軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

475 スムージー

俺ジュースを作ります。

まあ簡単かも知らんけどね。

ジュースの素材といえばやっぱりフルーツ。フルーツは山ダンジョンのダンジョン果樹園にいっぱい実っているから原料には困らない。

一から茶畑を興すよりは手軽であろう。

とはいえ我が農場、これまでまったくジュースを作ったことがないかというとそんなこともない。

果物絞るだけで割と簡単に作れるしな。

結婚式の際も、一番簡単なオレンジジュースぐらいは出したさ。

他にもフルーツジュースの当てはあったが、ぶどうジュースなどはワインと誤飲の恐れがあるため控えた。

りんごジュースも白ワインと似ていなくもない向きがあるため大事をとって不採用。

結局オレンジジュースだけが宴席に上ったな。

そんな異世界オレンジジュースの作り方はとっても簡単。

オレンジを丸ごと用意します。

パワー自慢のオークに持たせて、握り潰します。

以上。

オークはやっぱり力自慢だなあ。皮ごとでも一瞬のうちにオレンジが潰れてしまうんだから。

彼ら夏みかんすら簡単に握り潰すからな

まさにオークこそ最強のジュース製造者だな。

……しかしまあ、宴席でビールにワインにウイスキーに日本酒と、酒類は有り余る種類があるのに、ソフトドリンクはオレンジジュース一択というのも寂しい。

やはりジュース作りは急務である!

と自分に言い聞かせたところで進めていこう。

普通に絞る以外に、どんなフルーツジュースを追い求めていけばいいかというと、やはりミキサーになるのか。

テレビとかでよく見た、果物を放り込んで、スイッチ入れたら『ギュイイイイイインッッ!!』と凄まじい音と共に破砕してドロドロの液状にするヤツ。

ミキサー。

『自家製ジュースで毎日健康!』みたいな謳い文句でよくCMやってたなあ。俺も見るたび心惹かれたものだが、さすがにジュース作るためだけに家電一個買うのは気後れして手が出なかった。

手入れもなんか大変そうだし。

しかし今の俺は、やりたいこと大抵できる気ままな異世界暮らし。

ミキサーでジュースも作ってやるさ!

いや、剣と魔法の異世界でミキサー作れるの? という意見が出そうだが、俺にもう隙はない。

そういう器具関係において強い味方ができたのだから。

今回もドワーフさんたちに依頼して、作ってもらったぜ。

異世界ミキサーを。

俺のつたない説明だけで、よく作ってくれるもんだ。

原料はお馴染みマナメタル。

ポーエルたちエルフ班にも協力してもらってガラス部品も追加できたから、中身を確認しながら粉々ジュースにすることができる。

まったくいい世の中になったものだぜ!

というわけで、完成した器具を受け取ったのがまさに今日。

早速出来栄えをたしかめてみることにした。

* * *

そのためにも山ダンジョンを登り、ダンジョン果樹園へとやってきた。

原料のフルーツが直接生ってるところでやった方がいいと思って。

「あれ? ご主人様じゃないか、ここで会うとは奇遇だな?」

ダンジョン果樹園に入ったらヴィールに出くわした。

「……何故お前がいる?」

「何言ってんだ? ここはおれのダンジョンだぞ? おれがいて何が悪い?」

そういやそうだ。

ダンジョン果樹園がある山ダンジョンの主は、ここにいるヴィールであった。

もう随分長いこと俺んちに入り浸りな竜なので忘れかけておったわ。

「意外とマメに帰ってるんだな?」

「ダンジョンの改造を考えているのだ。アレキサンダー兄上んとこには及ばずとも、マリー姉上のダンジョンより多階層にしたいからな!」

どういうこと?

「それよりご主人様! その手に持ってる変なのはなんだ!?」

俺が小脇に抱えていたミキサーに気づくヴィール。

いつもながら目敏いヤツめ。

「わかるぞ! ご主人様また新しくなんか美味しいものを作ろうとしてるんだな!? このおれの鋭い直感が告げているのだ! これはもう確信だー!!」

「わかったわかった……!」

まあ新しい料理を作る時、ヴィールとプラティにバレずに済ますのはほぼ不可能だから避けられない道か。

「じゃあ一緒に試してみるか? フルーツジュース作りを?」

「おお! フルーツってことは、ここにある果物どもで作るんだな!?」

「もちろんだ」

果樹園に備え付けてあったテーブルに、ミキサーをドンと置く。

異世界だから電気動力はない。

だから動かすなら人力だ。

ドワーフたちが工夫して、手動のハンドルを付けてくれた。

これを回すと歯車などで連動し、内部の刃も回る仕組みだ。

無論その刃というのは中に入れたものを切り刻んで粉々にし、それ以上に液状になるまでドロドロにするためのものだ。

恐ろしい。

まるで破壊の申し子のような器具から、フレッシュで健康的なフルーツジュースができるという矛盾。

それが料理の面白さ、か?

とにかく実際やってみよう。

「じゃあ具体的に何を入れてみるかな?」

まあ最初はシンプルにオレンジ一個でやってみるか。

やはりフルーツのジュースといえばオレンジだ。

皮は剥かずに諸共入れる。

やれるかどうか、このミキサーの限界を試してみたい。

それでも一応切り分けて、四つぐらいの断片にしてから投入。

蓋を閉めて……。

で。

ハンドルを回す!

「ぬおおおおおおおおおッッ!?」

これまた重労働。

しかし動作はしっかり伝わり。中のカッターが猛回転しているのが手応えでわかる。

「よっしゃー! これで中の果実をズタボロに……、なってない?」

回転する刃が果肉を掴み切れずに空回りしている。

「水いれればいいんじゃないか?」

「なるほど」

ヴィールがミキサーに注水。

するといい具合にかみ合って内部のオレンジが猛回転した。

「おお、上手くいったぞ!」

「さすがはおれの判断力なのだ!」

ヴィールは最近自分自身も料理をするようになったせいか。

何を作るのか知ってすらいないのに直観で適切な対処をとったというのか?

恐るべしヴィール……。

そして頑張ってハンドルを回しているうちに、オレンジはどんどん原型をなくして液状になっていった。

「さすがマナメタル、オレンジの皮までしっかり切り刻んでいる……!?」

人力の回転力じゃさすがに難しいかと不安ではあったが、素材の勝利だな。

「そんなわけでできました。ミキサージュース第一号」

ドロドロの液状になったものをコップに注ぎ移す。

さすが皮ごと砕いただけあって実体感が濃いぜ。

「さあヴィール、飲むがいい」

「おお、これで完成なのか? 案外簡単だな……!?」

ヴィールは初めて見るはずの皮ごとオレンジジュースだが、元々オークの手絞りジュースもあったからそこまで新鮮味もない。

なので臆さず一気飲み。

「……苦いのだ」

「あれー?」

やっぱ皮ごと入れたらそうなるか。

果物の皮は苦いもんな。

だから食べる時は皮を剥くんだ。

「いや待てヴィール、ミキサーの真価はこれからだ!」

皮ごとかけても大丈夫ということがわかり、ミキサーの威力は証明された。

充分な信頼をもってミキサーを本格運用していこう。

「ミキサーの真価は、中に入れたもの何でもかんでも噛み砕いてごちゃ混ぜにしてしまうこと。元はまったく別のものであっても……」

つまり、ミキサーにできてオークたちの手絞りにできないのは、異なる素材のミックス。

「これより異世界ミックスジュース作りに挑戦するぞ!」