軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238 風雲オークボ城・激闘編

最初に言っておくべきだったが、この私、旧人間国の地方領主ダルキッシュが率いる領地守備軍は、出動時には二百五十人の兵数で編成された。

最初に私が求めた数より五十人も多く付けてくれたのだ。

我が執事の有能さと、みずからの土地を守らんとする兵士たちの情熱が伝わってくる。

……で。

その二百五十人が第一関門通過後に……。

八十人。

「三分の一以下になってる……!?」

「だから言ったんですよ!! 平均台が十に増えたからって急いで渡りすぎなんです! 雪崩れ込むようだったじゃないですか!?」

同様になんとか第一関門を乗り越えた魔族監察官ヴァーリーナがなじるように言ってくる。

「おかげでバランスを崩した兵士たちが何人も巻き添えになって落ちていくわ! 前が遅くてまごついているところをクッション弾当てられるわ散々じゃないですか!」

「いやでも向こうもズルくないか? 後半になって急に投石機を増やしてきてさ……!」

新たに三機も現れた時は、さすがに血の気が引いたぞ。

向こう岸に着いたというのにあのゴブリンもいつの間にかいなくなっていて……。

「とにかく残った者で進むしかない。脱落した兵士たちを救い出すためにも……!」

「そうですね、でももっと冷静に考えながら進む方がいいと思います」

「ああ?」

平均台に翻弄され続けたせいか、お互い心が疲弊していた。

こうしてやっとの思いで堀を渡り、本格的に城内に入ったわけで我々はさらに緊張が上がる。

細心の注意をもって、敵の懐奥深くへと進む。

ご丁寧に看板で順路が示してあった。

もっとも城壁やら自然の地形で順路以外にはどこにも進めなさそうだったが。

そして順路通りに進むと……。

「城門か……!?」

普通城門は、緊急時に敵の侵入をシャットアウトするためにあるものだ。

当然敵軍である我らに対しては固く閉ざされるべきものだったが……。

ギギギギギギギギギギ……。

「簡単に開いた……!?」

そして開いた城門の向こうには……。

美しい女性がいた。

濃い肌褐色の。

「よくぞやってきた! 私は第二関門の担当者! エルフのエルロン!」

エルフ!?

魔族と同じ褐色の肌だけど、違うの?

ああ、耳が長い。

「ゴブ吉の第一関門を突破した程度でいい気になるなよ? 私の仕切る第二関門は、さらにハードな出来となっているのだからな」

「もっと密林系な罠も張りたかったんですけどねー?」

「ガチすぎて却下されちゃいましたよね」

なんか他にもエルフが数人ひょこひょこ出てくる……?

「まあいい、第二関門はこれ! 名付けて『遺跡の罠的なアレ』!」

「なんだその名前は!?」

エルフたちが横にどくことによって視界が開け、城門の向こうの全容がはっきり開けて確認できるようになった。

坂だ!

城門の向こうは、傾斜がきつくて長い坂道になっていた!

城の土台となっている丘の山道を利用したものだろう。

しかし何故だか嫌な予感がする凄く。

「では試練スタート」

エルフが魔法で何かしらを作動させると、坂の頂上から何かが現れた。

その何かとは……。

「岩?」

大きな岩。

成人男性である私が見上げなければならないぐらい大きな岩だ。

しかも球状。

球状なので、坂道に置くと当然のように転がってくる。

ゴロゴロ、ゴロゴロと……!

坂の下にいる私たち目掛けて……!

「ぎゃあああああああッッ!?」

危ないぶつかる!? と思ったが、坂道をそのように調整してあるのか、岩は我々のいる城門前で向きを変え、横に逸れていずこかへと通り過ぎていった……。

しかも岩の玉は一つではなく、次々途切れなくゴロゴロと……!?

「岩玉は、転移魔法で循環するようにできているから、永遠に転がり続けるぞー」

「この岩を避けつつ、坂の上のゴール地点にたどり着けば第二関門クリアだ! 健闘を祈る!」

そう言ってエルフたちは転移魔法でどこぞかに去っていった。

転移魔法濫用しすぎだろう!!

「なるほど……、趣旨はわかった……!」

「坂道の両サイドは、壁や崖で挟まれ逃げられなくしてますね。岩玉も途中でコースアウトしないようになっている……!」

ヴァーリーナが真面目そうに分析するが、逡巡など必要ない。

この城のノリは第一関門で掴んだ!

もはや不覚を取る我ら領主軍ではなく、今度は一人の脱落者もなしにクリアしてくれよう!!

「行け我が兵士たち! あの青い天に輝く一朶の白い雲だけを見詰めて坂を上っていくのだ!!」

「「「「おおおおおーーーーーッ!!」」」」

打てば響く我が忠勇なる兵士たち!

「あ、ダメです! また勢いに任せて集団で飛び込んだら……!」

ヴァーリーナが止めようとしたが、その時には二十人からの兵士が岩玉飛び交う坂へと駆け出して行った。

そして……。

二十人全員玉砕した。

「アホですか! この細長い坂道に集団で流れ込んだら、互いの体が邪魔になって身動きできず岩に轢かれまくるに決まっているでしょう!!」

忠勇なる兵士二十人が一気に消えた……!

「岩玉に触れた生命体は、反応して強制転移魔法がかかるようになってるからケガしてないよー」

「第一関門脱落者と同様別室で拘束中です」

エルフたちが脱落兵士の安否を解説してくれる。

「なんで第一関門と同じ間違いを繰り返すんですか!? アホですか!? アホなんですか!? 人族は種族的な特徴としてアホなんですか!?」

この魔族女……! 言いたい放題……!?

しかし言っていることは正しいので反論もできない……!

「くっ! 兵士たちよ一人ずつ順番に坂を駆け上がれ! 前の者を見ながら、岩玉の軌道を慎重に予測していくのだ!!」

一人ずつ、一人ずつ坂を登っていく。

それでも容赦なく転がってくる岩玉は、対処を間違えた兵士を押し潰し、強制転移魔法でどこぞへと送ってく。

「ヴァーリーナ殿、私の後ろを付いてくるのだ……!」

「気遣い無用です。この程度の山道、魔王軍で鍛えた足腰なら……!」

私とヴァーリーナも、最後尾となって坂を上っていく。

幸いにも、慎重に切り替えてから五十人以上の兵士が無事坂を踏破できた。

あとは私と彼女だけ……。

「きゃあッ!?」

「どうした!?」

振り向くと、後方から続いていたヴァーリーナが坂道に足を取られて転んでいた!?

バカな、そんなに大きなおっぱいをしているから安定感が悪いんだ! とは口に出して言えない!

「大丈夫か!? 私の肩に掴まれ!」

「何故助けに来るんです! アナタも巻き込まれて脱落しますよ!?」

実際、岩玉はゴロゴロと私たちの目の前まで迫っていた。

よけなければ必ず当たる。

しかしヴァーリーナは転んですぐには動けない。

今すぐにできること。

私はヴァーリーナの体を抱えて……。

跳躍!

「跳んだあああぁぁーーーーーーーーーーッッ!?」

坂の上で見守る兵士たちの歓声。

見事華麗に岩玉を跳躍回避すると、私はそのままヴァーリーナを抱きかかえて残りを一気に駆け登る。

ゴール!

「これにて第二関門は終了。五十二名が通過か」

エルフどもがちょっぴり残念そうな声で、姿を消した。

「領主様! 凄いです領主様!」

「人一人抱えてあんなにジャンプするなんて!」

「さすがは我らが領主様! 強靭ですね!」

兵士たちが口々に誉めそやしてくるのも悪い気分じゃなかった。

おっと……。

抱えていたヴァーリーナを下ろさねば。

「すまないな、緊急のことでやむなく……!」

「いいえ、戦場であれば咄嗟に肌が触れ合うことぐらいいくらでもありますので……!」

なんだか頬が赤いように見えるのは気のせいだろうか?

魔族は肌が濃くてわかりづらい。

「あ……、ありがとうございました……!」

こうして素直なところを見せると可愛いんだがな。

……ん?

魔族の女相手に何を考えているんだ私は!?

* * *

気を取り直してさらに進む。

第三関門には人魚がいた。

「この『アビスの魔女』ゾス・サイラが受け持つ第三関門へよく参った」

……。

人魚が、空中を泳いでいる。

「驚いたであろう? 空気の性質を水に近いものに変える新作魔法薬じゃ。わらわのオリジナルじゃぞ? これでわざわざ陸人化せずとも陸地で自由に活動できる……」

と下半身魚のまま空中をすいすい泳ぐ。

「オークボが主催のこの遊戯。わらわが活躍せずしてなんとする。わらわが受け持つ関門では、こやつらと戯れてもらうぞ?」

人魚は、取り出したガラス管から何かしら色付きの液体をこぼす。液体は地面に落ち、泡立ち、その泡はどんどん肥大化して、最終的にはおどろおどろしい名状しがたい生き物へと変わった!?

「ヴァーリーナ殿! 何だあれは!? あれもモンスターなのか!?」

「ひいいいいッ!? 知りません!? さすがに私も人魚の魔法まで詳しくない!?」

その不可解な生き物の発生の仕方に、我ら攻め手側は総勢身震いした。

「この戯れのために調整した遊戯用ディープ・ワンじゃ。棘も牙も持っておらぬゆえケガなどせぬ安心せい。この試練の内容は、コイツらから逃げつつ、出口まで到達することじゃ」

人魚の背後、遥か向こうにゴールっぽい境界線がある。

あそこまで行けばいいのだな。

「ふはははは! ダルキッシュ様直属の領地守備兵に、腕っぷしで挑もうなど笑止千万!」

当然兵士の一人がいきり立った。

今までの細々しい競技で鬱憤が溜まっていたのか?

「これまでの細々しい競技で鬱憤が溜まっていたのだ! この不気味なだけの小人片っ端から叩き潰してくれる!」

兵士が剣を振るうと、人魚がけしかけてきた不気味な小人は簡単に引き裂かれ、二つ三つと身を分けていく。

おお!

割と簡単に倒せる!?

これなら、この関門を乗り越えていくのは割と簡単そう!

「おお、言い忘れていたわ」

人魚が、気だるそうに言う。

「その遊戯用ディープ・ワン。棘も牙もない代わりに面白い機能をつけたのじゃ」

「え?」

兵士の剣によって斬り裂かれた怪物が、すぐさま再生して元通りになった。

正確には元通りではなかった。

たとえば二つに引き裂かれたものが、引き裂かれた斬片それぞれ再生して、最終的に二体に分裂して元通りになった。

「斬れば斬るほど、叩けば叩くほど数が増えるのじゃ。無闇に攻撃を加えるとフィールド中ディープ・ワンだらけになって身動きが取れなくなるぞよ」

もっと早く言いなさいよ。

既に剣を振るっていた兵士が取り囲まれて、手も足も出なくなっている!?

「ぎゃああああッッ!? 取り囲むな!? 押すな!? え? 何処へ動かそうとしてるの!?」

兵士はなすすべなく怪物たちに押していかれ、フィールドの隅に。

そこには、人一人容易に放り込めそうな穴が掘ってあった。

その穴の中へ……。

兵士は、何体かの怪物諸共になって突き落とされていった。

「ひゃああああーーーーーーーーーーッ!?」

「もちろん穴に落ちたら失格じゃ。精々無駄な抵抗をしてわらわとオークボを楽しませるがよいぞ」