軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

276 リテセウスの冒険

はい。

引き続き人族のリテセウスです。

売られた仔牛のごとく魔族の下へと引き渡された僕。

一体これからどんな運命が待ち受けているのやら?

生贄となってモンスターの腹の中に……、ということはないとは言ったものの、魔族の使う魔法の触媒にされて生命力を搾り取られるなんてことはあるかも。

「だとしたら短い人生だったなあ……」

ま、お世話になった領主様のために命を使えるなら本望か。

要請によって差し出された人族の若者たちは、一旦占領府に集められるらしい。

そこで僕もまず占領府へ出頭した。

占領府はかつて人間国の首都だった街にあり、占領府の府庁は前王城。

「まさかこんな形でお城に上がることになるとは……!?」

まだ人間国健在だった頃は、賤民になんか一生縁がない場所だったろうが。

世の中わからないもんだな。

所定の部屋に行くと、そこには僕と同じ年頃の男女が幾人も集まっていた。

僕同様に差し出された生贄……、もとい人材たちだろう。

他の領を代表してきた。

「ワルキナ!」

「リテセウスじゃないか!? 久しぶりー」

その中で見知った顔があったので駆け寄った。

隣の領で、領主侍従をしていたワルキナ。近隣領の交流事で何度も顔合わせした。

「ここにいるってことは、僕と同じ理由か……?」

身代わり。

「そうそう、ウチはお嬢さまがちょうどいい年頃だけど、まさか差し出すわけにはいかないじゃん? だからオレが代わりに」

お互い大変だなあ。

見回すと、集まった若者の中には僕らのような身代わりに交じって、明らかに貴族だろうという身なりの方もいた。

「身代わりを出さずに当人が来たのか」

度胸あるなあ。

「替えが利く次男三男なんだろうけど、やっぱりみずからを犠牲にして民を守ろうって姿勢には心打たれるな。お前んとこのバカ息子とはえらい違いだよ」

ワルキナ言う。

「なんで言及するところウチなの? キミの領だって同じような事情じゃん?」

「バカ、ウチはお嬢様だぞ!? か弱い女性なんだよ!」

何その理不尽なようで、なんだかわかる理屈?

まあいか。

どうせ明日にはなくなるかもしれない命。

無駄なことを考えて時間を浪費するのはやめよう。

* * *

そうして待っているうちに、すべての生贄……もとい人材が集まり終えたようだ。

「私が魔族占領府の総督マルバストスである」

偉そうな魔族が出てきた。

偉そうとは言うが、振る舞いが傲岸というのではなく、顔つきや佇まいに気品が漂っている感じだ。

いわば偉ぶっているのではなく、存在自体で『偉いんだろうな』と察せられる?

「まずは一同、控えよ」

ええ……?

一番偉いアナタが登場したっていうのに、まだ控えろってどういうこと?

……と思ったら違った。

さらに偉い人がまだいた。

「魔王ゼダン様のおなりである」

「!?」

総督が脇に下がり、交代するように僕らの前に現れる巨人。

壁が迫って来たのかと思った。

それぐらいの気迫の大きさだった。

これが魔王!?

魔王って、魔族側の総大将じゃないんですか。

つまりこれより上がないってぐらい上!?

「まずは、皆よく集まってくれた。大儀であった」

魔王、厳かに言う。

何で魔王直々にお出迎え!?

どんな悲惨な展開が来ても動じないように心がまえしてきたが、早速想像を越えてきた!?

「しかし魔王様。あまり感心せぬ顔ぶれですぞ?」

脇から総督が言う。

「身なりでわかります。ここに送られてきた者の多くが使用人の類でしょう。貴族たちが、我らに子女をやるのが惜しくて身代わりとしたのが丸わかりです」

やっべえ、やっぱバレてる?

「よいではないか」

しかし魔王寛大。

「どうせ生贄にでもされると警戒したのだろう。ここにいる者は、そうした危険を受け入れた上で、死を覚悟してきた者たちだ。顔つきが違うであろう」

と僕たちを見渡してくる。

「才気煥発なだけでなく、我が身を犠牲にしても故郷を守りたいという覚悟を持ち合わせる者。こういう者たちを集めたいがために、わざと招集目的をぼやかしたのだ。おかげで活きのいい若者たちが揃った」

そうなんですか!?

じゃあ僕たち、まんまと魔族の思惑にハマってしまったと!?

でも結局僕らを集めてどうする気なんだいい加減教えろ!?

「では、そろそろ理由を語ろうではないか。お前たちをここに集めた理由を……」

魔王は語る。

「お前たちには、留学してもらう!」

「え?」

「これからお前たちにエリート教育を施す。同時に魔国の重要人物ともコネクションを作ってもらう。そうして充分な能力を身につけた上で、魔国人間国双方のために働いてもらう。そのための留学だ」

ザワザワザワ……。

さすがに皆、無反応ではいられないか。

動揺のざわめきが前後左右から聞こえる。

「魔族のためだけではない。人族のためだけでもない。一つとなった二つの種族がともに繁栄していくために、お前たちに働いてほしいのだ。受けてくれるな?」

ここでまごついても仕方ないので、結局受けることにした。

「では、早速留学先に連れていくことにしよう。現場では、既に魔族側のお前たちと同程度の若手が訓練を始めている。ヤツらと共に学び、親交を深めるのも目的だ」

魔王は歩き出し、僕たちの人だかりの中に入った。

ちょうど中心の位置に立つと……。

「マルバストス、ひとまずさらばだ。また改めてゆっくり話をしよう」

「人間国は、このマルバストスが命に代えて安定させますので、ご案じなさいませぬよう」

魔族総督が頭を下げる。

次の瞬間、その総督の姿が消えた。

いや総督だけではない。周囲の王城の壁も天井も。

気づいたら僕らの頭上には開けた空があった。

「着いたぞ」

と魔王が言う。

「ええッ!? ウソ!? もう!?」

一瞬も経ってないじゃないですか!?

「もしやこれが魔族の使う転移魔法というヤツか!?」

なんかもの知りそうな人が言った。

「決められた場所へ瞬時に移動できる魔法。……だが、これだけ多くの人数を一度に運べるとは……!?」

そういえば集まっていた十人以上が丸ごとこっちにいるものな。

……。

…………やっぱり魔王って凄い。

「ここが、お前たちが留学する聖者の農場だ」

と魔王が言った。

「へー、ここが聖者の農場……!?」

聞き覚えのある名に僕は『へぇ』ってなった。

……。

「……えッ!? 聖者の農場!? ここが!?」

今!

旧人間国でまことしやかな噂に上っているアレ!?

世界のどこかにあるとかないとか言われている幻想郷。

そこを支配する聖者は神をも超える能力を持っていて、その気になれば世界を支配できるというのに、その気がないから世に出てこないという。

人族の一部には、聖者の力を借りれば魔族を一掃して人間国を復活させることができると息巻く者もいる。

そういう者たちは血眼になって聖者の農場を探すが、誰もまだ見つけたことがない。

その聖者の農場に、今!

足を踏み入れました!?