが、温泉卵の入った小鉢をスルリ抜き取り、一瞬の躊躇もなく納豆へin。

「生卵と混合させるのもいいですが、この半固形の卵も独特の質感があってとてもいい。我が納豆レパートリーに新たな広がりを得られました」

「何でも納豆と混ぜようとするな」

まあでも納豆と混ぜても美味しいよね温泉卵。

源泉の温度も温泉卵を作るのにはちょうどいいみたいだし……。

……ただ、それだと入浴には熱すぎるから何らかの温度下げる工夫は必要だろうけど……。

しかし温泉卵自体は名物になること間違いなし!!

「魔王さんに頼んで、大量の卵を運び込んでもらおう! ……いや、この土地で養鶏するのもいいな? 産みたて卵をそのまま温泉に浸けて朝食のお供に!」

「しかしマスター」

なんだいホルコスフォン?

温泉卵のお代わりが欲しいのかな?

「ただいま試作に用いた卵は、私が農場より持ち込んだヨッシャモ(鶏型モンスター)の卵です。不測の事態を防ぐため、マスターが念入りに滅菌処理を加えています」

そうだね。

卵を食すときにもっとも警戒すべきはサルモネラ菌による食中毒。

それを防ぐための対策は必要不可欠だ。

一番簡単なのは熱処理で、煮たり焼いたり蒸したり、大体沸騰するぐらいの熱に晒せば雑菌は死ぬ。

そして安心して食べられる。

その他、俺の持つ『至高の担い手』の力で握った卵を滅菌するという手もある。

俺だけに使える奇策だが、このおかげで農場では気兼ねなく生卵を食せるというわけだ。

美味しいもんね。

卵かけご飯も、納豆に生卵を混ぜて食べるのも。

熱殺菌の唯一ある問題点、生料理には使えないということを解決してくれるのも『至高の担い手』の有難味だ。

「この温泉卵も、とろとろふんわりで半分ナマと言えます。滅菌という点では大丈夫なのでしょうか?」

「うん?」

ホルコスフォンの言う通り、温泉卵って熱処理的にはどうなんだ?

一応お湯にはつけてあるけど、半生だし。

食中毒を起こしかねない危険な細菌を完全に殺し切れている?

「いかん……!? 考えたら不安になってきた……!?」

これから温泉宿で大々的に温泉卵を売り出していくには、安全面は絶対疎かにはできない。

こちらのお出しした食品が元で体調を崩されたら信頼も損なうし、客足も遠のいてしまう!?

「農場の外で、大多数の人員と取引するには、農場で飼っているヨッシャモの卵だけでは足りないでしょう。こちらの社会機構で大規模な卵を確保するルートが必要です」

「う、うん……!?」

「しかし、そうなると品質の著しい低下が予測されます。斬新な調理法で味のクオリティは確保できるものの、安全面で不安はぬぐい切れません」

「うん……!?」

確実に安全と言える状態じゃなきゃお客さんに出せないなあ。

ではどうしたらいい?

売り出す卵一つ一つを俺が『至高の担い手』で殺菌していくか?

それは現実的じゃない。

一日に売る数を考えたら俺自身、それだけにかかりきりになってしまう。

このままじゃ温泉卵は売り出せないままお蔵入りに……!?

俺が懊悩していると、その傍らでオークたちが話している。

その話声が、何とはなしに耳へ入ってきた。

「うわッ!? あっつい!?」

「気を付けろよ源泉は高温なんだ。下手に浴びたら火傷してしまうぞ」

「農場の温泉はちょうどいい温度なのになー」

「あれもいい湯加減で入れるように、水を混ぜたりして冷やしてるんだよ」

「へー、でもこんなに熱かったらゆで卵ができちゃうなー」

「ホントにな、カチカチの完熟卵がな」

「「はっはっはー」」

笑い合いながら作業に戻っていくオークたち。

どうやら湧出元に近い源泉は、さらに温度が高くほぼ沸点に近いようだ。

こっちの湯に卵を浸したら……。

* * *

じっくり十五分ほど浸して卵を取り出す。

そして殻を剥き、現れる……。

「完全なるゆで卵!!」

これでは卵を『割る』ことなどできない。

完全固形となった中身から『剥か』ねばならない。

ここまでカッチカチになるまで熱せば、細菌とて生き延びはすまい!

一粒残らず死滅しているはずだ!

「どうだホルコスフォン!? これならば細菌問題はクリアしたと言っても過言ではあるまい!?」

「少々お待ちください」

ホルコスフォンは手からビームサーベル的なものを伸ばして、それでもってゆで卵を切り刻む。

粉々と言っていいぐらいに刻まれたゆで卵を、納豆にかける。

そして食す。

「美味です。卵は生でも半生でも完全に加熱しても、納豆にあって美味しいことが確定しました」

徹底しているなあホルコスフォンさん……!?

彼女の善悪基準は、納豆と混ぜて美味しいかどうかで完結するのじゃないかと思えた。

「一旦ゆで卵を二つに切り分け、黄身を取り外して細かく砕き、納豆にまぶして絡め合わせたあと残った白身の、黄身を抜いた穴に納豆をもって食べても美味しいと思われます」

「う、うん、そうだね……!?」

でもホルコスフォンさん?

肝心の安全については……!?

「ただいま食して計測いたしましたが、卵内の有害菌は存在しないことが確認されました」

「マジで!?」

食べながらそんなことができるなんて、さすが天使!

これで温泉卵を安心して売り出せるぜ!!

「しかしマスター……?」

「うッ? なんだねホルコスフォン?」

「徹底して過熱して殺菌処理するのはいいのですが、それでハードボイルドにして半熟ではなくなったら、温泉卵と言えるのでしょうか?」

「ぐふッ!?」

まあ、まさにそれなんだけど……!?

「……ホルコスフォンよ」

「はいマスター」

「生であろうと半生であろうと完熟であろうと……、温泉を使って加工したならそれは温泉卵だと思うのだよ……!!」

「そうとも言えるかもしれませんが……?」

それ以上言わないでくれホルコスフォン!

すべてを成り立たせる方法はこれしかないんだ!

いずれ絶対安全な半熟卵を食べてもらうために……!

課題は先送りにしよう……!!