軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35 魔族現る

アロワナ王子が再び訪ねてきた。

早速、新居へとご案内する。

「うおッ!? でっか!?」

予想通り、アロワナ王子は我が邸宅の大きさに圧倒されていた。

それでこそ建設した甲斐があったというものだ。

「まさか本当に、こんな立派な邸宅を建ててしまうとは……ッ!? しかもこんな短期間で。聖者様は神から特別な力でも授かっているのか?」

実はそうなんですけれども。

本格的に屋内へ招き入れる。

……ああ、お義兄さん。

靴はそこで脱いでください。そういうルールの家なので。

履いてない?

まあたしかにそうだな。彼、人魚だから。海から上がってきた時に尾びれが人の足に変化する仕組みになっていて、そんな順序で靴なんか履けるわけないもんな。

今でも下半身に着けているのは海パン一丁だし。

しかもブーメランタイプ。

じゃあ、そこの布巾で足を拭いてもらって……。

……はい。

ではこちらへどうぞ。

最近新たに栽培してみた緑茶などいかがでしょう?

「アナタと、我が妹プラティとの結婚について、父と相談してきた」

挨拶もそこそこに、早速本題へ。

ちなみにアロワナ王子の言う父というのは人魚の国の王様らしい。

「父も最初は面食らっていたが、アナタの人柄、強靭さを私から伝え、納得していただいた。特にアナタがどの勢力にも属していない点が素晴らしい、と」

「だろうね」

人魚王の娘プラティは見目麗しい上に、超天才。

人魚が使う独自の魔法薬に精通して、その評判は海中どころか地上にまで響き渡る。

そこまでならば『凄いね』の一言で済まされるが、物事は何事も行き過ぎれば悪いことになる。

地上に住む魔族や人族から、プラティへの結婚の申し込みが来てしまった。

ことは結婚話に留まらず、種族間の外交問題に発展。

プラティが結婚した種族と、軍事同盟を結ぶみたいな話に発展してしまう。

つまり結婚しなかった方と戦争する、みたいなことに。

長いこと魔族と人族の戦争には不干渉で、中立を守ってきた人魚族。

その中立が崩れるということから大騒動に。

当のプラティ自身はそうした窮地を察してかどうか、自分から人魚国を出奔し行方を眩ませてしまった。

そして俺の下へ。

そして今に至る。

「魔族、人族、人魚族。どの勢力にも属していないアナタのところへプラティが嫁いだことから、人魚族は以前の通り中立を守ることができそうだ。何よりプラティ自身がアナタを気に入っている。あの子が好いた相手に嫁ぐことこそ最良」

「それは……!」

なんと返していいのかわからないので、愛想笑いで誤魔化すしかない。

「ともかく、そんな結果になって魔族や人族たちは怒りませんでしたか?」

「怒ったさ」

ですよねえ。

「魔族どもも人族どもも、これを機に人魚族と連合を組んで相手を完全に叩き潰す腹だったようだからな。目論見が外れて双方怒り心頭だ」

「いやはや」

「そこで我が父、人魚王は言い放ったのだ。『我が娘プラティは、聖者の下へと嫁いだのだ』と。『最高の夫となる者へと娘を嫁がせるのは当然のことだ』と」

「…………」

言い逃れのためとはいえ、大きく持ち上げてくれたなあ。

「それで相手は納得したんですか?」

「一応は。プラティを得られぬのは業腹だが、敵対勢力もプラティを狙っている事実を鑑みれば、このまま済ます方がよいと判断したようだ」

もしまかり間違って、プラティが敵方へお嫁に行けば、敵勢力と人魚国の連合に囲まれるのは自分たちだという最悪が出来上がってしまう。

プラティを巡る嫁取り争いは、ハイリターンゆえにハイリスクなのだ。

そのリスクを冒すぐらいなら、なあなあで収めてしまえ、というのも決して愚かな選択肢ではない。

「聖者殿には、けっして御迷惑がかからぬように力を尽くすつもりだ。なので何卒プラティのことをよろしく頼む……!」

「それはもちろんです」

プラティと一緒に、ここでいつまでも和やかに暮らしていく所存。

「それを聞いて安心した。……ところで、肝心のプラティはいずこに?」

「アイツはヴィールと一緒に山ダンジョンに行ってます」

今日もまた、卵を産む鳥モンスターを求めての山を駆けずり回っている。

ヴィールもそうだが、彼女らの食へと懸ける執念は絶大だ。

今日アロワナ王子が来るってわかっていたら、出さずに待機させたんだが。

「そうか、……アイツも、こちらで楽しく過ごせているようで安心した」

「彼女には俺も助けてもらっていますから。あ、そうだ。よかったらこれをどうです? プラティと協力して作った、味噌というものですが……!」

俺の記憶と、プラティの魔法薬学の知識が合わさることで、ついに味噌が完成したのだ。

醤油も。

これで作れる料理の幅がまた広がったぞ、という感じで。

早速味噌は、刻んだネギと和えてネギ味噌にしてみた。

「ほう! これは蟹の中にあるハラワタのようですな!?」

「カニ味噌かー」

たしかに似てるよね。

似てるからカニ味噌って言うんだろうし。

海育ちのアロワナ王子は、食べ物に選り好みがなさそうだった。

王族だからウニとかナマコとか、見た目アレな高級食材を日常的に食ってるんだろうなあ。

「美味しい」

「美味しい」

「あと引く」

「舐めるのが止まらなくなりますな」

そうしてアロワナ王子と二人、ネギ味噌を舐めて美味しさをたしかめ合っていると……。

……外の方から慌てた声が。

「我が君!! ご報告!」

庭先に駆け込んできたのは、我が農場で働くゴブリンの一人ではないか。

今は畑仕事の最中だろうに、一体どうした?

「海岸の方に、見知らぬ船が現れました!」

「何?」

そんなこと、ここで暮らし始めてから一度もなかったことなのに。

船……。

一体誰が乗っている?

「船は接岸し、中より大量のモンスターが上陸してきました。魔族が率いている者と思われます!」

「魔族だと!?」

それに反応したのはアロワナ王子だった。

「まさか魔族にここがバレたのか!? 第一級国家機密にしてあるのに!!」

「何が起こっているかは、実際にたしかめないとわかりません」

結論を出すのは状況把握に努めてからだ。

俺はゴブリンに指示して、魔族が上陸してきたという現場へ向かった。

そこで俺が見たものは……!!

* * *

「……あれ?」

俺の農場に所属するオーク、ゴブリンに制圧されて、虜囚になっている魔族だった。