軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

489 世界桜樹誕生

「またとんでもないものを生み出してしまった……!?」

桜の苗木に、世界樹の遺伝子を注入。

俺の『至高の担い手』で、異なる二つの遺伝子を定着させつつ、農場の空き地に植えて、成長を見守る。

元は樹木だしダンジョン果樹園で育成しようかと思ったが、そこに住み着く樹霊たちから『世界樹は想像を超えて大きくなるから広い敷地で育てて!』とアドバイスを貰った。

『でないと我々が、世界樹の成長に巻き込まれて死に絶えます!』とも。

やっぱり世界樹というのは規格外なんだなあと思いつつ、充分に開けたスペースで育ててみる。

プラティ自慢のハイパー魚肥を与えて、成長加速。

数日のうちに普通の桜と変わらない大きさにまで成長した。

「本当に何でも揃ってるなウチは……!?」

本来世界に二つとないはずの世界樹を生み出す技術とか。

その成長を格段に早める手段とか。

しかも、それらはほとんどプラティ一人で用意したもの。

『世界樹生やして』とお願いされたものの、俺はただ隣で見守るだけだったな。

「旦那様が能力で手伝ってくれたから合成世界樹が完成したのよ。アタシの技術じゃ本家ゾス・サイラには及ばないから、とても単独じゃここまでできなかったわ」

プラティが言う。

「それに合成世界樹を育てるスペースを用意してくれたのも旦那様だしね。そこは農場の主に無許可で進めるわけにはいかないから、許してくれて助かったわ。さすがアタシの旦那様」

「いやいやいやいやいやいや……!?」

そんな唐突に素直になられると照れますぞい。

世界樹の因子を得た桜の木は、一旦満開に花開かせ、輝くように咲き誇ったあと全部散らせて、次に青々とした葉っぱが生い茂った。

「花びらの掃除が大変すぎる!」

となったものの、満開の間は農場住人たちの目を引き、花見なども開かれた。

季節感まるでないなと思ったけど愉快だった。

しかし、究極の目的は花の方じゃない。

花が散ったあとに茂る葉っぱだ。

世界樹と合成して生み出された桜の木。それから生い茂った葉っぱが世界樹の葉と同じ効能を持てば、優れた回復アイテムとなる。

プラティも、オリジナル青汁の材料を百パーセント自前で用意できるわけだった。

さあ早速、世界樹桜から何枚かの葉っぱを採取し、実験してみよう。

試す相手には事欠かない。

農場の一角では今日も若者たちが、学んで鍛えて切磋琢磨を繰り返していた。

人族、魔族、人魚族の留学生たちだ。

実戦形式の訓練なので、当然ながら怪我人も出る。

治療が大変だから出来るだけ抑えてくれと医務担当のガラ・ルファが悲鳴を上げていたが。

「今日はアタシが代わって治療してあげるわ!」

「「「いえ、いいです」」」

訓練中に怪我した留学生たちは、にべもなくプラティの提案を拒否するのだった。

まあ、怪我といっても擦り傷切り傷ねん挫など、軽い怪我ばかりなのでご心配なく。

しかしプラティからの治療だけは断固拒否。

「普段そんなことしないプラティ様が、どういう風の吹き回し!?」

「絶対に怪しい! 魔女に『親切』という言葉はないと、既に学んでおりますので!」

若者たちもすっかり農場での生き方が身についておるの。

「小賢しい! 黙って実験台になりなさい!」

「実験台って言った!?」

逃げ惑う若者たち。

追うプラティ。

訓練を積んだ彼らの動きも素早いが、それでもプラティは振り切れない。あえなく取り押さえられ、すり下ろした世界樹の葉(合成物)を無理やり塗布。

すると……!?

「おおーッ!? 傷が一瞬にして塞がった!? あとすらなく綺麗に!?」

「モンスターとかで動物実験は済ませてあるから怯えなくていいのよ! ……人体にも影響なしで、品質は上々。オリジナルと比較しても遜色なしね」

プラティから太鼓判をもらえた。

これで、この合成世界樹の葉を使えば外部からの供給に頼らずプラティオリジナル配合青汁が作れるというわけだ。

よかったなプラティ。

さて、実を言うと途中から、俺は俺で考えていることがあった。

それを是非とも実行に移したい。

「プラティ、葉っぱ何枚か貰っていい?」

「合成世界樹の? もちろん。農場にあるものは旦那様のものなんだから許可なんていらないわ」

ありがたいお言葉だ。

プラティに断りを入れて葉っぱ数枚ゲット。

この葉っぱは、世界樹の葉であるが同時に桜の葉でもある。

桜の木をベースにして、世界樹の遺伝子を合成させたホムンクルス世界樹ゆえ。

なんだかややこしいが、この葉っぱをまず水で洗い、熱湯に晒す。水気を切ってから塩をまぶし、両手で挟んで『至高の担い手』発動。

そして完成。

「桜の葉の塩漬け!」

一瞬で完成した。

本当なら塩に漬け込んで一年くらいは待たないといけないのを『至高の担い手』で超短縮。

本当に便利な能力だ。

桜の葉は完成したが、まだ真の完成ではない。

そのためにまず一旦桜の葉から離れて……。

もち米を取り出す。

食紅で色付けしたもち米を蒸す。蒸し上げたもち米であんこを包み、さらに桜の葉で包むと……。

……何ができたと思う?

「桜餅だ!!」

ピンク色に輝くもち米の宝石! それを桜の葉で包んだ風雅なるお菓子!

プラティが葉っぱ採取してる時から気になってたんだよな。

そして作りたくなった。

よりにもよって世界樹の遺伝子が桜と合成しちゃったから。

そして桜の葉と言えば桜餅じゃないか!

「あら旦那様? 葉っぱなんて何に使うのかと思ったら、お菓子にしたの?」

早速プラティが寄ってきた。

ジュニアを抱きかかえながら。

「何これお団子? ……を葉っぱで包んで美味しそうね? いただきまーす。あむ。美味しい!」

とりあえず美味しいをいただきました。

「中に入ってるあんこがとっても甘くて美味しいわ! 葉っぱの塩味がアクセントになってより甘く感じる。歯ごたえも葉っぱのシャキシャキとお餅のモチモチが好対象だし、とってもいいわ旦那様!」

大好評でよかった。

まあ女の子相手ならあんこの甘さで鉄板なのであるが、負けず劣らず桜の葉っぱについても言及があったのが嬉しい。

人によっては桜餅の葉っぱも食べないからな。

「ああ、でもこれ世界樹の葉なのよね? 高級品を素材に使って何とも贅沢……!

ッ!? ふぉおおおおおおおおおおッッ!?」

次の瞬間だった。

プラティがいきなり輝きだした!?

全身から黄金色の光を放ち、あからさまにパワーアップしている感じ!?

シュインシュイン音が聞こえるような!?

「何なのこれはああああッ!? 体の奥底から力が湧き起こるうううううううッッ!?」

母親に抱かれお昼寝していたジュニアも、唐突な異変に驚き起きて『えッ!? 何ッ!? 母上が光っている!?』という表情をしている。

「これはもしやあああああああッッ!? お餅を包む葉っぱの効果ああああッ!? 世界樹の葉が、お餅やあんこと混ざって予想以上の効果をおおおおおおッ!?」

そうか。

桜餅に使った桜の葉は、同時に世界樹の葉でもあった。

いかなる傷も難病も治癒してしまうスーパー薬草、世界樹の葉の効果がこんな形で現れるなんて!?

そして大混乱の現場へ、ヴィールが現れる。

「おらー、おれ様の美味いものセンサーがビンビン反応したのだー! ご主人様がまた新作料理を拵えたなー? おれにも食わせろー!」

相変わらず新作料理を作ると即座に気づくヴィールだが、眼前の光り輝くプラティを一目見て……。

「おれの勘違いだったのだ。帰るのだ!」

すぐさま去っていった。

アイツもドラゴンのくせに危機回避本能が磨かれてきたな……?

「んおおおおおおッッ! 旦那様! こんなに効き目抜群の薬効を持って、しかも美味しい世界樹お菓子を作り上げてしまうなんて! アタシの青汁に対抗する気ね! 効き目抜群の上に美味しいなんてズルいわッ!!」

まったく予想外の成果だったんだが!?

俺の作製した異世界桜餅は、想像を越えた効果を発揮し、食した者のあらゆる不健康を取り除いてパワーアップさせるようだ。

さすが世界樹の葉。

……と思ったけど、これまで納豆とかラーメンでも同様の現象が起こったし。

まあいつものことか。