軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

409 玩具作り

さて。

他の野郎どものことはどうでもいい。

それよりも俺にとって何より優先すべき事柄があった。

ジュニアだ。

去年お生まれになられた我が希望。というか我が息子。

煌めくスターダスト。

季節が冬から春へと移り変わってジュニアもすくすく成長している。

この年頃の子どもは変化の度合いが一日刻みだから、片時も目が離せない。

毎日新しい感動を与えてくれるのだ。

特に最近のジュニアは早くもハイハイを覚えだした。

ジュニアは機動力を手に入れた。

虎が翼を得たようなもので、何処であろうとその手と足で突き進み侵入する。

「そっちはあぶないのですー!」

「おちるのですー! ぶつかるのですー!」

「きがきじゃないのですー!」

家では大地の精霊たちが見てくれるので安心だが、この時期の子どもはちょっと目を離した隙にとんでもないことになりそうで本当に怖い。

「何か、いい手はないものか……!?」

とにかくジュニアが勝手に危ないところへ近づき、ぶつかったり落ちたりヤバいものに触れたりすることがないようにしたい。

そこで俺は閃いた。

あの時期の赤ちゃんは好奇心の塊。興味を引くものには何に対してでも寄っていくからリスクを伴う。

そこで、より興味を引く面白いものを与えてやれば、それにかまけて一ヶ所に留まり管理しやすいのではないかと。

「玩具を与えてみるか」

子どもにとって何より興味なのは玩具。

玩具は子どもの心を鷲掴みにする。

だからこそ玩具売り場で子どもは全身全霊を懸けてギャン泣きするのだろうし、子どもは玩具に夢中になる。

ジュニアもハイハイを会得するほどのフィジカルさを育んだなら、玩具の面白さを理解できるようにもなっているだろう。

玩具に夢中になって危険な冒険を辞めてくれたら親としても一安心。

実際のところ、既にジュニアの子ども部屋にはミエラルが拵えてくれた木馬(三角ではない)とか、魔王さんがパンデモニウム商会を通じて贈ってくれたガラガラとか、玩具類は所狭しとある。

しかし、そこからワンランク上がって、より知的でハイセンスな玩具で遊ぶ年頃になったのではないかウチのジュニアも。

「そういうわけで、なんか溢れる知性を使った玩具を新開発します」

すぐ思い当たったもの。

積み木。

その名の通り木を積んで遊ぶ玩具だ。

字面にすると『それのどこが楽しいの?』ってなる感じだが、木製のブロックが様々な形をしていて組み立てることで様々な事物に見立てることができるというアレだ。

無限の組み合わせ、ユーザーの数だけエンディング(完成品)があるという積み木。子どもの想像性を大いに刺激し感性豊かな人格を育て上げるという。

「よし、作ろう積み木」

ウチのジュニアの感性を伸ばすために。

早くも目的がブレ始めてきた。

* * *

というわけで積み木作りにかかったが……。

まずは素材選びから躓いた。

「赤ちゃん用の玩具ってどんな木材使えばいいのかな……!?」

赤ちゃんは色々デリケート。

思わぬ要因が健康を害することもありえる。

一口に木材といっても、木に含まれる様々な何ぞや成分が人体へ影響を及ぼし、思わぬ結果をもたらすこともありうる。

キャンプでその辺の枝を箸代わりに使ったら、毒が含まれていて死亡した、という話をどこぞで聞いたことがある。

そこまで極端なことはないだろうけれども、大人であれば充分に備わっている抵抗力免疫力も、赤ちゃんにはそんなものまだ伴ないので、人一倍慎重に素材選びしなければ。

そういう気遣いがなければ杉一択で済ますところなんだが、どうなんだろうな? 赤ちゃんに杉?

杉は花粉症とかあるじゃないか。

花粉と木材には何の関係もないじゃろ? と言われるだろうが相手は赤ちゃんである。万が一の可能性も考慮しなければ。

高級木材ヒノキならOK?

高級な分、安全性においても飛び抜けた点があるのだろうし、やはりウチのジュニアには積み木であろうといいものを使わせてあげたい。

「しかし待て!?」

ヒノキは、その独特な匂いが気になる人には気になると聞いたことがある。

お風呂の建材としてはその匂いがマッチして多用されるらしいのだが、逆に繊細な香りを邪魔されるために食器には使われないと聞いた。

ごはんを入れるお櫃にはNGなんだとか。

やはり赤ちゃんの繊細な嗅覚にヒノキは悪影響かもしれない!

するとなんだ?

……漆は間違いなくダメだよな。かぶれる。

いや、どんな木材だろうと加工したあと表面にニスを塗ってしまえば、ゴチャゴチャした木の成分とか関係ないのか?

……いや!

子どもは手にするもの何でも口に入れたがる習性がある。

積み木だってジュニアに渡ればデロッデロのヨダレ塗れにされること確実!

しかしどうなんだ? 舐められたニスが溶け出してジュニアの体内に入り、なんか悪い影響をもたらすとかありえない!?

わからん!?

何もかもわからん!?

赤ちゃんにとって何のどんな素材が正解なのか、俺には何もかもわからん!!

* * *

結局エルフどもに助けてもらうことになった。

思えばアイツら先だってジュニアに木馬をプレゼントしたくだりは既に語ったもんなあ。

あれで問題ないならすべてヤツらに聞けばクリアじゃないか。

というわけでエルフチーム木工班に協力を求めた。

「積み木とは、聖者様の割りに普通なものを作りますね」

班長のミエラルから言われた。

さすがにこの世界でも積み木はオーソドックスな子どもの玩具らしい。

『何ですかこの見たこともない玩具は!? 積み木!? 素晴らしい!!』とはならなかったな。

毎回そうなっても疲れるから別にいいけど。

「積み木ってどんな形がいいだろうか? 基本立方体か?」

「形にも様々種類があった方がいいでしょう。三角形とか入れては?」

「三角形はダメだ! 鋭角じゃないか! なんかの手違いでジュニアに突き刺さったらどうする!?」

「聖者様マジ過保護ですね」

「どんな角度で当たっても怪我させない優しい形……。そうだ円形はどうだろう? 何処から見ても円形の球状とか?」

「積み木としての難易度めっちゃ上がりますよね?」

過保護すぎて逆に厳しくなるヤツだった。

「ブロックの数的にはいくつぐらいが適正だろうか? 二万個?」

「もっと減らしてください」

こうしてミエラルたちの助力を受けつつ、無事異世界積み木が完成した。

* * *

しかし今回、完成して終わりではない。

すべては我が息ジュニアのための規格である。

ジュニアに提出して気に入ってもらえるかどうかにすべての成否がかかっている。

「ジュニアは果たして積み木で遊んでくれるだろうか?」

恐る恐るジュニアの前へ積み木を差し出してみる。

「なんかゴチャゴチャやってると思ったら、こんな謎のものを作ってたのねー」

母親のプラティに呆れられつつ。

問題の積み木の、そのブロックの一つを、ジュニアが手に取った!

「「おおッ!?」」

共同制作者のミエラルも一緒に歓声を上げる。

「ジュニアが積み木に興味を!? 成功か? これは成功か!?」

「いえまだです。子どもは常に大人の想定を超える遊び方をしますから」

たしかにミエラルの言う通り。

掴み上げた積み木のピースを飛行機に見立ててブンブン振り回して終わり! というパターンもありうる。

しかし、ウチのジュニアは一味違った。

掴み上げたブロックを、別のブロックの上に積み重ねた。

「「おお!?」」

そしてさらに別のブロックを取って、二段積みの積み木のさらに上にオン!

「「「おおおおおおッ!?」」」

俺とミエラルに釣られてプラティまで大歓声。

「これは理解している!? ジュニアは積み木の何たるかを理解している!?」

「さすがアタシと旦那様の息子!? 賢いわね!!」

親バカが極まる俺たち。

ジュニアは三段目の上に乗せて、四段目の上に乗せて。どんどん上乗せしていって高く積み上がった。

さながら塔のごとく。

「「「……?」」」

俺たちが理解に苦しんでいるのを尻目にジュニアは、みずからの手で積み上げた積み木の塔を倒し崩した。

ガラガラがシャーン。

そして再び一から積み上げ、崩して、また積み上げる。

これはまるで……!?

「賽の河原の石積み!?」

一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため。

的な永遠に続く作業をセルフで行っている?

「これがジュニア流の積み木の楽しみ方……!?」

赤ちゃんは、大人の想定する遊び方は絶対にしない。

というセオリーは心得ていたつもりだが……。

……我が子よ。

なんでそんな業の深そうな遊びをする!?