軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

360 パスタ・アリメンターレ

新しい料理を作りたくなった。

最近そういうのやってなかったし。

そろそろ我が農場でもメニューのレパートリーを増やしてみようかなと思って色々模索してみる。

「でもまあ、あまり面倒がないのがいいな」

素材がないので一から畑で育てる、とか面倒なことは回避したい。

あくまで今あるもので……、からのスタートだ。

とは言っても我が農場、今ではけっこう豊富な食材が揃っていて大抵のものがある。

昔の『あれがない』『これがない』と悔しい思いをしていたのが懐かしいぐらいだ。

で、何を作るか決めた。

「スパゲティでも作るか」

なんやかんやで、これまで作って来たものは和風が主体だったからな。

この辺で洋風にも手を出してみたい。

そしてどうせ作るなら、主食に相当するものにしておけば色々発展しやすいだろう。

ということでスパゲティを作ることにしたんですが、かまいませんよね。

* * *

こーねこーね、こーねこーね……。

小麦粉に水やら卵やらを混ぜてこねる。

この作業はもはやお馴染みのような気はする。

パンとかよく作るから。

今日は試作だから乾麺とかではなく生パスタ。

パスタマシン的なものもないので手打ちだ。

適当に生地が仕上がったところで邪聖剣ドライシュバルツにて刻み、適度な麺状に仕上げていく。

……ぐらいのところでいつものメンツが現れた。

プラティとヴィール。

俺が新作料理を作り出すとエスパー並みの感応力で気づいてやってくる。

最近違うのは、プラティがジュニアを抱いてくるところぐらいか。

「旦那様が新作料理を作っているわ!」

プラティが目をキラリと輝かせて言った。

ハンターの目をしておられる。

「はあ、違うぞよく見ろ。お前の目は節穴か?」

「なんですって!?」

その隣でヴィールがなんか挑発的に言う。

「魚には記憶力がないのか? 見覚えがあるだろう、あの作り方。こねこねした小麦粉を細長くして作るもの。あれは……」

溜め。

「……うどんだ!!」

ハイ不正解。

うどんは前に作ったことがあるからね。

見覚えがあるのは当然だし、同じ小麦粉から作る麺類だから見間違うのも仕方ない。

「ご主人様ー、そんな新進気鋭な表情で既存ものを作ろうだなんて思わせぶりだぞ? 最近新作もないし、才能が枯渇したんじゃないのか?」

ああ?

「仕方ねー。うどん程度でよければこのおれが作るのを手伝ってやるー。このグリンツェルドラゴンの手打ちテクニックを知るがいいのだー」

そうして何故かヴィールも腕まくりし、台所に参戦した。

「適量の小麦粉に水を混ぜて、きっちり混ざり合ったところでこねるのだー! こねこねこねこねこねこねこねこね……!!」

なんかヴィールが物凄いスピードで手打ちしだした。

うどんを。

まあいいや、こっちは淡々とスパゲティを作る。

こっちは既に麺完成しているので、調理に移ろう。

スパゲティといっても色々な種類があるが、今日は一番シンプルなペペロンチーノを作ろうと思います。

……トマトソースとか作ろうとするとまた手間がかかるので、パスタをきっちり作れるようになってからのネクスト課題としよう。

というわけでペペロンチーノだ。

フライパンに油を引き、トウガラシとニンニクを刻んだものを入れて炒める。

その間もヴィールはうどん作りに邁進する。

「麺が完成したぞー! 次は茹でるぞー、洗うぞー!」

そんなヤツのことは放置して……。

ペペロンチーノ作りが続く。

「次はうどんのつゆを作るぞー! 鰹節や昆布で出汁を取って、醤油やみりんを加えるのだー!」

整ったオイルにパスタを投入。

味が絡むようにしっかり炒めて、塩コショウで味を調える。

「茹で上がったうどん麺を、碗の中でつゆとドッキング! そしてネギを入れて、ネギを入れて! さらにネギを入れてさらにネギを入れるのだー!!」

麺が固くなる前にフライパンから下ろし、皿に盛りつけて……。

「「完成!!」」

スパゲティペペロンチーノ!

「うどん!」

「「違う!?」」

テーブルの上に麺類という以外は何の関係もない別物料理が二つ並んだ。

「なんだこれは!? うどんだと思ったのに全然うどんじゃないぞ!? ご主人様がうどんのパチモンを作りやがったぞ!?」

全イタリア人が憤慨しそうなことを言うな。

「お待ちかねの新作料理だよ。その名はパスタ……、スパゲティ……、いやペペロンチーノだ」

「名前がたくさんあるな、どれだ!?」

それを一から説明するのは面倒なので今はスパゲティということにしていてください。

「ほうほう、では早速試食……」

それまで傍観するだけだったプラティが席に座り、まずペペロンチーノを味見する。

教えてもないのにフォークでクルクルと麺をからめとる動作が優雅だった。さすが元お姫様。

「うまい!」

テーレッテレー。

「これは美味しいわ! スープのないうどんなんてどうなることやらと最初思ったけれど、まったく違う食感に味付け! ピリッと辛味が効いてるわね!!」

なかなかに絶賛だった。

ただプラティも、パスタのことをうどんカテゴリの中に入れていた。順番から言って仕方がないけれど。

「……うーんでも、これをジュニアが食べるのはまだ先になりそうねえ。色んな意味で大人の味だわ……」

「ニンンク入っているからね……」

いまだ離乳食もどうかな? ってタイミングのジュニアにはたしかに早い。

彼にはまだプラティのおっぱいで満足してもらおう。

「ははんッ! そんなジュニアにこそうどんが相応しい!」

ヴィールがなんか言い出した。

「うどんならそんな癖のある味もしないし、りにゅーしょくに最適なのだ! うどんこそ正義なのだー!」

ヴィールからの謎のごり押し。

いつからそんなうどん推しになった? 特定の県人か?

ていうかこの竜、いつの間にか易々とうどん手打ちできるようになっていたことが恐ろしい。

「何を言うの!? たしかにジュニアの離乳食には向かないかもしれないけれど、ペペロンチーノは激ウマよ! 唐辛子の辛さとニンニクの臭さで力がもりもり湧いてくるわよ!?」

そしてプラティの謎のパスタ推し。

特定の長靴みたいな国土の人か?

「にんにく臭い息吐きながらジュニアをだっこするな! ジュニアが臭がるだろ!?」

「煩いわね! うどんなんて味が薄いのよ! 味噌煮込みになって出直しなさい!!」

何故だか知らんが麺類戦争が起きてしまった。

「やめるんだ、同じ麺類が何故争う必要があるんだ……!?」

しかし俺ごときでは農場最強の二人を止めることはできない。

仕方ない……、こうなっては最強の助っ人を呼ぶしか……。

「ホルコスフォン!」

「承りました」

破壊天使ホルコスフォンの出番だ。

ホルコスフォンは早速キッチンに立ち、俺が炒め残した生パスタをフライパンに、ぶち込んで……。

さらに納豆もぶち込む!

「納豆パスタお待たせしました」

さらにヴィールが茹で残したうどんに普通につゆを合せて……。

さらに納豆をぶち込む!

「納豆うどんお待たせしました」

香川名物が一瞬のうちに水戸市名物に。

「このように、どんな食品でも納豆と合わさってより美味しくなる。納豆を混ぜて美味しくなれるなら、その料理はすべて兄弟なのです。いがみ合う必要などありません」

「「なるほどー!!」」

ヴィールとプラティはハグし合った。

「ごめんなさいアタシが間違っていたわ! 美味しい料理に差別なんてないわ!」

「そうだ、スパゲティも立派なうどんだ! 区別して争わなくていいんだ!!」

俺はパスされたジュニアを抱きかかえて、その平和の光景を見守った。

そう仲よしが一番。

皆を笑顔にするために料理はあるのだから。

さて次はトマトソースを開発してミートソーススパゲティに挑戦しようかな?