軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

358 竜園のケルビム

シャベだぜ。

今日も元気に冒険者稼業を奮闘中だ。

最近はもっぱら『聖なる白乙女の山』を攻略中。

最強ドラゴンのアレキサンダー様が支配する世界一の最優良ダンジョン。

そこに挑戦することは冒険者として様々なことを学べて成長に繋がる。

ダンジョン自体が広大で、様々なタイプのフィールドがあるから複数の状況を経験でき、色んなモンスターとも遭遇して特性を知ることができる。

何よりも極大優良ダンジョンだけあって多くの冒険者が集うから、A級以上のベテラン冒険者と行動を共にする機会が多い。

皆いい人だから、色々教えてくれるんだぜ。

こんなに多くを学べるダンジョンはねーよ。

おまけにダンジョン主のアレキサンダー様が人間に好意を持ってくれているから、生還率も異様に高いし。

実際、最初は観光気分で『聖なる白乙女の山』に挑んだオレだけど、今では本気で攻略中さ。

この究極ダンジョンに挑み続けることが、オレ自身を磨くもっともいい方法だと信じられるから。

そして実際に成長できた。

攻略し始めは、第一層目ですぐ力尽きて撤退していたオレなのに。

なんと今では中間地点を目前にするまで進めるようになった!

凄いことなんだぜ!

冒険者ギルドの定めた条項では、『聖なる白乙女の山』中間地点までたどり着くことのできたソロ冒険者は無条件でC級に上がれるんだ!

オレも昇格するために、次の攻略では何としても中間地点まで制覇してやるぜ!!

* * *

……で。

実際に『聖なる白乙女の山』を攻略中。

調子いいぜ!

運がいいのか、途上厄介なモンスターに出会うこともなくてアイテムも体力も余裕がある!

時間も余っているし、途中でお腹が痛くなるようなこともないんでまだまだ先に進めそうだ!

見覚えのある道もそろそろ終わる。

未知の領域に踏み込んだら、すぐ先に中間地点があるはずだ!

ゴールはすぐそこ!

このペースを守れさえすれば、まず確実にオレは中間地点の土を踏むことができる。

C級冒険者の称号は目の前だぜ!

C級に上がれば入れるダンジョンも増えるし、収入も上がる!

金銭的余裕ができれば、聖者の農場捜しに今以上の力を注ぐことができるぞ!

一歩一歩夢に近づいている感覚だぜ!

いや、浮かれるのは禁物だ。目の前の成果を確実にゲットしていく。そんな堅実さを忘れちゃシルバーウルフの兄貴に申し訳が立たないぜ!

行くぞ!

まずはC級昇格の条件、『聖なる白乙女の山』中間地点の到達にチェックメイトだ!

この最後の一歩を……!

……ん?

ぐわーーーーーーッ!?

* * *

……はい。

フラミネスオークのハッカイです。

……ああ、また懐かしいこの感覚。

今日はアレキサンダー様のダンジョン『聖なる白乙女の山』にお邪魔しております。

用件は、かつての旅の仲間を見届けるため。

天使ソンゴクフォンが、ダンジョンの守護役に正式就任しました。

「へいへいへいーい、どっからでもかかってくるがいいっすよー」

と言いつつマナカノンを乱れ撃ちするソンゴクフォン。

威力は人がくらっても死なない程度に抑えてあるそうです。

どうしてこんなことになったかというと……。

きっかけはヘルメス神による常識テストでした。

ソンゴクフォンのあまり芳しくないテスト結果に、さらなる指導が必要と判断。

新たな教育係として選ばれたのが最強竜アレキサンダー様でした。

『神すら滅ぼせる力を持ちながら生粋の良識者。アレキサンダーさんしかいないソンゴクフォンに常識を教えられるのは!』

とかなんとか。

元々ソンゴクフォンが農場を訪れる前、アレキサンダーさんのダンジョンでバイトしていたという話も手伝ったようです。

『ソンゴクフォンが常識を覚えるまで、アナタのところで管理してください!』

というヘルメス神の自分の都合全開のお願いに、最強竜は快諾してくださいました。

『ソンゴクフォンほどの強者が良識もなく界隈を出歩く。それはたしかに世界の危機であろう。わたしごときが役に立つのであれば、できる限り導きたい』

なんと良識的な言葉でしょう。

そういうことでソンゴクフォンは晴れて『聖なる白乙女の山』に本格勤務となり、アレキサンダー様の下で色々学んでいくことになりました。

私ハッカイは聖者様の代理として、ソンゴクフォンのことを見届けに来ましたが、パッと見た感じまあ大丈夫なようです。

しっかりちゃんと働いています。

しっかりちゃんと働いて、ダンジョン攻略する冒険者たちを薙ぎ払っています。

「おぎゃあああーーーーッ!?」

おっ。

また射程に入った冒険者が一人、マナカノンの直撃を受けて吹っ飛ばされました。

あれでソンゴクフォンの射撃は正確かつ俊敏なので、まあ回避は不可能です。

防御はもっと無理。

ただでさえ死なないように威力を抑えているぐらいなんですし。

「こりゃあああーーーッ! 反則野郎!!」

吹っ飛ばされた冒険者の一人がヤケクソ気味に喚き散らします。

「テメエが陣取ってたら、どこだろうと突破不可能だって言ったじゃねえかあああッ!? それをなんだ、奥に行くためには絶対通らなきゃいけない要衝に陣取りやがってええええええーーーッ!!」

「あ、オッサンちわっすぅ。今日も元気ぃ?」

ソンゴクフォンはあの中年冒険者と顔馴染みのようです。

アレキサンダー様のダンジョンには以前からバイトでガーディアン役を務めていたそうなので、攻め手の冒険者とも面識があるようです。

「おっさーん、あのな? あーしバイトで一時期だけここで無双するっつーてたじゃん? あれはウソだ」

「なにいいいいいいッ!!」

「正式にここへ就職することになったんでぇー、これからも容赦なくオッサンたちを駆逐していくよー。よろー」

「よろしくじゃねええええッ!!」

人族の冒険者たちにとっては、ソンゴクフォンに守られている時点で行き止まりにぶち当たったも同然。

ラスボス級の強さを持った中ボスなど迷惑の極みと言うべきでしょう。

「まだだ、まだだ……!」

おや?

別の方面から立ち上がる冒険者が?

あっちは若いですな。いかにも駆け出しといった感じです。

「……オレは今日、何としてでも中間地点に到達し、C級に上がると決めたんだ。どんな障害が立ちはだかろうと関係ねえ! オレの熱く燃える冒険者魂で乗り越えてやらあ!!」

そして一直線にソンゴクフォンへ突撃してきます。

「おおおおッ! 壁は打ち砕くためにあるんだあああああッ!!」

「マナカノンばーん」

「うぇっはああああああんッ!?」

果敢に挑む若者冒険者はあえなく一撃で吹き飛ばされてしまいました。

やっぱり気合いだけじゃどうにもならない状況もありますなあ。

このようにしてアレキサンダー様のダンジョンには新たな名物。

『遭遇したら即リタイヤの死神天使ソンゴクフォン』が爆誕したのでした。

「うぇーい! 圧倒的戦力で雑魚狩りするの楽しぃーい!! あーしはこの新たなホームで地道にコツコツ頑張っていくっすよぉー!!」

その生活に、多くの素朴な冒険者たちが犠牲になっていく様が目に浮かぶようでした。

「あッ、そーだハッカイやん。せっかく様子見に来てくれたんだから、今日は一緒に暴れていかね?」

えッ、私ですか?

「一緒に死線潜り抜けた仲っしょー? 姉さんや王子がいないのは寂しいけど、今日は二人だけで駆逐しよーぜー!」

まあそうですね。せっかく来たんだし。

たまには旅の頃を思い出して羽目外すとしますか。

「んぎゃあああああッ!? なんだあのオークはあああッ!?」

「オークと思えないほど強い!? 聖属性攻撃してくるオークなんて聞いたことがねええッ!?」

「あんなツートップが守りについて突破できるかあああッ!? S級冒険者でも無理だッ!!」

塵芥のごとく薙ぎ払われる冒険者さんたちを見て、私も少し心苦しくなってきました。

このままではあまりに冒険者たちが可哀相なので、私の方からアレキサンダー様に注進してソンゴクフォンの運用を考え直すようにしました。

とにかく遭遇、即ゲームオーバーになる仕様なので、必ず通らなきゃいけないルートを塞ぐように固定しておくのは鬼畜すぎます。

そこで彼女自身一ヶ所に留まらず自由に徘徊して、偶然遭遇したら即ゲームオーバーということにしてもらいました。

その仕様ですら運ゲーたること甚だしいのですが、冒険者さんたちにはその状況で頑張ってもらうしかありません。

すべてが上手く行きかけていてもソンゴクフォンに当たるだけで崩壊する。

鬼のような目に遭っても挫けないでいただきたい。