軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

306 贈り物品評会

始まりました。

神々対抗、ウチの息子への贈り物コンテスト。

司会及び審査は俺にて進行させていただきます。

ではまず、参加者の意気込みを聞いてみましょう。

『全員殺す』

『我が前にひれ伏すがいいわ』

冥神ハデスと海神ポセイドス両名のコメントでした。

物騒。

『大体よハデス。おかしいとは思わんか?』

『何がだ?』

『聖者の妻は人魚だよな? つまり、聖者の息子は、その妻の人魚の息子でもある。彼に流れる血の半分は人魚のものだ』

『だから?』

『その人魚の守護者こそ、この海神ポセイドスではないか。ならばこの子に贈り物を与えるのも余の仕事。部外者は引っ込んでろ』

なんか開始前から小競り合いが繰り広げられている。

『くっくっく……! 浅はかなり海の神』

『なんだと!?』

『生まれがどうあれ、子どもが生まれたのは地上、我ら地の神の領域だ。土の上に住み暮らす者は誰であれ我が子ども! よって我ら地の神にも充分に贈り物をする権利がある!!』

『ぐぬぅッ!?』

あの……!

前哨戦はそれくらいにして、そろそろ本戦に……!

今日の作業を休んで付き合ってるんですから……!

『よかろう! ではこの冥神ハデスが用意した贈り物から披露しよう!!』

「お願いします!」

『不老不死』

ちょっと待て。

大袈裟すぎる。

贈り物豪華すぎてドン引きする。

『ダメかな?』

「ダメですね! そんな世界のすべてを手に入れた覇王が最後に追い求めるようなものを生まれたばかりの息子に与えんでください!!」

恵まれ過ぎるのも却ってよくない。

いや、それ以前の問題!!

「節度をお願いします! 贈り物にも節度を!!」

『カッカッカ! 考えが足りんかったようだなハデス!』

撃沈した対戦相手に勝ち誇った笑いを向けるのは海神ポセイドス。

『お前は、人の子どもの感覚が掴み切れておらんのよ! 神にとって当たり前のものでも人には持て余すこともあるのだ! その感覚にピッタリ沿った、余のベストチョイスを見よ!!』

では発表してください。

海神ポセイドスさんからの贈り物は……!

『七つの海の支配権』

「失格ッ!!」

ダメです!

『えッ? 何がいけなかったの?』みたいな顔しないでください海神!

ゼロ歳児になんてもの与えようとしてるんですか!?

それに海は支配するものじゃないでしょう! 海は自由! 何者にも縛られない自由な者が海の王!!

『えぇ……! ダメか……!』

『やはり聖者の審査は厳しいのう。普通の者だったら、どっちの贈り物にも喜んで飛びつくのに……!』

喜んで飛びつくヤツはむしろ絶対与えちゃダメなヤツでしょう。

ハデスのチョイスも、ポセイドスのチョイスも。

世界の安寧のために気軽に与えないでくださいね?

さて、こうして主神二名が失格となった。

しかし挑戦者は尽きない。

今日、御降臨あそばされた神は他にもたくさんいる。

『フッ、やはりダメねえ旦那たちは』

『男は頭が固いのよ。プレゼント選びは、それこそ女の独壇場!』

次に現れたのは地母神デメテルセポネと海母神アンフィトルテの二神。

ついこないだも会ったばかりの女神たちだ。

そう、今回は先生がたくさんの神を召喚している。

十~二十神はいるであろうか。

その全員がウチのジュニアに贈り物をしようとしてるの!?

しかもたった一つしかない権利の座を賭けて競い合う!?

『この戦い、私が絶対に勝つ!!』

『必ず聖者の息子に我が手で祝福を!』

『そしてお礼にたくさんご馳走を貰う!』

今下心が垣間見えた。

ああ、それでこぞって集まったというわけか。

『待ちなさい!』

『慌てんぼな卑しんぼさんたち。今は私たちの幕よ。この世界の母たる神々の』

デメテルセポネとアンフィトルテ。

女神たちが繰り出す贈り物は一体いかなるものか?

本人たちも言った通り、やはりプレゼントのセンスとしては男性よりも女性の方が優れている印象があるので、夫神たちよりは高得点が見込める。

『まあ、色々考えてはみたわ。相手が喜びそうなものを』

『こういうのは、相手の身になって考えることは大切よね』

そうは言ってもウチのジュニアは生後三ヶ月。

せいぜいまだおっぱい程度しか望むものがないと思いますが?

『とりあえず、赤ちゃんは男の子なんでしょう?』

『ならば、欲しいものは決まっている。いずれ必ず望むようになるでしょう』

そして彼女らは発表した。

我がジュニアへ贈る必殺の……!

『『世界中すべての女からモテモテになる運命!!』』

「やめろ!!」

ウチのジュニアをハーレム主人公にする気か!?

『あれ? これもダメかしら?』

『よく考えたら聖者ちゃんの息子だもん。そんな運命与えられなくても素でモテモテになるってことでしょう?』

やめろよその言い方!!

親の俺までモテモテみたいな言い方じゃないか、そんなことないぞ!

ないよね? ないから!

『母上たちもダメだったようですね!』

『ではいよいよ我々の出番ということ!』

主神、主神の妻に続き、その子どもたちと言えるポジションの眷族神がアップしてきました。

今度はそれら眷族神の一斉攻勢がああああーーーーーッ!?

『私が、聖者の息子に与えるのは、一回の狩りで千匹の獲物を得ることのできる能力!』

「持ち帰りきれないし食いきれない! 却下!」

『七回まで死んでも生き返るようにしてあげよう!』

「さっきの不老不死の下位互換じゃねーか! 却下!」

『すべての知識が溶けた泉の水を飲ませよう!』

「なんか代償が取られそうだから却下!」

『人からも獣からも殺されないようになる!』

「むしろ死亡フラグ臭い! 却下!」

『男でありながら女の人生も経験できる!』

「ウチの息子に変な性癖を植え付けるな! 却下!」

『めんどくせえ! 率直に世界最強の武力を!』

「率直に却下!」

『えーと……!』

「却下!」

* * *

すべての神々の提案が結局ノーサンキューだった。

だってコイツらの提示するもの全部度を越えてるんだもん。

俺は、我が子に英雄なんぞになってほしくないの。穏やかで一生無事に育ってくれたらいいの。

あとワンパクでもいいから逞しく育ってほしい。

なのに神々どもの贈り物は身の丈に合わない大袈裟なものばかりでよ!

俺の息子を覇王か皇帝か、さもなくば世界の破壊者にでもするつもりか!?

「まあ、落ち着きなさいよ旦那様」

満を持して我が妻プラティが出てくる。

いや、キミも怒れよ俺たちの子どものことだぞ!?

「アタシは嬉しいわ、アタシの子どもがこんなにも皆から祝われてるなんて」

「え?」

「お祝いは、何も贈り物だけで示せるわけじゃない。こんなにもウチのぼうやを祝うために神々が一生懸命になってくれるんですもの。こんなに嬉しいことはないわ」

……!?

これは……!?

『そうか、そうか!』

『たしかに、一番大事なのは祝う気持ちだよな! 我々は大事なことを忘れていた!』

『誰が一番かだなんて重要じゃないんだ! 誰もがオンリーワンなのだから!!』

神々どもが都合のいいことを言って逃げに入りやがった。

しかし恐ろしい。

その逃げ道を作ってやったのは他ならぬプラティなのだから。

母は強しというが、子どもを生んだプラティはそれ以前よりもはるかに強かになったのではあるまいか?

『贈り物については保留でいいではないか! まずは皆で、この子の誕生を祝おう!』

『ばんざーい!』

『おめでとー!』

『ビバ!』

『ビバ赤ちゃん!!』

神々がウチの子を取り囲んで万歳三唱し始めた。

なんだこの無駄に神々しい風景?

奇しくもまたお昼寝時のタイミングだったため、騒音にて眠りを妨げられるジュニアは不機嫌であったものの、何やら自分を讃えてくれる空気であることを察し、苦笑で応えるゼロ歳児であった。

こうしてすべて丸く収まった……、かな?

* * *

余談である。

こんな風にありとあらゆる方面から祝いを頂いたジュニアであるが、一人だけまだのヤツがいた。

ヴィールだ。

このドラゴンはジュニアのことを溺愛してるので、何も与えないのはおかしいなと思い、催促にならない加減でそれとなく聞いてみたところ。

「上げる必要はないだろう?」

とヴィールは答えた。

「だってジュニアはずっとおれが守ってやるんだからな。それがおれからの最高のプレゼントだぞ」

…………。

コイツが一番ヤバいような気がしてきた。