作品タイトル不明
491 襲来エルフ王国
俺です。
こないだ創造した合成世界樹は思いの外、大きな影響を及ぼすようになった。
もっとも大きな反応を見せたのは魔族商人のシャクスさんだ。
「是非ともこちらの世界樹の葉を! お売りいただけませんでしょうか!?」
いや、プラティが青汁に加工したものは兼ねてから売っているじゃないですか?
素材のまま欲しい?
まあ、欲しいというならお分けしますけど、あくまでこっちの必要分から溢れただけですからね?
代金?
いいですよいいですよ所詮勝手に生えてきたものですし。
この合成世界樹、桜ベースに生み出してきただけあって、冬にはきっと落葉する。
だったらケチケチせずに大盤振る舞いした方がいいというか……。
大変そうだな、落ち葉掃除するの。
世界樹の落ち葉って、効能残ってるのかな?
これからの研究課題だ。
それでも世界樹の力を持った桜の木って予想以上に扱いづらく、先日以来桜餅も怖くて再び作れていない。
まあ、プラティがあんな状態になってしまったのは、世界樹の葉の効果だけでなく手掛けた俺の『至高の担い手』による強化もあるんだろうけど……。
それでも一応、何枚かの葉っぱを採取して、今度はちゃんと正攻法で時間をかけて塩漬けにはしてある。
きっと来年には、より普通で安全な桜餅を食べられるに違いない。
そんなことを考えつつ、世界樹の葉桜を眺めていたら……。
「クックククク……! ここが不埒者どもの隠れ家かえ?」
なんだこの声は?
どこからともなく聞こえてきた。
もはや、聞き覚えのない声がするのは農場では日常茶飯事なのでいちいち驚くことはないが、それでも警戒しないわけにはいかない。
どなたさんですか!?
「わらわは……いや、わらわたちは天罰の使者。ニセモノの世界樹を生み出し、真なる世界樹を侮辱した者に制裁を加えるべく降臨したのじゃ!」
それまで何もなかった眼前、俄かに霞がかったと思ったら、その霞が晴れるとあとには集団が現れていた。
しかも物騒な。
総勢百人ほどと思える彼女らは残らず武装し、俺に対して弓引いていた。
出現者に共通することは、全員女性、肌が褐色、耳が妙に長く尖って、かつ持っている武器は弓矢。
「エルフ?」
「ほう、一目見て我らがエルフとわかるとは……、まあ当然か、世界樹のニセモノを作り出すぐらいだから当然エルフのことも見知っておるか。しかし、おぬしも触れてはならぬものに触れてしまったのう?」
「えッ!? 触れてはならないもの!?」
って一体何だろう!?
ノーライフキングの先生? ドラゴンのヴィール? 天地海の神様たちや、天使フォルコスフォン&ソンゴクフォン?
その他にも聖唱魔法を使う先代人魚王妃シーラさんとか……?
「すみません、心当たりが多すぎてわかりません……!」
「心当たりが多すぎる!?」
とにかくこの押しかけエルフさんたち、何を怒ってのカチコミなんだろうか?
……カチコミだよな?
こうして武装の上でお越しということは?
「……まあよい、ならばおぬしの罪を告げようではないか! それは、我らエルフ王国にケンカを売ったことじゃ!」
「ええーッ!? それこそまったく覚えがない……!?」
「我らエルフ王国の戦士団は、かつて魔王軍の侵略すらはねのけた最強精鋭。その殲滅力によって根絶やしとなるがいい! それが我々と敵対した報いじゃ!」
リーダーと思しき、のじゃ口調エルフがけしかけると、命令のままに他のエルフたちが矢を放ってきた。
「うわーッ!?」
それから約十秒後……。
* * *
……鎮圧完了した。
「よしッ!」
鎮圧までにかかった時間、十秒の内訳を見てみると……。
異変を察知した住人たちが現場に駆け付けるまでに八秒。
最初に現着したゴブリンくんが鎌を振り回して、相手の武器をすべて破壊するのに二秒。
……計十秒でございます。
そこから新たに駆けつけてきたオークゴブリン、ポチたちに取り囲まれて戦意喪失した襲撃エルフさんたちでございました。
「ごななななな……ッ!? なんじゃ!? 何なのじゃこれは……!?」
『何なのじゃ?』と問われましても。
彼らが俺と苦楽を共にする農場の仲間たちでございます。
「何、旦那様? また変なのが来たの?」
プラティも遅れてやってくる。ジュニアを抱きかかえながら。
特に大事でもないので家でジュニアを寝かしつけといてもいいのに。
「何かエルフが来た。俺たちが彼女らにケンカ売ったって言って……!?」
「ほう、それはむしろ典型的なケンカの売り方ねえ……!」
プラティ。
瞳をギラリと光らせないで?
「あたかもこっちに非があるような言い方で、一方的に攻め立てる。そんな詭弁が通じるアタシたちの農場じゃないわよ! オークにゴブリンたち! こやつらを吊るし上げなさい! 農場に逆らう者がどんな末路をたどるか知らしめるのよ!」
「「「承知!」」」
承知じゃねえ!
もちろん自衛は必要だが、過剰防衛はNGだぞ!
「もう少し話を聞いてあげようじゃないか! そうだ! 彼女ら世界樹がどうとか言ってたぞ! やっぱり俺たちにもいくらか非があるんじゃ……!?」
「その通りじゃ!」
制圧されたエルフたちの中から、さっきと同じリーダー格っぽいエルフが言う。
「言いがかりなど言いがかり! 先に危害を加えてきたのは明らかにそちらであろう! ニセモノの世界樹の葉を流通させ、我らの本物世界樹の葉を淘汰せんとした企み! すべて明白なり!」
「ええッ!?」
ニセモノ世界樹って……!?
心当たりがないではない!?
「今日のところは油断したわ! まさかこのような防衛戦力を用意していたとは! 百騎などと小勢で仕掛けたのは失策であったと、素直に認めようではないか!」
偉そうなエルフさん、語る。
「なれば次は必勝を期して、我らエルフ王国の全軍をもって襲来してやるわ!」
「何言ってんのアンタ? 自分たちの置かれてる状況わかってる?」
プラティの言いたいこともわかる。
襲撃エルフさんたちは今やすべての武装を解除され、周囲をくまなくウチのオークやゴブリンに取り囲まれている。
これでは間をすり抜け逃げ去るなど至難の技であり、従って帰宅も不可。
俺だって事態があやふやなまま解放するほど平和ボケしていないし……。
「くふふふ……! 忘れたか? わらわがどうやってここへ来たか?」
あ、そういえば。
最初彼女たちは、まったく何もないところから急に現れたな?
まるで転移魔法みたいに。
まさか彼女らも転移魔法を使うのか?
「ほほほほほほ! 転移魔法が魔族の専売特許だとでも思ったかえ! このエルフ王たるわらわには、そなたらの思いもよらぬことがたくさんできるのよ!」
エルフ王!?
なんか仰々しい名前だな!?
そんな彼女を中心に霞のようなものが起こり、それが彼女だけでなく仲間のエルフたち全体を覆う!?
「これがエルフの転移魔法!? あの霧で次元を歪め、遠く離れた場所と繋げているのね!?」
「ハイエルフだけが使う自然魔法よ! いかに武力を振るおうと、次元を隔てた遠い先までは追ってこれまい! さらばじゃ! また会おうぞ、我らの復讐戦の準備が整うまでな!」
エルフさんは捨て台詞を残して、去っていく。
霞の中に姿を隠し……、そして霞が晴れた時……!
……まだいた。
「あれ?」
霞がなくなったというのに全然転移してなかった。
「どういうことじゃ!? わらわの『飛仙霞』はたしかに発動したというのに、何故次元を飛び越えておらぬ!?」
「エルフの魔法が、どれだけ凄いか知らないけれど……」
プラティが言う。
「アタシの目の前で使うべきじゃなかったわね。アタシの魔法薬で発動阻害するなんて朝飯前よ」
さすが人魚族最高の魔法薬使い!
そんなことができるなんて!
「それだけじゃないのだ。ニンゲンどもの魔法なんておれの一睨みで消し去れるぞ。なんであろうともな」
ヴィールも!?
『ワシが手を下すまでもありませんでしたのう。念のために空間の歪みを抑え込む魔法作用を発動していたのですが……』
ノーライフキングの先生まで!?
『わ、私も一応対処しましたー……?』
そしてベレナ!?
ウチの農場対処できる人が多すぎない!?
むしろ対処が重なりすぎて、別の予期せぬ現象が発生しないかと心配するレベルだよ!?