軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26 男人魚たち

人魚プラティ。

俺の開拓生活の、初めてにして唯一の同居人。

海で釣りをしてたら、釣れた。

以後、何故かはわからないが俺のことを旦那様と称し、押しかけ女房的な感じで我が家へと転がり込んできた。

うら若く、しかも美人の女性と二人暮らし。

彼女との生活は孤独を癒す上に、彼女が使う人魚オリジナルの薬学魔法は大きな助けだ。

彼女の作る魔法薬のおかげで、畑の作物はぐんぐん育ち、成長に一年かかるような野菜も一月そこらで収穫できる。

さらに早く育つ作物ならば一週間そこらだ。

スパイス、調味料の調合など知識のない俺に代わってやってくれるし、ダンジョンを見つけて先生やヴィールと知り合いになれたのも彼女がいてくれたおかげだ。

さらに美人で可愛い。

一緒に生活して、会話を交わすだけで心が潤う。

もはやプラティは、色んな意味で俺の開拓生活になくてはならない存在となった。

今回は、そんな彼女を巡る騒動のお話だ。

* * *

海辺で釣りをしていたら、また人魚と出会った。

プラティとは別の人魚だ。

今回は釣り上げたのではなく向こうから姿を現した。

もしかしてプラティの知り合いなのかな? と思い、フレンドリィに手を振ってみせると……。

「死ね」

と返してきた。

いきなり大勢の人魚が海面から浮上。

「一斉投擲! 串刺しにせよ!!」

俺へ向けて銛を投げつけてきた。

当たれば体を貫通して大怪我。それが数十本も一度に飛んできたから、まあ全部当たれば死ぬ。

なので聖剣を引き抜き、大きく振る。その振り抜きで生まれた風圧により飛んでくる銛すべてを吹き飛ばした。

「うぎゃあああああーーーーッ!?」

「ぐえええええーーーーッッ!?」

その勢いで海面にも凄まじい波が巻き起こり、海上の人魚たちは漏れなく押し流されてしまう。

ううむ、ちょっとやりすぎたかな?

ここまで海面を揺らしてしまうと魚も逃げてしまったろうし、今日の釣りはお仕舞か。

「で、何のつもりだ?」

やっと荒波から立ち直って海面から出てくる人魚衆へ呼びかける。

人魚とは言うが、今回現れた団体さんは皆男の人魚だった。

男人魚もいるのね。

種族なんだから当然か。

「俺の知っている人魚は、もっと聡明で理知的だ。それともアンタらのような強盗紛いの人殺しが人魚のスタンダードなのか?」

「黙れ! 強盗は貴様の方であろう!!」

と叫び返したのは、男人魚集団でも、一段身なりのいいヤツ。

顔つきの凛々しさといい、いかにも人魚貴公子といった風で、あの集団のリーダー格なのは確かだ。

さっき他の男人魚たちに指示を与えていたのもコイツだった。

「陸人よ! お前が女の人魚をかどわかしたことは、既に報告でわかっている! 今すぐこの場で選べ! 大人しく彼女を返すか、ここで死ぬか!」

「女の人魚?」

……凄い心当たりがある。

「やっぱり皆様プラティのお知り合い?」

「妹の名を……!? やはり捜索隊の報告通りだったか! 許さんぞ陸人! よくも妹を拉致したな!!」

「拉致!?」

しかも妹!?

この男人魚、プラティを妹と言いましたか!?

「怯むな攻撃続行だ!! 銛! 放てぇーーーッッ!!」

貴公子人魚の号令を受けて、周囲の男人魚たちが再び銛を投げ放つ。

よく見たら、男人魚たちは全員鎧っぽいもので武装しているじゃないか。

つまり兵士人魚!?

「うわわわわ……ッ!?」

何だかもう聖剣で吹き飛ばすわけにもいかず、防御に徹するしかない俺。

そこへ救いの女神が現れた。

『何をしているッッ!?』

天空から降り注ぐ声。

見上げると、ドラゴンの巨体が大きく翼を広げ、空を覆っていた。

「ぎゃあああーッ!? ドラゴンッ!?」

「逃げろ! 食われる殺される!?」

「海へ潜れ! できるだけ深く!!」

「間に合うかよ! ブレス一発吹かれたら、この海域一帯熱湯に変わっちまう!!」

「オレたちまとめて茹で人魚だーッッ!?」

ドラゴンを一目見た兵士人魚たちの恐慌ぶりは凄まじいものだった。

鍛錬の程度はともかく、戦闘職であることは間違いない兵士をここまで混乱させるとは。

ドラゴンってやっぱり、この世界では恐ろしい生き物なんだな。

まあ俺は怖くないけど。

むしろ可愛い。

『ニンゲン、無事か?』

ドラゴンことヴィールは海岸の岩場に着地しつつ言った。

「ああ、キミのおかげでケガ一つないよ。よく来てくれた」

『当然だ……! 貴様が消えたら、美味い飯を食えらくなるからな……!』

取り澄ましているが、何処か褒められて嬉しそうだった。

「ウキウキしてるんじゃないわよバカ竜」

『うぬぅッ!?』

「アンタはアタシを送りに来て偶然この場に遭遇したんでしょう? 危機を察して駆けつけたみたいな演出やめなさい!!」

別の誰かの声。

よく見るとドラゴン形態ヴィールの頭の上に、プラティが乗っているではないか。

「プラティ!?」

「姫様!?」「姫様!」「おひぃさま!?」「王女殿下!」「プリンセス!?」

兵士人魚たちもプラティの姿に気づいて、一様に声を上げるが……。

その呼び方が……!?

「お姫様……?」

プラティはドラゴン形態ヴィールの頭の上から肩、前足と通じて、滑り台を滑るようにして降りてきた。

「まさか……、アタシがダンジョンへ鳥モンスターを探している間にこんなことが起きるなんて……!」

やっぱりこの団体さんは、プラティの関係者さんなんですかね?

「プラティ!!」

兵士人魚を率いている、貴公子然としたリーダー人魚が叫ぶ。

「お久しぶりですお兄様。こんなところまで一体何の御用ですか?」

お兄様!?

さっきも彼が「妹」云々言っていたから、もしやと思ったら。

「紹介するわ旦那様。この人はアタシの兄。名はアロワナ」

やはりお兄さんでしたか!

「人魚国の現王ナーガスの長子で、つまり第一王位継承者よ」

しかも王子様であらせられましたか!

……ん?

じゃあ、その妹のプラティは?

やっぱり!?