軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

247 それぞれの冬の過ごし方(一)

冬が過ぎて春が来た。

が、本格的に春の到来を謳歌する前に、その前の冬についてもう少しスポットを当てておこうと思う。

我が農場の住人たちがどのようにして冬を満喫していたか。

それぞれに注目して振り返っていきたい。

* * *

まずは大地の精霊から。

本来、土の中に溶け込み、自然の運行を援ける無形の霊的存在であるが、我が農場では実体化して家事手伝いなどしてくれる。

「ふゆですー!」

「ばんぶつの成長がとまるときですー!!」

「われわれも大人しくねむるですー!!」

そんな大地の精霊にとって、季節の移り変わりは大きく影響する。

特にすべての生物が活動をやめる冬は、彼女たちにとっても活動に適さぬ季節らしい。

大人しく春が来るまで土に還るそうだ。

つまり冬眠。

「ごしゅじんさま、しばしの別れですー!」

「はるになったらまた会おうですー!」

「あけない冬はないのですー!」

口々に挨拶して、土を掘り進んでの土中に戻っていった。

こんな時、大地の精霊も小さい女の子のような外見をしているが、人外の存在なのだなあと実感する。

ここで改めて大地の精霊のおさらいをしておこう。

小さい女の子のような外見をしている。

いっぱいいる。

好きな食べ物はバターで、バターの入ったお菓子に目がないだけでなく、バター単体でも余裕でイケる。

神の力で実体化できるようになり、我が家で家事手伝いをしてくれている。

主な業務は掃除。

俺の住む屋敷などを整理整頓して、害虫の一匹すら入りこまない。

でも彼女らが眠る冬の間は、俺たちが自分で掃除しないとな。

まあ冬は畑仕事ができずに手が空くから問題ないか。

冬の間は、大地のエネルギーが沈静化するということで、彼女らも土中に戻り眠りにつく。

次に会えるのは春だ。

冬とは『 殖(ふ) ゆ』とも言い、じっと眠りについて生命力を蓄えるための季節であるとも。

やがてやってくる春に、あらゆる生命が花咲かせるために。

精霊たちも、春にはきっと華々しい姿を俺たちに見せてくれることだろう。

そう思う俺は俺なりに冬を過ごしていくことにした。

* * *

そして春。

追憶なので時間は一気に飛ぶ。

雪解けし、空気の突き刺す感覚が緩まり、暖かさが戻る。

そうなると大地の精霊が目覚める条件が整った。

「春が来たですぅ」

「目覚めの時ですぅ」

「覚醒ですぅ」

次々と土から這い出してくる大地の精霊たち。

ただ、彼女らは初冬の眠りに入る前とは決定的に違う点があった。

「……殖えてる」

俺は呟いた。

「殖えてるうううううーーーッ!?」

そう、殖えているのだ。

彼女たちの様々な部分が。

かつて少女というか、幼女とも言っていい外見だった大地の精霊たちは、成長していた。

身長も殖ゆ。

肉づきも殖ゆ。

おっぱいも殖ゆ。

お尻の丸みも殖ゆ。

かつての彼女らなど見る影もないお色気お姉さんに成長していた!

「これが冬眠の効果……!?」

じっと眠りについて、生命力を蓄積し続けた結果、幼女がお色気ムンムンお姉さんに変わってしまった!?

「皆の衆、寝覚めの恒例をいくですぅ」

「それをやらないと他に何も始まらないですぅ」

「行くですぅ、……せーの」

「「「「「デトックス!!」」」」」

なんだーッ!?

お色気大地の精霊が光に包まれ……!?

一瞬目を眩まされたあと、だんだん視覚が戻ってくると、俺の目に映る大地の精霊たちは……。

「元に戻ってるううううーーーーッ!?」

いずれも愛らしい幼女の姿だった。

「ふゆのあいだは、エネルギーが付きすぎてふとるですー!」

「だから余計な分を、ほーしゅつして、ちょーせーするですー!」

「だいえっとです! きゃすと・おふです!! よぶんなものは思い出と一緒に、あしたへの入り口においていくですー!!」

と幼女精霊口々に言う。

こうしてお色気ムンムンお姉さん姿の大地の精霊は、冬が開けたほんの一時だけ見れるレア風物詩であることが判明したのだった。

* * *

そして時はまた一回巻き戻って、冬の寒さ真っ盛りの頃の出来事である。

人魚国の第二王女エンゼルとその仲間たちにとっては、初めて見る雪景色だった。

「ひえー……!?」

「地面が真っ白になってますよ、姫様……!?」

エンゼルを始め、ディスカス、ベールテール、ヘッケリィ、バトラクス。

の五人。

正統五魔女聖なるものを名乗っていた彼女らも、今ではすっかり農場の生活になれている。

もうドラゴン形態のヴィールや、ノーライフキングの先生と遭遇しても滅多に驚かなくなった。

しかしこの雪景色には流石に驚いたらしい。

「凄い凄い! これが噂に聞く雪ってやつなのね!?」

「ちべたいちべたい! 姫様! これ触ると冷たいですよ!?」

「さらに空から降ってくるのを、口でキャッチ! 冷たい!」

子どものようにはしゃぎまくっていた。

まあ、彼女らの年齢はまだまだ子どもの範疇だけど……。

「ふっ、初めての雪に興奮しまくっているわね小娘ども!」

そこに現れたのはプラティ(妊娠発覚前)。

我が妻にして、人魚チームの総元締めというべき地位に就く女だ。

「たかが雪程度で大騒ぎなんて、人魚淑女にほど遠いわね!」

そういうプラティだって、去年の初雪の時は上向いて大口開けまくりだったような……。

「そんなアナタたちに、雪を優雅に楽しむマストな方法を教えてあげるわ! アナタたちの先達、一人前の人魚淑女としてね!」

「な、なんですって!?」

プラティとエンゼル。

俄かに再び姉妹対決ムードが巻き起こる。

「一体、何を教えてくれるというのお姉ちゃん? 敵であるアタシに塩水を送るようなマネを……!?」

「アタシの敵だなんて、もっと実力をつけてから名乗りなさい……!」

相変わらず妹に厳しいなあプラティは。

「アナタたちに、雪を使った遊びを教えてあげるわ。今みたいに雪が厚く降り積もった状況でしかできない、限定的な遊戯」

「限定的な遊戯!?」

「雪を手の平に乗る程度持ち、押し固めて球状にする。それを対戦相手に向かって投げつける」

雪合戦じゃないか。

去年の冬に俺が教えた。

ヒトから教えてもらったことを早速ヒトに教えるなんてプラティも子どもっぽいことをしてるなあ……。

「その競技の名は……!」

名は?

「雪殺戮よ!!」

違う。

殺戮違う。

傍で見守っていた俺はさすがに見過ごせずにプラティに声掛けした。

「違うでしょうプラティ? 雪合戦でしょう殺戮じゃなくて?」

なんでデンジャラス度が格段に上がったネーミングになっとるんだ?

「旦那様……。合戦とは戦いのことでしょう? 戦いとはレベルが同じ者たちの間でしか起こらないのよ?」

「はあ……?」

「圧倒的にレベル差のある者と戦いは起こらない。起こるとしたら一方的な殺戮のみよ。強い者が、弱い者を蹂躙する。ね?」

プラティの妹へ向けられる視線がまんま、弱者を見下すそれだった。

それにエンゼルも気づいて覿面にキレる。

「きしゃーッ! お姉ちゃんがアタシを見下すなんて許せない! いいわよやってやるわよ雪殺戮! もちろん殺戮するのはアタシの方だけどね!!」

「いいわよ、姉より優れた妹はいないということを改めてその身に刻み付けてあげるわ……!」

妹エンゼル側は、他の少女人魚も加わって五対一でプラティを囲むが、やっぱり一方的な殺戮になってエンゼルチームは蹂躙された。

これで終わるとエンゼルたちが可哀相なので、エルロンやゴブ吉を助っ人に加えて実力を伯仲させて、皆で雪合戦を楽しんだ。