軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

436 神前の誓い

式場へと案内される俺。

そして中の賑わいに圧倒された。

「人多いッ!?」

いや正確には人魚だが。

さすが王子様の結婚式だけあって大賑わい。大規模。

式場内は床一面に水が張ってあって、人魚たちが自由に泳ぎ回れるようになっている。

地上人の俺はプラティの魔法薬で水の上を歩ける仕様になっているが……。

参列する人たちもきっと偉い人ばっかりなんだろうなあ。

それがたくさん。数えきれないほど。

やっぱり王族の結婚式凄い……!?

「俺って場違いなのではないだろうか……!?」

「安心してください。ここにいる中で聖者様こそが間違いなく一番偉くて強大です」

誰だ俺の独り言を拾うのは!?

と思って振り向いたら、そこにいたのは『獄炎の魔女』ランプアイではないか?

その伴侶のヘンドラーくぅんも一緒に!

「おお、キミらも結婚おめでとう」

「ありがとうございます。我々は大した者でもないですし式は慎ましやかに済ませましたが」

ヘンドラーくんと一緒になったため、パッファより一足先に農場を辞して人魚国へと立ち返った彼女。

結婚を機に人魚国の重職に就き、国家に尽くすのかと思いきやヘンドラーくん、まだまだ論客を続けるらしい。

ランプアイと一緒に。

ランプアイなど生粋の軍人だから結婚後は否応なく夫を将軍にでもするかと思いきや、そんなことなかった。

『プラティ王女を生涯かけて守ります!』と息巻いていたのに、その仕事も辞めてなあ。

恋愛はすべてに優先されるということか。

でも警護の仕事自体は、妹分のベールテールやクラウンテールに継承させているんで問題なさげだが。

「キミらも参列するんだね。まあ当然か。新郎新婦それぞれの大切な友人なんだし」

「とんでもありません。無役の我ら夫婦が王族の結婚式に出席するなど分不相応。それを許していただいたアロワナ王子の慈悲には感謝しきれません」

畏まるヘンドラーくん。

でもキミもどうせアロワナ王子の求めで重役に就くんじゃない、そのうち?

「プラティ様、申し訳ありません。警護役を辞しておきながら、それに匹敵する使命も得ることができず……」

「いいのよいいのよ。アナタが軍人の使命より恋愛を取ったって聞いて愉快なぐらいなんだから。ベタ家で何があったかはもう聞いてるわ。どうせ兄さんやパッファが人事権とったらアナタたちも重役に就かされるし、ほんの少しの自由時間よ」

プラティも同じ予測をしていた。

そうしてだべっている間に時間は過ぎていく。

そしてついに式が開始される。

「新郎新婦のおなりー」

巨大なドアがギギギと開き、そこから現れる晴れやかなる男女。

アロワナ王子とパッファだった。

晴れの舞台だけあって着飾って、人生で一番晴れやかな状態になっている。

ちなみにドレスをデザインしたのはやっぱりバティだ。

国境を越えて知れ渡る彼女のセンス。

一斉に拍手が鳴って新郎新婦を迎える。

ここにいる全員が、今日また一つ新生した夫婦を祝福した。

「ふぐうううッ! おめでとう! ぼめでどううううううッ!?」

「うわあッ!? なんだ!?」

俺の隣でガン泣きしている人がいたのでビックリした。

誰かと思ったら知り合いだったので二度ビックリ。

『アビスの魔女』ゾス・サイラではないか。

「お前まで招待されたのかッ!?」

「当たり前じゃぁ! わらわはパッファの恩師じゃぞ! 当然招待される資格は……! ふぐうううううッ!!」

そして泣き出す!?

なんで、もしや弟子のパッファの晴れ姿に感動して!?

そんなキャラだったっけ、この凶悪魔女!?

「……パッファはのう。幼い頃に両親を亡くし、一人で生きておった子どもだったのよ。それをわらわが偶然拾ってなあ。あまりにも哀れだったので独り立ちできるまで面倒見てやったのよ……」

なんか唐突に思い出を語り始めた!?

「一通り魔女としての技を叩き込んでから独立させてやったんじゃがのう。お互い恩義を感じるタチでもないし、あとは知らんという感じだったんじゃが……。今日の一番幸せそうな姿を見て涙が止まらんのうううううううッ!!」

はいはい。

俺もビックリですわ。コイツがこんなに涙もろい性格だったとは。

意外と面倒見がいいよな。パッファだけじゃなくエンゼルたち少女人魚にもなんか慕われてるし。

……いやいや。

今日の主役はアロワナ王子とパッファだ。

脇目も振らず二人に注目せねば。

ヴァージンロードをしずしず進む。

新郎に寄り添うパッファの姿は、普段からは想像もできないくらい淑やかだった。

「人妻になって独特の色香が出てきたな」

「言い方……!」

プラティに小声でたしなめられた。

ヴァージンロードを進み、祭壇へと臨む二人。

あそこで永遠の愛を誓うのだろう。神に向って。

「……やっぱり人魚族だから、誓う相手は海神ポセイドス?」

「そりゃそうよ。アタシたち人魚族の創造神なんだから」

ポセイドス神とは直接会ったことがあるけれど、なんかいい加減な人(神)という印象だったなあ。

あんなのに誓わされて二人の将来は大丈夫なんだろうか?

ハデス神の方に変えない?

あの神なら少なくとも浮気はしない。

さて、祭壇に上がったら神父さんなり神官さんが神に代わって夫婦の誓いを見届けるんだろうが……。

……あれ?

おかしい。

祭壇で新郎新婦を迎える神官にまで見覚えがあるぞ!?

「あれは先生では!?」

ノーライフキングの先生!?

地上のダンジョンに住まわれているはずの方が何故こんな海底に!?

「アタシからお願いしたのよ」

「プラティ!? キミの仕業か!?」

「一応アホでも実兄と盟友の結婚式だから最高にしたいじゃない。それなら神前の誓いを見届けてくださるのに先生以上の御方がいる!?」

「いない!」

ぐうの音も出ないほどの正論だが、先生への迷惑考えてる!?

こんな遠くまでご足労いただいて!!

『お二人の門出を見届けられて感無量ですぞ。親の気持ちはこのようなものなのかなあ……!?』

いや本人乗り気だ!?

やっぱり優しい!

『では、二人が誓いを立てるに相応しい舞台を整えよう。へんにゃらも』

先生が呪文を唱えると空間が歪み、祭壇に巨大なる存在が出現する。

海神ポセイドスが現れた。

「また神召喚したあああぁーーーッ!?」

直で!?

直接神に誓わせる気だ! 愛を!

こんな結婚式見たことねえ!?

「いやあるか……。魔王さんも直接ハデス神の前で誓ってたっけ……!?」

前例があるからって二度三度繰り返していいわけじゃないがな!?

出席者さんたちも驚きでドヨドヨしたり失神したりしている。

『今日よき日に、人魚族の英雄を祝福できる誉れを嬉しく思うぞ』

『本当に、二人ともおめでとうございます』

ポセイドス神の横に、もう一人女神が並んでいた。

誰?

ポセイドス神の妻のアンフィトルテ女神じゃないな?

「海神妃メドゥーサ様でしょう。ポセイドス神のもう片方の妃神」

二神目!?

あの神野郎一夫多妻か!?

「出産なら海母神であるアンフィトルテ様だけど、結婚は海神妃メドゥーサ様の領分でしょうね。ちょうどパッファはメドゥーサ様から祝福受けてるし」

『我が祝福を受けし御方……』

メドゥーサ女神が語りだした。

月光に照らされた夜の海のような深い黒髪の女神だった。

『やはりアナタは私が思った通りの道を進みました。これからも責任ある者を支える責務を果たし続けなさい』

「はい、この人の妻として生涯支えていくことを神の妃に誓います」

恭しく述べるパッファ。

これによって夫婦の誓いは神々に見届けられた。

『あれ!? 余は一言もコメントなし!?』

煩いポセイドス神黙ってて。今いいところなの。

そして式の参列者は一部の肝の据わった者たちを除いて半数以上が腰を抜かし、水上にぷかぷか浮いていた。

二人の結婚式は、後々に語り継がれるほど印象深いものになっただろう。