軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

316 ドラゴンお家騒動

俺です。

アードヘッグさんのガイザードラゴン戴冠式も無事終了し、現場は和やかな会食へと移行しております。

あらかじめ用意しておいた我が農場製の手作り料理の数々に、皆舌鼓を打ちつつ会話が弾んでおります。

「ハァ……、本当にガイザードラゴンになってしまった……! これからどうしたら……!?」

「安心なされアードヘッグ殿! 私たちがついておりますぞ!」

今日の主役アードヘッグさんは旅の仲間アロワナ王子とご歓談。

『……はぁー、ここのごはん美味しい。帰りたくないぐらい美味しい』

そして森羅万象を創造せし万象母神ガイアはまだいた。

ちゃっかり会食に加わって食欲の赴くままに料理を貪りなさる。

『特にこの乾いた肉みたいなのが美味しいわ。噛めば噛むほど味が出る……!?』

「スルメですね。こちらの唐辛子マヨネーズをつけるとさらにおいしく召し上がれますが?」

万象創造神がスルメくっちゃくっちゃ言わせている他にも。

たとえば向こうでヴィールとプラティが……。

「ジュニア~。肉だぞ肉~。肉美味しいぞ~?」

「ギャー! やめなさい離乳食にしても肉は重過ぎる!!」

と騒いでいたり……。

さらにあっちでは、グラウグリンツドラゴンのアレキサンダーさんと、今や本格的に『元』ガイザードラゴンとなったアル・ゴールさんが……。

「うっへえ? これタマネギ入ってるじゃないか……!?」

「好き嫌いはいけませんぞ父上」

やっぱりどっちが子で親かわからないやりとりをしていた。

元々は険悪だったそうだが、きっかけがあって仲直りできたらよいことだ。

さらにアレキサンダーさんの下へ、あのバッカスが寄って来て。

「よう、竜の王子様おひさ」

「世にも珍しい半神ではないか? 何処にでも現れるヤツだと思ったが、こんなところにまで現れるとは」

何だか互いに知り合いな口ぶり。

「せっかくの祝いの席なのだ。我が新作の酒の味見をしてみぬか?」

「お前の作った酒なら美味いに決まっている。是非差し出すがいい」

「わーい、やったあ」

「……美味いな。どんな酒だ?」

「あるドラゴンからエキスを取った酒なんだけど。……いやー、よかった。誰彼かまわず飲ませるものじゃないから在庫処理に困ってたんだ。お前らなら飲んでも大丈夫だろうジャンジャン消費していって」

そんな感じで、周囲和やかに済みそうだな……。

「う~む……!?」

アレキサンダーさんが俄かに唸り出した。

どうしたんです?

アナタが深刻そうになると、本当に深刻な事態が起きそうなんですが……!?

「いや、料理これで足りるかと思ってな……!?」

「え?」

そんなバカな。

足りないなんてあるわけないじゃないですか。

今の状態でも充分出席者に行き渡っているのに。

「いやでもなあ、これからやってくる招待客の人数を考えると……!?」

「は?」

招待客!?

何ですそれ聞いてませんよ!?

「ドラゴン仲間に『よければ来い』と招待状を出しておいたんだ。お祝い事は皆で祝うのがいいからな」

なんでそういうこと一言の相談もなくやっちゃうかな!?

卓越した人格者だと思っていたが、やっぱりアレキサンダーさんも所詮ドラゴン、やることがいちいち大雑把。

「ええー? ちょっと待って? ということは、これから農場にドラゴンが大挙して雪崩れ込み……!?」

何処のカタストロフだそれ……!?

「お、噂をすればやって来た」

「え? ……ぎゃーッ!?」

たしかに!

向こうの空からやってくるドラゴンの団体さん!?

翼をはためかせ、空を斬り裂くように、こちらへ向けて猛スピードで接近してくる。

俺たちの頭上で止まり、空中に留まる。

『ガイザードラゴンを僭称する身の程知らずにて卑怯者! アードヘッグはいるか!?』

十体以上はいる竜のうちの一体が言う。

『貴様の姦計許し難し! 全ドラゴンにて最強、真にガイザードラゴンとなるべきグラウグリンツェルドラゴンのブラッディマリー様が、貴様を成敗に来たぞ! ささ、姉上!!』

『うむ』

ご紹介を受けてみたいな感じで、さらにもう一体のドラゴンが前に出た。

これが一目見て他とまったく違うとわかるドラゴンで、鱗が全身真っ黒だった。

この世界のドラゴンは大抵金色か銀色だが、黒いドラゴンというのは初めて見る。

それだけに何とも強そうだった。

「おおー、マリーが来たか」

そう言って空を見上げる幼い子ども。

しかしこの子ども、見た目通りの存在ではない。

もっとも長きに渡って生きる最古竜が変身した姿なのだ。

見た目は子ども、頭脳は大人。それがこのアル・ゴールさん。

「……ああー、やっぱ酒まっずいなあ。ジュース! おれにはジュースこそ至高の飲み物!」

やはり中身も子どもかもしれない。

「あの……、それより今はあの竜の説明を……!」

「ブラッディマリーはおれが二番目に創造した複製体。つまり娘だな」

「二番目? じゃあ一番目は?」

「アレキサンダーに決まってるだろう」

ですよね。

「グリンツェルドラゴン(皇女竜)としては一番上で。だからこそ実力も非常に高い。後継者争いで最後に残る一番の候補と言われていた」

「じゃあ、いきなりアードヘッグさんがガイザードラゴンになったと知ったら?」

「そりゃ怒り心頭だろう。アレキサンダーのヤツ、何を思って招待状なんか出したのか……? 挑発とも考えられるが純粋に善意という可能性もわずかに残ってるんだよな……!」

アレキサンダーさん、ほのかに天然なところがありますもんね。

俺もここ数日の付き合いで何となくわかってきた。

で。

その突如訪問してきた真っ黒な竜がまずは単独で降り立ち、その体を急速に圧縮させる。

それはドラゴンの使う人化の法。

竜から人の姿へと変容したブラッディマリーさんとやらは、はち切れんばかりにお色気たっぷりの美姉さんだった。

「ここにいるのか? アードヘッグとやらが?」

ドラゴン時と同様、深淵なるほど真っ黒なドレスを着こみ、しかもそれが体のライン丸見えになるほどピッチリしている。

お肉もムチムチしているので、起伏激しいプロポーションも剥き出し。

このお色気ムンムンのアダルトお姉さんが、最強ドラゴンの一角なのか?

「こらッ!!」

「うひぃええええーーーーーーーーッ!?」

訂正。

全然最強じゃなかった。

真の最強ドラゴン、アレキサンダーさんの一喝によってマリーさんとやらは引け腰となり、空にいる竜たちは木葉のように吹き飛ばされる。

『うぎゃあああああッ!?』

『怖い、怖いいいいいいいッ!?』

『本当にアレキサンダー兄上がいる!? なんでッ!?』

『絶対勝てるかあッ!? おれは逃げるぞッ!?』

ビビりまくり。

「この礼儀知らずども。ヒトのお宅に訪問するのに、そんな敵意を放出しまくりとは何事だ? お前たちは戦争でもしに来たつもりか?」

多分そうだと思います。

「今日は新たなガイザードラゴンが決まるめでたい日ではないか。それを共に祝おうと招待したのに、お前たちがそんなに無作法では、場所を提供してくれた聖者殿へ申し訳が立たないではないか」

いえ、大丈夫です。

大丈夫ですから、このあまりにも大それた状況に俺の名前を出さないでください!

「アレキサンダーお兄様。この変事の裏にアナタがいたとは、これでますます抜き差しならない状況になりましたわ」

「ぬ?」

「アナタが黒幕となってお父様を討ったのですわね? アードヘッグなどという無名竜を使って。……ご自分が後継者候補から外された恨みですか? 傀儡を王座につけ、頑なに表に出てこないのは何故です?」

マリーさんとやらは完全に誤解していた。

まあ誤解したくなる気持ちもわかるが。

「ですが、ガイザードラゴンの帝位継承は正当に行われるべきです。アナタの横紙破りを認めるわけにはいきません。よってこのグラウグリンツェルドラゴンのブラッディマリーこそが真なるガイザードラゴンとなります!」

『そうだそうだー!』

『マリー様こそが竜の王に相応しい!!』

と空飛ぶ竜たちがわめきたてる。

……そうか。

要はアイツら、マリーさんの取り巻きか。

「この期に及んで情けないヤツらめ……!」

アレキサンダーさんがやれやれとかぶりを振る。

「どうあっても力づくでしか決められないのか。ならば皇帝となったアードヘッグに代わりこのアレキサンダーが真の力づくを見せてやろう」

最強竜と呼ばれる賢老の体から、純白の覇気が発せられる。

この竜が本気になっただけで、すべてが終わるように感じられたが……!

「待つのだ兄上」

それを止める者がいた。

「ここはおれに任せてもらおう、グリンツェルドラゴンのヴィール様がな!」