軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

381 舞台完成

そうして博覧会の準備が着々と進む中……。

俺はそちらにあんまり関わらなかった。

ジュニアの体調がすぐれなかったからだ。

つい最近ジュニアの離乳食が始まったのだが、食欲が低い気がする。

普通だったらもっとたくさん食べるんじゃないの? と思うのに。

周囲は『気のせいだ』と言うが、万が一にもこれが大病の前兆だったらどうする!?

と心配になってプラティと一緒に四六時中つきっきりでいたが、今朝ついに大いに食べてくれたので一安心。

心にゆとりもできたところで博覧会の進行が気になり様子を見ることにした。

聞けば、オークボたちは既に魔都市外で適当な設営地を選び出して工事を始めているという。

『どのくらい進んだかな……?』と思って訪れてみると……。

* * *

……既に完成していた。

「えッ?」

俺が訪れた博覧会場予定地は、もはや何の憂いもなく開場できそうなぐらいすべてが綺麗に整っていた。

製作途中の散らかった感じはどこにもない。

「どうゆうこと?」

「無事完成いたしました……!」

満足顔で言うのは、出迎えに来たオークボだった。

コイツが主犯だよなあ、やっぱり。

「我が君の名に恥じませぬよう、全力を挙げて急ピッチで仕上げさせていただきました。我々にできる最速の仕事です。ご満足いただけたらよいのですが……?」

「うん、速いよ。速いよねえ……。だって……!」

工事が始まってからまだ三日しか経ってないんじゃない?

「速いよ速すぎるよ!! 突貫工事すぎるよ! 大丈夫なのこれ強度とか!? 地震で一斉倒壊しちゃわない!?」

「我々がそのようなしくじりをいたしましょうか? ご安心ください。最大限の安全性を確保した上で、最速の仕事をいたしました」

「三日間で!?」

明らかに保安性をぶっちぎった速度だと思うんだけどなあ!?

何故俺が、そこまで速い仕事に不安がるかというと……。

手早さだけじゃない。仕上がったものの出来栄えも予想をはるかに上回るものだったからだ。

彼らが作ったのは、博覧会の会場。

……であるはずだった。

その字面だけで俺は、郊外に作るサーカスのテントぐらいのものかと想像していた。

それどころじゃなかった。

街だ。

一つのちゃんとした街だった。

規模こそ目と鼻の先にある魔都よりも大分コンパクト。

しかし並び立つ建物や舗装された道路とか、整備された景色が完全に街!

下手したら魔都より文明進んでるんじゃないの!? と言いたくなるような綺麗な街並みだった。

「は、ですが、大魔王様からのアドバイスによると、博覧会場もこれぐらい整ったものでなければ恥ずかしいものだと聞きまして……!」

「またあの文化人野郎!」

唆されて三日で作っちゃうオークボたちもオークボたちだけど!

ここまでのものをねえ!

コイツら、俺の想像を絶するところまで進化しすぎてない!?

「本当に、ここまで必要なの……!? もう一度言うけど、もはや街じゃん? 人が住んでもおかしくない街じゃない?」

「大魔王様の言うところでは、博覧会では一つ一つテーマを持った『館』が必要なのだそうです。それに準じ、今回の博覧会に必要な分だけ館を建てさせていただきました」

館?

何角館とかか?

「主にメインは、バティ殿がメインで運営する『服飾館』。エルロン殿の展示品を並べる『陶器館』。マエルガ殿の『革館』。ポーエル殿の『ガラス館』。ミエラル殿の『木工館』ですな」

なるほど。この街……、ではなく博覧会場に建てられた館一つ一つが、テーマを持った展示場というわけなのだな。

館自体が普通に人住めそうなんだけど。

「ん? でも待て。ちょっとおかしくないか?」

「なんでしょう?」

館が展示会場だとすれば、今オークボが列挙した展示区画だけで大体ネタ切れになるはずだ。

大体五つぐらいか……。

しかし……、何度でも言うぞ?

この街みたいな規模の博覧会場には、どう少なく見積もっても二十軒ぐらいは館があるんだが!?

他の十五棟? ぐらいの館には何が入っているんだよ。

「それがですな……、会場の建造中。色んな部署から要望が入りまして……!?」

「部署って何だよ!?」

「『自分たちも博覧会に出たい』『自分たちの展示会場も作ってくれ』。そんな要望を聞き届けているうちにこんな規模に……!」

「要望っていったい誰から!?」

「まずはバッカス様からですな」

あの半神!?

神と人とのハーフで、もう何千年もお酒大好きで生きているトリックスターがどうした!?

「農場で新開発した酒の発表機会に、ぜひこの博覧会を利用したいということで……! あそこに建っていますのが……!」

オークボ、どうやら酒蔵をイメージしているらしい一際奇抜な建物を指さす。

「バッカス様主催の展示場……。『酒館』です!」

「まんまじゃないか!?」

オークボの解説を聞くに、農場で開発されたビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、果実酒などすべてがあそこで試飲できるらしい。

「トラブルの元になりそうなこと確定的な施設だな……!?」

「はい。開催中は警備を増員する予定でおります」

それは賢明だ。

もしや……、他にも農場の住人たちで、博覧会に展示するメンバーが羨ましくなり『自分も参加させろ!』という輩が続出したと。

そんなことじゃあるまいな!?

「次にあの建物……」

オークボが淡々と説明。

「あれがホルコスフォン殿の主催する『納豆館』です」

納豆! ホルコスフォン!!

やはりアイツも出てきやがったか!?

これを好機と世界中に納豆の素晴らしさを広めるつもりか。

「その隣には姉妹館として併設される『豆館』。レタスレート王女の館です」

「アイツまで出てんの!?」

コンプライアンス的に問題なくなくない!?

一応表舞台に出てきたらダメな子のはずなんだけど!?

「王女の野望は豆の素晴らしさを世界に広めること。大豆、小豆、エンドウ、ソラマメ、ピーナッツとあらゆる豆類を揃えて人々に訴えかけていくとのこと。当人曰く、『これはタマの取り合いよ!』とのことです」

タマというか豆というか。

それでホルコスフォンの『納豆館』とタッグを組んで豆による全国制覇を成し遂げんと。

野望が王女級に膨れ上がっておる。

「それから人魚組の方々が、これを機に地上の人族や魔族には魔法薬のことを伝えたいと。『魔法薬館』を開いています。さらに元自動人形の子たちが『人形館』を開き故マリアージュ錬金術師が遺した自動人形の研究成果を発表するようです」

ほうほう。

百花繚乱ですな。

「ゴブ吉殿たちも奮起してましてな。絹や綿を織って布地にする方法。畑の管理の方法を体系化して発表するようです。僭越ながら我々オークも、これまでの建築経験で培ってきた独自工法の研究発表を……!」

豪華すぎる。

俺的には軽い気持ちで始めてみた博覧会なのに、えらい大ごとになっているではないか。

こんな一つの街規模の博覧会場に詰め込まれた英知。

無論これが農場のすべてではないが、それでも外の世界にとっては超絶技術であることはたしかだろう。

それが流出した際に、世界が受ける影響は……!?

俺が難しい顔をして考えていると、その懊悩が伝わったのかオークボが不安そうに尋ねてきた。

「あのう我が君……!? 中止した方がよろしいでしょうか?」

しかしその問い方がいかにも不安そうで……!?

そうだよな。

皆頑張って準備したんだもんな……。

これまで農場で培ってきたものを発表できる場を得られたんだものな。

「……このまま行こう」

「おお!」

「せっかく皆で頑張ったんだからな! 最高の博覧会にしようじゃないか!!」

こうして俺たちの農場博覧会が始まった。

やっぱりなんか思ったより大ごとなんだけど……!?