軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

427 続・人魚こもごも

そういう感じでアロワナ王子パッファの結婚が本決まり。二人は晴れて一緒になることになった。

それでも挙式の準備にもうちょっとだけ時間がかかるが、実際式を挙げればパッファは人魚王室に移り住み、農場を出ていく。

ついにウチから卒業者がでるのか……!

寂しいような、感慨深いな……!

パッファ当人は、残り少ない農場で過ごす時間を後輩の指導に充てていた。

既にディスカスという立派な後釜を用意してはいたが、エンゼルが飛び入りしたために彼女の育成を頑張るらしい。

「アタイの後継者となるからにはお飾りトップなんて許さないからなオラッ! 使い物になる程度には仕込んでやる!」

「うわーん! 義姉が実姉並に厳しいよー!?」

エンゼルの泣き叫ぶ声が農場中に響き渡った。

まあ、それが彼女の選んだ道だ。頑張って乗り越えてほしい。

「エンゼルちゃん……! 頑張って立派な魔女になるのよ……!」

それを物陰から見守るシーラ王妃。

何をやっておるのですかアナタ?

「いえ……ッ。やっぱり修行中のエンゼルちゃんが気になって……ッ! あの子あれでしょう? ウチの子の中で一番手がかかるのよ。生まれた時からやたらと手間がかかったのね。でも何故でしょう? だからこそ一層可愛いというか……?」

プラティがこの場にいて聞いていたら頭痛を伴わせるであろうセリフだった。

幸いというか彼女は自前の子であるジュニアにつきっきりだ。

「……たしかに王妃様、前々からエンゼルに甘々でしたよね」

俺は知っている。

目撃している。

大した出来事でもなかったので語らずスルーしていたが、実は俺たちが過去人魚国を訪れていた際、常にエンゼルも同行していたのだ。

孫の顔見せに初来訪した時も、武泳大会の時も。

里帰りということでエンゼルは俺たちにくっついて一緒に人魚国へと来ていた。

だからと言って、特に語るほどでもなかったからスルーしていたのだが。

でもエンゼルはずっとシーラ王妃にベタベタくっついていた。

離れていたのはせいぜい王妃がパッファと対決していた時ぐらいだった。

特に語るほどでもなかったのでスルーしていたが。

その時から『王妃って次女に激甘だなあ』とは思っていた。

「わかっているの……! エンゼルちゃんも王女、責任ある立場としては厳しく育てないといけないって! でもアタシはあの子に嫌われるのがイヤでつい甘やかして……! ダメな母親ね!!」

それで代わりに長女が鬼のように厳しく躾けたと……!?

バランスが取れているというかなんというか……!?

「でもパッファさんがお嫁に来てくれて、プラティちゃんだけじゃなくてさらに厳しい姉がもう一人増えたってことで頼もしいわね。これでエンゼルちゃんも立派なレディに育ってくれるに違いないわ!」

そりゃまあ……!

プラティとパッファのダブルで躾けられてそれでもダメならどうしようもないでしょうが……!

そんな風にエンゼルの将来を危ぶんだり安心したりしていると……。

「あ、ママー!」

当のエンゼルが母親の姿を見つけて駆け寄ってきた。

そして抱き着いてきた。

「助けて兄嫁が! 兄嫁が予想以上に厳しい! これじゃプラティお姉ちゃんと変わらないよママからも一言言ってやってー!」

躊躇なく母親に甘える王女。

でもダメだぞ。シーラ王妃はキミの成長のためにパッファのスパルタ教育を歓迎しているんだ。

心を鬼にしてパッファのしごきを追認してくださるはず……。

「そうねえ、ちょっと厳しすぎるんじゃないかしらねえ」

ダメだった。

所詮親バカは親バカだった。

「ねえパッファさん? 教育は厳しすぎてもダメだと思うのよ? ここは飴と鞭、鞭と飴、飴と飴でお願いできないかしら?」

最終的に鞭がなくなった!?

それに対してパッファは……。

「それはできません! アタイが農場を去る日は目前に迫ってるんです! それまでにコイツを、せめてディスカスの手伝いができる程度に仕上げておかないと農場に迷惑が掛かります!」

「そうは言ってもねえ、厳しいだけじゃ子どもはついてきてくれないのよ?」

これは!

嫁姑戦争に付きものの一戦局。子ども(孫)の教育方針で対立しあうの図!?

なんでパッファがアロワナ王子の子どもを産む前から勃発してるんだ!?

「プラティからも最大限厳しくするように要請されていますし」

「ぐぬッ! プラティちゃんめ寝返ったか!?」

いや、プラティの立ち位置は徹頭徹尾変わらないものかと。

常に妹の敵であり続ける姉なので。

「それよりも王妃様……?」

これ以上この話題を続けても不毛な気がしてきたので話題を変えることにした。

無理やりにでも。

「遊びに来ていただいたのは嬉しいんですが、いつまでこっちにいられるんです? やっぱり王様も王妃様もお忙しいでしょうし……?」

ちなみに王様の方はまだ相撲に興じている。

アロワナ王子まで加わって武泳大会では見られなかった幻の大一番が展開中。

「おほほほほ……、大丈夫よ、ちゃんと代役を立ててきてあるから」

「代役?」

「ゾス・サイラちゃんよ」

「アイツが!?」

『アビスの魔女』ゾス・サイラが。

「彼女ってたしか人魚族のお尋ね者じゃなかったでしたっけ!? 指名手配犯じゃなかったでしたっけ!?」

そんな人物に政務を代行させて大丈夫なんですか!?

「心配ないわよ。ゾス・サイラちゃんはとっても有能なんですから。政治ぐらいけっこう簡単にこなしちゃうわよ」

「そうかもしれませんが!」

「それにゾス・サイラちゃんはパッファさんの師匠なんでしょう? パッファさんが王妃になるというのに彼女がいつまでも犯罪者じゃ格好がつかないわ。何かしらの役職に就いてもらわないと」

「アタイのせいで恩師がえらい目に!?」

聞いてもっとも戦慄しているのはパッファだった。

あまり取り沙汰されないがパッファがゾス・サイラの弟子であることは本人たちも認めている。

その割に絡んでいるところ一度も見たことがないんだがな。

「そうだわ! アロワナちゃんとパッファさんの結婚式には、ゾス・サイラちゃんに仲人を務めてもらうというのはどうかしら!? 師に見送られてパッファさんも嬉しいでしょう!?」

「「なんとッ!?」」

俺とパッファ同時に驚愕。

というかこっちの世界にも仲人というシステムがあったのか?

「いやあのッ!? でも仲人って既婚者じゃないと務めちゃダメなんでしょう!?」

少なくとも俺の前いた世界ではそうだったが。こっちも同じかどうか知らんけど。

ゾス・サイラはたしか独身でしょう?

「あら、ゾス・サイラちゃんにもお相手がいらっしゃるんでしょう? たしかオークボさんとか?」

「どっから仕入れたその情報!?」

オークボ自身まだ自覚がない情報なのに!

それを遠くの人魚国にいながら掴んでいるシーラ王妃恐るべし!

「待ってください! それまだ確定していないので! 今の時点で突っつくとどう転ぶかわかりません! 繊細過ぎて!」

「あらそう? ゾス・サイラちゃんもお弟子さんが先に人妻になったら肩身が狭いだろうと思って、この際だから一緒に結婚させてあげようと思っているのよ。お相手がいるなら止まる必要もないでしょう?」

何故そこまで手際よく!?

ヤバい! ただでさえ恋愛まっしぐらな人魚族の中でも王妃様となったらその属性が突き抜けている!

自分だけじゃなく周囲までどんどん結婚させようとしている!?

自分の息子の結婚は限界まで止めようとしていたくせに!

あ! その息子の結婚が解禁されてタガが外れたのか!?

「実は既に一組結婚を成立させてあるのよ。あの二人が夫婦になったらアロワナちゃんとパッファさん、両方の助けになってくれると思うの」

え?

それってまさか……!?

「シーラ王妃、ただいま戻りました」

いつの間にか『獄炎の魔女』ランプアイがすぐ傍に立っていた。

シーラ王妃の歓待中、まったく姿が見えていなかったのだが今までどちらへ?

「あら、思ったよりお早いお帰りだったわね。首尾はどうだった?」

「想像以上にスムーズにいきました。ヘンドラー様のご実家の方々も快くわたくしを出迎えていただいて。これもすべて王妃様があらかじめ口添えしていただいたおかげです!」

「いいのいいのよ。『闘魚』ベタ家の秘蔵っ子ヘンドラーさんはアロワナちゃんとも仲がいいからねえ。そんな彼と近衛兵であるアナタが一緒になってくれたら、これからのアロワナちゃん政権にこれほど心強いことはないわ」

ヘンドラーくんとランプアイの結婚を裏で支援していやがった!?

怖いこの王妃! この人が関わることで状況が目まぐるしく進んでいく!?

「というわけで聖者様。心苦しいことではありますが、わたくしは新たな生活のために農場を去らねばなりません。これからはヘンドラー様の妻として人魚国に尽くしていく所存。農場でのプラティ王女警護の任は義妹たるベールテール、クラウンテールに務められるようしっかり鍛え上げておきました」

「まあ、その辺はプラティとしっかり相談して!」

なんにしろキミたちも結婚おめでとう!

どういう状況だろうと愛し合う男女が一緒になることは好ましいよね!?