軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

221 再会の天使たち

「マスター、ご相談が」

ある日、天使ホルコスフォンから呼び止められた。

ん? 相談とはなんぞや?

「小粒納豆はもう完成したのか? じゃあ次は変わり種として枝豆納豆なんか……」

「いえ、そちらの件ではないのです。……枝豆納豆とやらについては、あとで詳しく伺いたいです」

納豆関連じゃない?

ホルコスフォンにしては珍しい。本当にどんな用件だ?

「……枝豆納豆とやらについては、あとで詳しく伺いたいですが!!」

「わかったから。本題に入ろう」

本題に。

「マスターは覚えておいででしょうか? 以前修復した我が同型機のことを」

ああ、あれね。

ホルコスフォンは天使と呼ばれる種族。

そして天使とは何千年も前に、天空の神々が地上侵略のために送り込んだ生体兵器。

地上崩壊寸前のところを神々が総出で止めて、目の前のホルコスフォンを除くすべての天使は破壊された。

が、最近になって二体目の天使が復活した。

出土したパーツを組み立てて復元を試みたところ、見事復元してしまったのだ。

復元したのは俺。

そうして過去破壊された天使の手足を元に復活? 誕生? ……した天使は、さすがにそのままじゃヤバいっつーことで、タイミングよく現れた天界所属の神ヘルメスによって回収されていった。

『完全に調整する』

という言葉を残して。

それから数ヶ月が経った。

「だが同型機はいまだに帰ってきません」

たしかに言われてみれば遅い気がする。

調整っていうのに、どれだけ時間がかかるのかは知らないが神々の仕事だもの。

そんなに時間かかるとは思えないけどなあ……。

向こうから音沙汰がないならば。

こっちから問い合わせるしかないか。

* * *

「んなわけで先生、よろしくお願いいたします」

『承知した』

神を召喚するならやはりこの人。

ノーライフキングの先生に来てもらった。

先生にとって神召喚は半分趣味でもあるので喜んで引き受けてくれる。

『ん』

先生の召喚呪文のテキトーさが留まるところを知らない。

それで本当に神ヘルメスが召喚された。

『ほほほーい』

いや毎度のことながらビックリするほど簡単に出てくるよな。

本当にそれでいいのか神様?

「……こないだ上級精霊が召喚される場面に立ちあったんですが……」

「うわビックリしたぁ!?」

いつの間にかバティが背後に現れていた。

音も立てず忍び寄ってくるのでビビる。

「神より遥か格下の上級精霊の召喚でも、選りすぐりの召喚術師数百人が血を吐きながら行うんですよ……」

バティはそれ以上、特に詳しく言わず去っていった。

…………。

やっぱり先生は凄いな!!

『やっほーい、聖者たちじゃないか! なんだい連絡してくれたら召喚なんてされなくても、こっちから訪ねるのにー?』

そしてヘルメス神は、軽薄さ、ノリのよさが隠れもしない。

『今日は何御馳走してくれるの!? 知ってるよ、あのバッカスまで農場に住みついたんでしょう!? あの酒バカのテクと聖者くんの知識が交じったお酒をハデスおじさんたちより先に飲めるなんてしてやったり! あ、つまみ枝豆てヤツがいいな!!』

「ではこれを食らいなさい」

『ギャーッ!?』

ホルコスフォン、遠慮会釈なしのマナカノン全力砲撃。

ヘルメス神は紙一重で回避するものの、流れ弾となったマナカノンが天を駆け登り、たゆたう雲を一つ吹き飛ばした。

『何するの!? 何するのこの天使!! 聖者くんの下で少しは大人しくなったかと思いきや、狂暴性が増してるじゃないか!!』

「そんなことはありません。私は日々マスターの下で理知的な振る舞いを学習しています」

『ウソつけぇ! だったらなんだ今の暴力的行為は!?』

「暴力ではありません。ツッコミです」

ツッコミは文化。

まあ、それはどうでもいいや。

「今のツッコミは、アナタの数ヶ月かけたボケに対するツッコミです。ボケでないなら怠慢です」

『はえ?』

「アナタに託した我が同型機の調整はどうなりました? それを聞くためにマスターと先生にお願いしてアナタを召喚したのです」

先生は、もう用事が済んだのでポチと戯れている。

ホルコスフォンとヘルメス神のサシの様相だ。

「アナタは我が同型機を、『調整する』という名目で預かり、すぐ帰還させると約束しておきながら、ここ数ヶ月何の音沙汰もありません。約束破りですか?」

神に対して、その言い方もどうかと……。

ほぼ事実なので仕方ないけれども。

「さすが天の神々はやることがあくどい。納豆食べますか? 納豆を食べればアナタのどす黒い心もサラサラに洗い流されることでしょう」

『……調整ならとっくに終わって送り返したけども?』

「は?」

『ソンゴクフォンのことでしょう? 調整自体は預かって数日で完成したし……。わー、待って待って待って! 撃つな撃つな撃つな!?』

神へ銃口を向けるホルコスフォンの目が間違いなくデストロイモードの赤い輝きを帯びていた。

『え? 聞いてないの!? 私はてっきりパッファさんから伝えられているものとばかり……!』

「え?」

『え!?』

「『えッ!?」』

ええ?

なんでそこでパッファが出てくる?

『だって今ソンゴクフォンは、人魚の王子アロワナくんの旅に同行してるんだもん! 旅メンバーの一人であるパッファが、この農場と行き来してるんだろう!?』

なんと。

たしかに我が妻プラティの実兄にして人魚国の王子アロワナは、いずれ人魚王となる自分を鍛えるべく地上を武者修行中。

その同行者は何人かいるが、その中の一人パッファは、ここ農場の仕事もこなすために超ハイレベル転移魔法でアロワナ王子の下と、ここ農場を日々行き来している。

「♪今日もディスカスとベールテールに仕事を押し付けて~♪ アタイは王子とラブラブツアー♪」

そんなパッファが今俺たちの傍らを通りかかった。

最低な歌詞の鼻歌を口ずさみながら。

「よし! 今日もアロワナ王子の下へ行くぞ! 転移魔法薬で……!」

「ちょっと待ちなさい」

パッファの肩を、ホルコスフォンがガッチリと掴んだ。

「アナタには聞きたいことがあります。洗いざらい吐くかマナカノンで吹き飛ばされるか、好きな方を選びなさい」

この脅しもツッコミである。

文化の範囲内である。

* * *

程なくパッファが転移魔法薬を連続使用して、いつぞやの継ぎ接ぎ天使を連れて来てくれた。

「こんちゃーす! ソンゴクフォンっていいまーっす! よろしくお願いしゃーっす!!」

以前あった時よりずいぶん身なりが綺麗になっていて、最初会った継ぎ接ぎ部分も綺麗になっていた。

妙にギャルっぽい口調は相変わらずだが……。

でもある程度礼儀は弁えるようになっているが……。

「ここまで躾けるの苦労したよ」

この礼儀作法パッファが仕込んだの!?

人魚の中でも礼儀作法からもっとも遠いところにいそうな彼女が!?

「これが旅の成果ってヤツだよ。ソンゴクちゃんだけじゃねえ、アロワナ王子もハッカイちゃんも、旅の困難を乗り越えてメキメキ力を上げてるからね!」

『可愛い子には旅をさせよ』が効果覿面というわけですか。

『私も、それを期待してアロワナくんたちにソンゴクフォンを託したわけだよ。まあキミらに報告が行かなかったのは遺憾だけど、パッファさんが伝えてくれたものとばかり思ってたからさー!』

「マナカノン一斉斉射」「あーしもー」

『ぎゃあああああああッッ!?』

ホルコスフォンが全砲門開いて、何故かソンゴクフォンまで便乗して乱れ撃ちしたのもツッコミです。

文化の範囲内です。

「ソンゴクフォン……」

ヘルメス神がアフロヘアーになったところで改めて向き合う二天使。

「紆余曲折はありましたが、アナタがこの世界に復活して私は本当に嬉しい。アナタがいてくれたことで、私はこの世界でたった一人の天使ではなくなりました」

ヒシッと、ソンゴクフォンを抱きしめるホルコスフォン。

それはまるで姉妹の感動的再会と銘打つべき情景だった。

「んーー……!」

しかし。

やがて抱きしめられるソンゴクフォンは、かまいすぎる飼い主から逃れんとする猫のようにホルコスフォンを引っぺがし、パタパタと走り去っていった。

「あっ、何処へ!?」

ソンゴクフォンの走る先は、パッファのところ。

そして一直線にパッファに抱きつき、その豊かな胸に顔を埋めた。

「ん~、やっぱり姐さんに抱きつく方が柔らかくて気持ちいい~」

どうやらソンゴクフォンは、同族のホルコスフォンよりパッファの方に懐いているらしかった。

「姐さんのお胸の方がやーらかくてデカくて気持ちいい~」

ブチッ。

とホルコスフォンの何かがキレる音がした。

「古来より、理解し合うために一番必要なのは拳を交えることだと聞いたことがあります。今がその時のようですね……!」

「あー? へパッ神から最新の改造を施されたあーしに、旧式のアンタが敵うと思ってんのー? チョー思い上がりなんすけどー?」

やめろおおおおおおッッ!?

世界を滅ぼす戦力をもった二人がウチで争うなあああ!

たしかにヘルメス神の言う通り、天使には情操教育の期間が必要なのかもしれない。

ウチのホルコスフォンも含めて。

* * *

ほどなくして……。

「んじゃあ、そろそろ旦那様のところに戻るかね。行くよソンゴクちゃん」

「ヘイ姐さん」

パッファがソンゴクフォンを伴い去ろうとする。

行先は当然アロワナ王子の下だろうが……。え? 待って?

今、旦那様って言ったのどういうこと?

「そんなに急いで帰らなくても……。せっかくだからもっとゆっくりしてもいいじゃない?」

「そうしたいのはアタイも山々なんだが、旦那様のところも今ごたついててね。急いで戻らないと。フォローしてやらないといけないんだ」

「え? どういうこと?」

アロワナ王子って、もしや旅先で厄介事に巻き込まれてたりするの?

「ドラゴンと戦ってる」

「一刻も早く戻ってあげて!!」

いや、それで事足りる話じゃねえ!

ウチからも応援を!

オークボ! ゴブ吉! そしてこんな時こそヴィールの出番だろうが、あの竜どこにいったああああッッ!?