軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301 母神集合

子宝に恵まれないことで悩んでいる人族ダルキッシュ魔族ヴァーリーナ国際結婚夫婦を助けることになりました。

具体的にどう助けていいのか皆目見当がつかんが。

「実は……、気になっていることがありまして」

「うぬ?」

聞き取りの過程で、夫婦が口にした不安。

「ご存じのことと思いますが、私とヴァーリーナは種族が違います。私は人族、ヴァーリーナは魔族。この二種族が結婚したという記録は残っていません」

「当然、その間に子どもが生まれたという記録も。そこで不安に思ったのです。もしも、異種族の男女間に子どもは生まれない。元々そういう作りだったとしたら……!」

夫婦の、特に妻側のヴァーリーナさんは不安で押し潰されそうな涙声だった。

「本当のところは我々ごときに解明しようがありません。しかし万能なる聖者様ならばご存じあるのではと思い、こうして……!」

なるほどにゃー。

……俺、そんなに言うほど万能でも全能でもないがな。

しかし俺を頼ってくれた人たちにはできる限りのことをしてあげたい。

当然、二人の疑問に答えることは俺にはできない。その知識がないから。

しかし答えをくれそうな者には心当たりがある。

* * *

『……それでアタシを召喚したってわけ?』

ノーライフキングの先生をお呼びし、さらに先生に召喚魔法を使っていただいて、神を呼び出した。

今回来てもらった神様は、海母神アンフィトルテ。

陸海空のうち海を支配する海神族の女神様である。

『なんでアタシなのよ? 悩んでいるのは人族と魔族なんでしょう? 人魚族を守護するアタシには掠りもしないわよ?』

はい左様です。

しかし、アンフィトルテさんには過去、同じように妊活で悩む我が妻プラティにアドバイスをくれ、見事ジュニア出産まで漕ぎ着けた実績があった。

そういう過去の事例から聞きやすいというか……!

『頼ってくれたことは神として嬉しいから、アタシの知る範囲で答えてあげることはできるけど……』

おお!

やっぱり頼りになる神!

『結論から言って、異種族同士の間で子どもを作るのは無理』

……。

きっぱり言い過ぎだッ!!

一緒に並んで聞いているヴァーリーナさんがレイプ目になっとる。

『人族と魔族と人魚族は、そもそも完全に違う生き物なのよ。生み出した神が違うんだから。魂が違うって言うかね。だから二親を掛け合っても混ざり合うことがないの』

「待ってください! そしたら……!?」

なんか別の方向から闖入者が来た。

おや、留学生の若者たちじゃないですか。

「人族と魔族だけじゃなく、私たち人魚族と他の種族との間にも子どもは生まれないってことですか!?」

『そうよ』

アンフィトルテ女神の断言によって、若者たちに動揺が走った。

今彼らの間では、恋愛旋風が吹き荒れているのだ。

将来彼と結婚して……、などと甘い未来像に胸をときめかせる女子も数多くいることだろう。

そんな未来像を粉々に打ち砕く神の宣言。

「どうにかならないんですか神様!!」

「子どもができなかったら、とても結婚なんて認めてもらえない!」

「生贄を捧げますからどうかああああッ!!」

少女たちが女神に縋りついて、もはやダルキッシュ&ヴァーリーナ夫婦のみの問題ではなくなっていた。

これから三種族が融和していくべき時代に、国際結婚も大いに奨励されるべきだが、このままでは出鼻を挫かれてしまう。

俺としても何とかしたい事態だが。

『そうねえ……』

女神様も難しそうに悩み出した。

『問題の根本としては。こないだ聖者ちゃんとプラティちゃんに起こったことと同じよ。あの時はプラティちゃんに与えたアタシの祝福のお陰で解決できたけど……』

「じゃあ、希望する者にアンフィトルテさんの祝福を……!?」

『それをやるには数が多すぎない? あんまり祝福を乱発すると希少価値下がっちゃうし、何より海母神であるアタシの祝福が効くのは人魚族だけよ?』

つまり人族×魔族のカップルの解決にならないということか。

一番最初に相談に来てくれたダルキッシュさんとヴァーリーナさんは救われない。

『……これは、抜本的な解決法がいりそうねえ』

「神!? 何か方法が!?」

アンフィトルテ女神、何やら秘策を思いついた表情だ。

『アナタたちの言う通り、世界は変わり争いが絶えてきた。ならば私たち神も変化に合わせて世界の彩りを変えましょう。ただしそれは、アタシだけじゃ不可能』

と言いますと?

『世界全体を変えるわけだからね。海の領域のみを管轄するアタシ一神では到底カバーできない。地の繁殖、天の繁殖を司る神との合意が必要だわ。……聖者よ』

「はいッ!?」

女神改まった口調。

『アナタも世界に貢献したいなら尽力なさい。海と地、そして天の母なる神々が集う場を整えるのよ!!』

* * *

そうして、俺はアンフィトルテ女神の言う通りに場を設えました。

「……ここに天地海、三界の母神を召喚すればいいのか?」

『そう言うことらしいですなあ……』

日を改めたので、アンフィトルテ女神は一度神界にお帰りになられた。

今日再び召喚する。

また先生にお願いすることになってしまった。

毎回こき使ってしまって申し訳ない。

「しかも今回は、場所まで変わって……!」

今俺たちがいるのは、いつもの農場ではない。

そこから遠く離れた旧人間国、ダルキッシュさんが治める領内だ。

オークボ城に設置しておいた転移ポイントへ転移魔法できるから移動は楽だが。

何故こんな移動を……?

「別に農場で召喚してもいいだろうに……?」

『アンフィトルテ女神から非常に強い要望でしたからなあ。此度の召喚は農場以外の場所でやれと』

うむ、それが飲めなければ召喚に応じないとすら言われた。

何故そこまで強い要望。

『今回は地と海の神だけでなく、天神も召喚しますからその関係ではないですか?』

そのために、召喚を行う先生までお住いのダンジョンから移動してもらって……。

周囲のギャラリーがビビりながら注目しておるよ。

「なんで見物人がこんなにたくさん……!?」

「すみません聖者様!!」

この場を設営した領主ダルキッシュさん。

「天地海の三母神を召喚する舞台として我が領が選ばれるなど光栄極まること! ただ、そのための準備に奔走しているうちにあちこちに情報が漏れてしまい……! 魔族占領府に報告しないわけにもいきませんし……!」

それで、ウソかホントかたしかめようと見物人が押し寄せてきたってわけか。

とりあえず彼ら遠巻きに俺たちを見ているけれど、ノーライフキングである先生を視認しただけで『来た甲斐があった』って表情になってるぞ。

『皆さん、こんにちわー。トマクモアが千年ぶりに人間国へ帰ってきましたぞー』

そして気さくに手を振る先生!?

最近久々に自分の生前の名前を思い出してか、浮かれ気味になっている!?

『では早速、儀式に入るとしますか。まずは発起人、いや発起神である海母神アンフィトルテと、地母神デメテルセポネを召喚いたしましょう』

「あれ? 二神だけ」

聞くところによると、天地海の三神を召喚するんじゃないの?

『実は召喚する順番も厳しく指定されていましてな。まず地海の二神を召喚し、然るのちに天母神を召喚せよと……』

何なんだ……?

『にゃー』

先生の召喚呪文に反応して、時空を歪めて現れる。

この世のものとは思えぬ美を伴った二女神が。

『デメテルセポネちゃん、おひさー』

『会えて嬉しい! ……あら、マニキュア変えた?』

『あ! わかるー!? ウチの旦那全然気づいてくれなくってー!? やっぱ女の子同士じゃないとダメよねー!?』

相変わらず軽いノリの女神様たちだな。

アンフィトルテ女神だけでなくデメテルセポネ女神とも面識がある俺なので動揺はないが。

周囲のギャラリーたちは大騒ぎしている。

中には泡を吹いて倒れたり、感涙しながら膝をついて祈りを捧げたりする者もいた。

今回初合流の地母神デメテルセポネが言う。

『話は伺っているわ。人類すべてが種の隔てなく愛し合って子を成せるように、天地海の三母神が合意して設定を替えようって。とても素敵だわ。喜んで協力しましょう!』

『あーん! デメテルセポネちゃんならそう言うと思ったー!』

女神が女神に抱きついた。

『しかしそうなると……、問題は彼女ね』

『そうなのよ。不死の王は注文通りアイツはまだ呼び出していないわね。感心感心』

地の母神も海の母神も、何やら用心深そうな表情。

『あの子がヘソ曲げたら、すべて終わりだもん。慎重に行かないと……』

『そうねぇ、聖者ちゃんも含めてじっくり打ち合わせしておきましょう』

という風に女神たちが警戒する相手とは、誰ぞや?

それは三番目の母の神。

天地海のうち天を司る。

天母神ヘラ。

天の神の王であるゼウスの妻でもあるという。