軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244 挑戦者たち

こうして始まりました。

公開制競技型アトラクション、風雲オークボ城・春の陣。

第一関門『イライラ平均台』に踏み入る最初の挑戦者は……!

「魔王さん!?」

見間違えようもない、畏怖発する巨体に魔族特有の褐色の肌。

魔王ゼダンさんではないか!?

魔族の頂点、魔国の支配者。そして魔国が人間国を平定した今、地上全土の支配者でもある魔王さん!?

「聖者殿、お静かに! ……今日はお忍びで来ているのだ」

ああ、やっぱり?

でもどうやってこの催しの存在を?

「ウチの妻たちが、そちらでの噂を伝えてきてな。我も最近政務が続いていたゆえ、体を動かしたいと思っていたところなのだ」

なるほど。

人間国滅ぼして戦争がなくなりましたからね事実上。

「内政に専念できるようになってからの方が意外と忙しくて暇がなくて……! 今日のオフを捻出するにも相当な無理を……!」

支配者の憂鬱がここにあった。

「そういうことなら魔王さん。このオークボ城のアトラクションで日頃の運動不足を解消してください!」

「うむ! 観客席には妻と子たちもいるのだ! 必ず最終地点まで登り詰め、父親の威厳を示してみせるのだ!」

魔王さん、新米パパとしてもやる気に燃えていらっしゃる。

そうですよねえ! 近々パパになる予定の俺もその気持ちはわかります!

第一関門ぐらい容易くクリアして、パパの強さを見せつけてあげてください!

「いざ行かん! ゴティアよ! マリネよ! 父の雄姿を目に焼き付けるのだああああッ!!」

そして平均台に挑む魔王様。

さすがにバランス感覚は抜群で、片足が乗る程度の幅しかない平均台をスルスル進んでいく。

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ……! なるほどこれは難しい。しかしこれしきで立ち止まるようでは魔王は務まらぬ……!」

あっ、魔王さん。

あまり下ばかり見ていると。

ガツン。

「うがあああああああ……!?」

魔王ゼダンさん。

妨害用のカタパルトクッション弾をモロに食らって墜落。

堀の底へと落ちていった。

「…………」

魔王まさかの第一関門突破ならず。

過酷なイベントだなあ。

しかし、催しはなおも終わらない。

参加者は、魔王さんが脱落してなお千人単位で残っているのだから。

「ぬおおおおおおおッ!! 次はワシじゃあああああ!!」

なんかやたらと元気のいいオッサンが平均台に挑む。

肌の色からして人族らしいけど、あの人は!?

「あれはセボンテルト殿!?」

俺の隣で領主のダルキッシュさんが叫ぶ。

「誰か知ってるんですか、あのオッサンを!?」

「隣の領の領主だ」

へえぇッ!?

「若造ダルキッシュの領ばかり注目が集まって妬ましい! しかし我が領も、隣の大人気にあやかって我が領もおおおおお!!」

ダッシュと変わらない速度で平均台を渡り切って第一関門クリア。

クッション投石器で狙い撃つ暇も与えなかった。

「イベントに参加している冒険者の方よ! 終了後には我が領名物ダンジョン『鳴滝洞窟』にも是非お立ち寄りを!!」

機会に目敏くご当地アピール!?

みずから体を張って自領の名所を宣伝していく領主!?

「人間国の領主は勤勉だなあ……」

そうして、挑戦者はどんどん平均台へ挑み。落ちたり落ちたり渡り切ったり落ちたり渡り切ったり落ちたり渡り切りそうで落ちたりしていく。

「では我々も行くか」

「そうですね」

俺とダルキッシュさんも屈伸運動で体をほぐし出す。

何故これまで俺たちが、参加者たちの動向をつぶさに実況できたのか不思議に思われるかもしれない。

その理由はもちろんある。

俺たち自身も参加者だからだ!

だから同じ参加者の動向はすぐ目の前のことなのだ!

俺だって祭りを前にしたら見るアホウではなく踊るアホウに回りたい!

今日は俺も挑戦者だ!

頂点に君臨するオークボの下までたどり着くぞ!!

「私も領主として存在感を示すため、今回も天守閣まで行きついてみせる! そして益々我が領をアピールするのだ!!」

と領主ダルキッシュさん。

俺は競技の考案者の一人だし、ダルキッシュさんは競技経験者。

二人とも『イライラ平均台』の要点を抑えてすんなり渡り切った。

* * *

これにて挑戦者第一陣三百名のうち百七十名が第一関門を突破。

挑戦者総勢三千名はとても一度に捌き切れないので、いくつかにグループ分けして順番に挑戦するシステムとなっている。

俺たち第一陣が第一関門を済ませたので、第二陣がスタート開始しているはずだ。

「前回と比較して大分数が残りましたなあ」

「難易度調整がうまく働いていますね。このまま関門ごとに、なだらかに人を減らしていきたい」

半分、その半分、そのまた半分、みたいなペースで最終的にゼロ人にしたい。

オークボのところまでたどり着けるのは数人程度でいい。

その数人の中に俺のようなサクラが交じっていればなおいい。

「フッフッフ……、ライバルがたくさん潰れてくれた方が得だぜ?」

うわあッ!?

ビックリした!?

第二関門へと望む間際に、すぐ隣に立っている参加者がいきなり語りだすのでビビる。

「あ、アナタは……!?」

「おや、聞かれちまったかい? 気にしないでくれ、オレも参加者の一人、冒険者のシャベっていうんだ」

冒険者?

これがあの有名な職業、冒険者……!?

実物は初めて見た。

「冒険者はダンジョンに潜って秘宝を探し当てたり、希少モンスターを倒したりと一攫千金狙いの職業だからな。このイベントとは親和性が高いのだろう」

領主ダルキッシュさんが解説してくれる。

たしかに、天守閣まで行って貴重な賞品を貰えるこのイベントは一攫千金性が高い。

「たしかに、参加者の中で一番割合の多いのが人族の冒険者だ。……でもな、オレは他の、そんじょそこらの冒険者とは一味違うぜ」

何やら意味ありげな自信だな?

「オレは気づいているのさ、この催しの裏に隠れているものを……!」

聞かれてもないのに語り出した?

「オレは以前からずっと探してるんだ。……聖者の農場ってヤツを」

「はいぃッ!?」

「今、冒険者の間でもっともホットな標的。この世のあらゆる宝を蔵しているという聖者の農場を探し当てようと皆躍起になっている……!」

滅茶苦茶心当たりがあるんですけど……。

とは口が裂けても言えない。

「オレと同じ目的の冒険者は『催し? そんなの参加してる暇があるかバカ! それよりも聖者の農場探しだ』と言って参加しなかったヤツも多くいる。でもアイツらこそバカだぜ……!」

「な、何故?」

「このイベントにこそ、聖者の農場に至るヒントが隠されているからだ!」

冒険者らしい若者が、自信満々に言った。

「その理由は、このイベントに出ている商品の数々だ! あれほど豪華な賞品を、しかもたくさん! どこから持ってきた!? この世のあらゆる秘法が収まっているという聖者の農場からという確率が一番高くないか!?」

彼の言っていることはすべて推測の域を出ていないのだが……。

すんごく鋭い。

「だからオレは、最終地点にたどり着いてこう言うのさ。『賞品はいらない、代わりに聖者の農場に連れていけ』ってな! それがオレの参加目的! オレは必ずこのイベントを通して聖者の農場にたどり着く!!」

野心家な青年だった。

でも何やら面倒くさそうだったので、俺はハンドサインで第二関門担当のエルロンたちに指令し、集中攻撃させてこの若者を脱落させた。