軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402 哀れな領主

ワシはグランドバルグ公オセンニム。

人間国の新たな王となる予定の男だ!!

我が母、先代グランドバルグ領主夫人は、まぎれもない先々代人王の愛娘。

我が父の下に降嫁して王族の資格は失ったが、それでも王族の高貴な血が流れていることに違いはない。

そしてその血統はワシにも受け継がれている。

つまりワシにも人王として即位する資格はあるということだ!

無論平時であれば、そのようなこと望むだけでも罪深い。

ワシはあくまで臣下であり、高貴なる王族の下僕であるべきなのだから。

しかし! その敬うべき王族はもういない!

悪しき魔王軍の手によって一人残らず処刑されてしまった! 多分!

そうなれば血が薄まろうとワシが立ち上がるしかあるまい。

この体に流れる一筋の高貴な血統による義務だ。

……とは思っていたものの、なかなか実行に移せずまんじりとすること約二年。

だって反乱起こしても勝てる気しねーんだもん。

魔王軍は強力。いかにウチが大領と言えども領主クラスが挙兵してまともに戦える相手ではない。

しかも今現在、魔王軍による占領統治は寛大。

安い税金、手厚い保護。それらの施政にほだされて人族たちは『魔族に支配される方がいい!』『王族や教団が威張り散らしていた時代に戻りたくない!』と好き放題ほざきおる。

まともな兵力で敵わない上、民の支援まで期待できないとなっては、どう考えても勝ち目はない。

冷静な状況分析から『今は時期ではない』と悟り、表向き服従の態度を繕っていた二年間。

そろそろ『もうこのままでいいかな?』と野心が鎮火しかけていた時に現れたのだ。

教団の使者が。

かつて王族と共に人間国を統治していた巨大勢力、教団。

その本体は、とっくの昔に魔王軍からの侵攻で壊滅したが……、いや実際には魔王軍が攻めてくるより前に逃げ散って自然消滅したのだが……。

だからこそ生き残りはいた。

地下に潜って生き延びていた。

「……グランドバルグ公オセンニム様こそ憂国の士。時代の指導者となる器」

密かに我が邸宅へ忍び込んできた教団の使者は、ワシの本質を見抜いておった。

やっぱお前もそう思う? だよねワシ未来の王だよね!?

「今こそ立ち上がる時です。民は表向きこそ魔族に恭順していますが、その真意は逆。人族の誇りある時代に還りたいと夢見ているはずです」

それはどうだろう?

民草が魔国の支配を受け入れているのは本心からじゃね? 自然マナが還元されたり施政がクリーン化されているのは嬉しいからね?

「くっそ野心家のくせに冷静な状況分析しやがって」

え? 何か言った?

「いいえ大丈夫です。我ら修道服反逆同盟が裏で支援させていただきます」

なんだそのたわけたネーミングは?

「魔王軍の魔の手より逃げ延びた教団の勇士たちが集まって結成されたレジスタンスです。ゼウス神に祝福されし我らが味方するからには公の勝利は約束されたも同然……」

えーでも、教団は魔王軍侵攻の時真っ先に逃げ出したでしょう?

味方は多いに越したことはないけれど、のるかそるかの間際に逃げ出すかもしれない人と一緒に勝負できないんですけど?

「くっそ堅実な……。さすがこの動乱の時代に生き延びた古狸こしゃくな」

さっきから口悪くない?

うーんよく考えたらキミらと手を組むって危険すぎるし、今日のところは見送ろっかな?

ワシが人王になれる機会はいつか必ず来る!

「煩いわ! こうなれば法術魔法で貴様の精神を操作してくれる!!」

なにいッ!?

「まったく邪心のない者には無意味だが、分不相応な野心を隠し持った貴様になら充分通じることだろうよ! ごちゃごちゃ細かいことを考える必要はない! 貴様は愚かな野心を抱いて、ただひたすら突き進めばいいのだ」

* * *

よーし領主反乱起こしちゃおっかなー?

というわけで起こしました反乱。

なんでだっけ?

「邪悪な魔王軍と、それに従う愚かな民どもに鉄槌を加えるためでございます」

そうだった!

そういうキミは我が腹心、修道服反逆同盟からの使者だった!

イカす組織名だね!

「御意にございます。さあ公よ、アナタの領から人間国復興の狼煙を上げましょう。アナタほどの大物が動けば、他の領主や官僚もきっと呼応するはずです。あるいは冒険者ギルドの実力者も」

はっはっは、おだてるでないわ。

しかし味方は一人でも多い方がいい。人間国にいる全領主へ檄文を発そうではないか。

「見事な判断でございます。これにて人間国の復興は叶いましょう」

ということでお手紙たくさん書いた。

送った。

返事が来た。

散々な内容だった。

『グランドバルグ公よ。貴公がここまで愚か者であるとは思わなかった』

出だしから顔面グーパンする勢いの文面。

『本来ならば王家に連なる血族は何親等離れようと根絶やしにするのが征服者の鉄則。であるのに寛大な魔王軍は明確な王族でなければ責めを負わせず、重要な役職に就くことすら許してくださった。貴公の行為は、その魔王軍の恩情への裏切りである』

そこまで力いっぱいに言わんでも。

『私もまた外戚でありながら領主であること許された身。さにあらば貴公の暴挙を許すわけにはいかん。人間国全領主の命を繋ぐためにも、貴公の首は必ず我が手で落とすので覚悟しておけ』

これは控えめに言って宣戦布告だった。

協力を求める書状の返事でケンカ売られるって何事?

他の返事にも『逆賊』『裏切者』『生きる資格なし』『我らの手で殺す』と厳しいお言葉がたくさん。

心が折れそうになる。

挙句、占領府に人質に出した息子からすら……。

『オレが人質になってるのに反乱したってことはオレのこと見捨てたってことだろ。ふざけんなオレがこの手で血祭りにあげてやる』

と返事が来た。

『P.S 親父が送ってきた反乱を促す書状はそのまま総督に手渡したぜ。ざまぁ』

魔王軍にワシの反乱計画がバレる!?

なんてことしやがったんだバカ息子!?

『それはこっちのセリフだバカ親父』

ワシの心情を予測して応答を手紙に書いとくな!?

「こうなっては是非もありません。兵を動員し、戦闘態勢を固めましょう。もはや一刻を争う事態です」

う、うむそうだな。

「公が支配するここメルカイデの都市は、世界最大規模の城壁に囲まれた要塞都市。籠城に徹すれば数年かかっても落とすことができず、その間人間国内の主要街道が断絶され交通がマヒします」

そうだな。

今や為政者の側である魔王軍が受けるダメージは計り知れまい……!?

「既に、都市内各所に我が手の者を放ち、守備兵の指揮官クラスの家族を人質にとっております。これで万が一にも命令に逆らうということはありますまい。さあ下知を。神聖なる人間国を魔族から取り戻す聖戦を宣言なさるのです!」

な、なんか凄い手際がいいな?

よし、じゃあパパ開戦を宣言しちゃおっかなあ!!

* * *

開戦を宣言した翌日には、ワシのいる都市メルカイデは完全包囲されていた。

陣容は、周辺の領主が率いる自警兵団と、魔王軍の派遣部隊からなる混合軍。

「……対応速すぎくね?」

「アナタが不用意にあちこちに手紙を出すからでしょう?」

やっぱりそうか……!?

だって味方が欲しいって勧めてくれたのは使者、お前じゃん。

ビックリするほど誰も乗ってこなかったけどね。

「こうなっては致し方ない。孤軍奮闘するしかありますまい。援軍なくともアナタにはこの、難攻不落の要塞都市メルカイデがある! ここで力尽きるまで何年でも戦いましょう!」

力尽きるまで戦ったらダメじゃない?

ワシ人王になれなくない?

いや待て、なんで人王になろうとしたんだっけ?

なんか大切なことを思い出そうとした瞬間、そんなことどうでもよくなる出来事が起こった。

「領主様! 大変です! 敵の援軍が!」

「ええい、そんなことでいちいち騒ぐな。援軍ならこれからもたくさん来るさ。過剰反応していたら身がもたんぞ?」

「たしかにその通りなのですが、今度現れた援軍は、変わっていると言いますか……!?」

変わっている?

一体どういうことよ?

「城が一つ、丸ごと攻め寄せてきました!!」

ん!?