軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

440 披露宴

こうして戦いですらない圧倒的な蹂躙の嵐が吹き荒れて……。

……一分も経たなかっただろうか?

すべて解決した。

六魔女側で傷ついた者など一人もおらず、結婚式用におめかししたドレスに汚れ一つもつかなかった。

アロワナ王子との結婚を狙い、パッファに嫉妬した襲撃人魚さんたち全員、今は人魚国の運河の水面にプカプカ浮かんでいた。

一応生きてるとは思う。

「余興としては物足りないわねー」

というプラティの一言がすべてを物語っていた。

プラティやパッファたちにとって戦いどころか余興にすらなりえなかった。

強い、強すぎる。

これが人魚国で恐れられた六魔女の力。それが遺憾なく衆目の下で発揮されたこと、歴史に残る出来事だった。

何しろこの場は、アロワナ王子の結婚パレードを一目見んと一般市民が詰めかけていたのだから。

「凄い! これが狂乱六魔女傑の力!?」

「狂乱六魔女傑が力を合わせて戦うなんて!」

「しかもやっぱり一人一人がめちゃくちゃ強い! やっぱり魔女は最強の魔法薬学師なんだ!」

と大熱狂。

でも狂乱六魔女傑とはあんまり呼ばないでやってくださいね。本人たち嫌っているから。

元々狂乱六魔女傑というのは人魚国の巷間で『女人魚の中で一番強いのは誰だ?』という噂が飛び交った末にまとめられた六人らしい。

だから本来、六魔女個々人に繋がりはない。

まったく赤の他人たちだ。

それが一堂に会して、チームを組んで戦うのだから観衆にとってはオールスターのような興奮であろう。

「ああ、これで『暗黒の魔女』がいたらなあ!」

「『暗黒の魔女』さえいれば完璧なのになあ!」

とギャラリーから漏れ聞こえる声。

……本当はいるんですけどね、この場に『暗黒の魔女』も。

「仕方ないよ。『暗黒の魔女』は実在すら疑問視されてるんだから……」

「そうだよなあ、魔女が五人揃っただけでも凄いと思わなきゃなあ……!?」

また漏れ聞こえてくる。

大丈夫です『 暗黒(アドビヤー) の魔女』はちゃんと実在しますよ。

そしてこの場にいて、ちゃんと勢揃いしてますよ。

本人は頑なに明かそうとしないけれど。

「愛すべき人魚国の民よ! ご覧になって? これが巷間で語られる六魔女の力! 恐怖の力! この力をひとたび誤れば、世界は存亡の危機に陥ることでしょう!」

『暗黒の魔女』ご本人様が語られる。

しかも言ってることの内容が怖い。

「しかし、そんな深刻な事態は訪れません! 何故なら六魔女の中でもっとも思慮深く、恐ろしい力を持った『凍寒の魔女』パッファこそ、次代の王アロワナの新妻となるからです! パッファさんは我が息子の愛に包まれ、その凶暴性を失うでしょう!」

その宣言に民衆はますます奮い立つのだった。

恐ろしい魔女を娶り、管理下に置く。

そんなことができるとはアロワナ王子とはなんと凄い人魚なのだと。

さすが未来の人魚王だと!!

「もっとも恐ろしい? パッファが? 聞き捨てなりませんね……!?」

「抑えてランプアイ。対外向けのアナウンスだから……!」

対抗心を燃やすランプアイをプラティが抑えるのだった。

「アタイが狂暴? 舐めた口きくじゃねえかあの姑……!」

「パッファも抑えろやああッ! わかるでしょ!? そう言っとく方が兄さんの株が上がるのよ!!」

忙しいプラティだった。

一部のウケは悪かったものの基本シーラ王妃の演説は民衆の心にドストライクで突き刺さり……!

「アロワナ王子万歳!」

「パッファ妃殿下万歳!」

「末永くお幸せに!!」

「人魚国は次代でさらに栄えるであろう!」

大盛り上がりだった。

さすが数十年王妃されてるだけあって扇動の仕方を心得ておる。

「わかるかパッファ? お前もこういうことができるようにならないとダメなんだぞ?」

「ぐぬぬぬぬ! アタイだっていつかは……!?」

予期せぬトラブルのおかげで却って民衆は盛り上がり、王子夫婦もスムーズに受け入れられることであろう。

あとはパレードを再開し、予定通り人魚の都である巨大魚の腹から出て、海中を進む。

浮上してたどり着くのは人魚族が所有するアイランド楽園島。

ここでアロワナ王子とパッファの結婚披露宴が行われる。

* * *

神前式が神に結婚を誓う儀式なら……。

披露宴は社会に対して結婚を報告する宴。

どちらも大切、必要不可欠だ。

より社会性と俗っぽさが伴った披露宴では、より重要なゲストが多数追加される。

他国の重要人物たちだ。

やはり王子の結婚だけあって他国よりの祝辞は来る。

それをもって国家間の良好な関係の確認にもなるから大事なことだ。

人魚国ゆえ他国となれば自然地上国家となるから、披露宴は地上との窓口となる楽園島が選ばれるのも無理からぬことだった。

既に会場に指定された大広間には多くの魔族人族あと竜族が揃い、さらに新郎新婦と共に海底から上がってきた人魚族が加わり、宴もたけなわ。

俺も周囲を見回すと、すぐ見知った顔に出会った。

「魔王さん!」

魔国の支配者、魔族の長、魔王さんも当然のように披露宴に出席していた。

「こっちの方にいたんですね。魔王さんも神前式から出席したらよかったのに……」

「いやいや、結婚の秘蹟は各種族にとって重大なもの。部外者がおいそれと踏み込んでいいものではない」

魔王さんは政治的な思慮深さをもって言う。

「たしかにアロワナ王子は盟友ではあるが、今回は魔国と人魚国、国家間の関係を優先したくてな。それでこそ両国の友好は末永く続くというものだ」

なるほど。

そう考えての披露宴からの出席なんですね。

他にもアロワナ王子が武者修行の時同行した旅の仲間も披露宴から参加した。

ソンゴクフォン、ハッカイ、それにガイザードラゴンのアードヘッグさんたちだ。

「まーあーしはめんどくせー儀式なんてゴメンなんでぇー。宴会から参加の方がありがたいっすぅー。さー食いまくるっすよぉー!!」

披露宴にて出されるビュッフェ方式御馳走の数々へと駆け出していったソンゴクフォン。

あとは……。

「アードヘッグさんもご無沙汰しております」

「いやいや……! 聖者殿にはいつもお世話になっているのに大した礼もできず……!」

なんかサラリーマンみたいな挨拶になってしまうのだった。

人類の宴に参加しているのだからアードヘッグさんは当然人間形態に変身していた。

そしてアードヘッグさんの後ろにはなんか色々居並んでいる。

四人はいるかな?

しかもその一人が……。

「ヴィール、お前こっちにいたのか?」

「ご主人様! それとジュニアやっと再会できたのだー!」

プラティが抱きかかえるジュニアに駆け寄るヴィールだった。

大抵ジュニアの傍を離れないから今回も同行するかなと思いきや、出発時姿が見えなかったので置いてきた。

そしてここでまさかの合流。

「退屈な儀式なんてゴメンなのだ。それよりここで美味いもの食いながら待ってた方がいいぞー」

ソンゴクフォンと同じこと言ってやがる。

そして他にもアードヘッグさんの背後には同じように人化した竜たちがいた。

「見て見てマリー姉さま! 花嫁さんがお綺麗ですわ!」

「煩いわよシードゥル、竜たるものが下等種族の出で立ちごときに惑わされるんじゃありません」

ブラッディマリーさんとシードゥルではないか。

なんであの二人はアードヘッグさんと一緒におるの?

「でも素敵! ニンゲンの結婚という儀式には前々から憧れていましたの! 私もあんな風に純白のドレスを着て嫁ぎたいわ!」

「何を言っているの。誇り高きドラゴンが下等種族の真似事なんて……。情けない、情けないけど……!」

ブラッディマリーさん、新郎新婦の席に座るパッファの花嫁姿にさっきから視線が離せない。

「わ、わたくしには白は似合わないし……! アードヘッグはどう思うかしら?」

「マリー姉上なら何を着ても似合いますぞ?」

「それはウェディングドレスを着てもいいということ!?」

何ラブコメしてんだこの竜ども?

最後の同行竜である先代ガイザードラゴンのアル・ゴールさんが悟りきった顔でビュッフェをさらに山盛りしていた。

間近でラブコメを見させられ続けるとああいう表情になるんだな。

* * *

「……うふふ、アロワナちゃんとパッファさんのために、こんなにたくさんの方々が集まってくれたのね。感無量だわ」

シーラ王妃が感慨深げに言った。

しかし本当によく集まったよなあ。

特に竜族。

皇帝竜とそのご一家が出席した人類の結婚式ってこれが初めてなんじゃ。

「これがアロワナちゃんたちの人徳と言えるのかもねえ。立派になってと言うべきねえ。これなら、あのことを発表してもいいかしら?」

「もっす!」

人魚王のナーガス陛下が答える。

一体何を発表しようというのか?