軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189 ベレナ問答

卓を囲む会議列席者たち。

まずは議長及び司会進行を務めさせていただきます、俺。

その両側にプラティとヴィール。

オーク代表オークボ。ゴブリン代表ゴブ吉。

エルフ陣営からエルロン、サテュロス族よりパヌ。

大地の精霊。

ポチ。

天使ホルコスフォン。

そして特別ゲストに魔王さんとノーライフキングの先生。

ハデス神。

ポセイドス神。

さらに本議題であるベレナの元上司であらせられるアスタレスさん(臨月)&無二の親友バティ。

以上のメンバーで、会議を始めたいと思います。

題して。

『第一回ベレナの存在について語り合おう会議』!!

「物々しすぎやしませんか!?」

当のベレナが困惑と共に叫んだ。

「錚々たる面子じゃないですか!? 私ごときのために、この農場の主要な人たちどころか魔王様まで! 恐れ多すぎて死にそうですよ!?」

「何を言う」

俺は、ごく当たり前のことを言った。

「ベレナは我が農場の仲間だ! 仲間であるキミが、自身の存在意義で悩んでいるなら、一緒に考えて答えを出すのが俺たちのすべきことだ!!」

そうだろう皆!?

苦しみは半分に、喜びは二倍に。それが仲間同士で助け合うことの素晴らしさ!

今ここで皆で一丸となって、ベレナの苦しみを乗り越えようじゃないか!!

「……つまりベレナって。転移魔法使いなのを見込まれて農場に残ったのに、その点であまり有用性を認められず、そうこうしているうちに転移ポイントが増設されるわ、皆が転移魔法使えるようになるわで、どんどん希少価値が薄れて……」

ついに先日泣き出してしまった、と。

「実際のところ転移魔法って、そんなに希少価値が高いんですか?」

ここは魔族を治める魔王さんに聞いてみよう。

「然り、だな。習得が難しいだけでなく有用性も他の魔法と比べて段違いに高いので、その使用者は国で厳しく管理されているほどだ」

「魔国では、転移魔法の習得にはまず届け出をして、出自や思想などを調査して許可を得なければならないほどです。もし魔国が把握していない転移魔法使いが確認されたら、それだけで懸賞金を出して捕縛する理由になります」

マジか……!?

そんな大層な魔法を、無秩序に全員に教えていたとは。

……問題にならないかな?

「その点に関しては今さらですねえ」

「すべてが例外だらけだからな。この農場は」

何やら達観されていた。

本題に戻ろう。

「つまり、世間一般では充分な希少価値であるベレナの転移魔法も、ここではただの一般教養! 鳥なき里の蝙蝠がワイバーンの群れに交じったようなものです!」

バティが元気。

キミの友だちが泣くような発言はやめなされ。

「そこでベレナに必要なのは、新しい個性だと思います!!」

「淀みない流れで提案した!?」

「転移魔法に代わる新しい技能で、農場に貢献するのです! さすれば重要度注目度も自然に上がり、給料は上がり、素敵な出会いも起こる!」

たしかにバティの提案にも一理あるが……。

では、ベレナにどんな個性を追加すればいいのだ?

「魔法薬飲んで人魚になってみる? 陸人から人魚に変わる薬はまだ未完成で、人魚になれずに泡になるリスクあるけど?」

「ドラゴンの血浴びてみるか? 精神が砕け散る代わりに無敵になれるぞ?」

プラティとヴィールがそれぞれ提案。

しかしどちらもリスクがあまりに高すぎる。

あとプラティの勧める人魚化薬は、元々人魚の彼女らがいるんだからあまり意味もない。

他の会議参加者からも案を募ってみた。

ベレナに追加すべき新しい個性は!?

「ダンジョンで無双する」

「強力なモンスターをワンパンで倒す」

「森で暮らす」

「ミルクを出してみる」

「土中に埋もれますー!」

「ワンワンッ!!」

「マナカノンを一門お貸ししましょうか?」

『不死化しますかの?』

『余が祝福与えようか?』

『明太子食おうぜ?』

などの案が挙がりましたが。

「どうベレナ? この中でいいと思えたものはある?」

「どれも無理ですううううううッッ!!」

だよね。

俺もそう思った。

「……私の思うところを述べていいだろうか?」

そう言って手を挙げたのはアスタレスさん。

現魔王妃にして元四天王。

何よりかつてのベレナの上司だった御方だ。

ベレナをよく知るという点では、この中で誰より期待が持てる。

「私の四天王現役時代、ベレナは実に有能な副官だった。副官の仕事は、上司を陰から支えること。その点ベレナほど配慮の行き届いた管理者はいなかった」

他部隊との連絡を緊密にし。

敵と戦うに先んじて、その情報を収集し分析もする。

軍隊行動にありがちな物資の管理、計画の調整など。

地味だが重要で、絶対おざなりにできない職務をベレナは完璧にこなしてきたという。

「彼女に比べれば、バティなどはいささか仕事にムラがあってな。その分は庶民生活仕込みの軽妙さでカバーしていたが……」

すぐ脇でバティが口笛を吹いていた。ベタな。

「ベレナのそうした才能は、この農場でも充分に役立つものと確信できる。そうした部分でベレナに、この農場へ貢献させてやればいいと思うのだが?」

それもそうだ。

実際これまででも魔族商人シャクスさんとの交渉や、レタスレートちゃんを迎える準備などで大活躍しているベレナじゃないか。

地味に。

あまり知られていないが。

何故そこにもっと早く気づかなかったのか!

我が農場において。けっこう貴重なこの事務能力、交渉能力。

これをもってベレナの新たな個性とするには充分じゃないか!!

「どうだろうベレナ! これで我が農場に貢献してくれるかな!?」

「やです」

あれッ!?

これもう解決したと思ったのに!? どうしてここで大どんでん返し!?

いいんですかベレナさん!?

待ちに待ったアナタだけの個性ですのに!?

「せっかく人智を越えた聖者様の農場でお世話になっているのに、そんな普通の役立ち方じゃ嫌です! 私はもっと派手に、皆さんの記憶に残るような活躍をしたいのです!!」

ええ~!?

「でも私は、そんな超絶スーパーな力がない……! それが悲しい! 私にもっと力があれば、自分の個性にできるのに!!」

「たとえば?」

「たとえば、こうです!」

* * *

「グッフッフッフ……、聖者の農場は、この邪気魔将軍エリンソワによって滅び去るのだ」

「待て! 邪気魔将軍エリンソワ!!」

「貴様は何者だ!」

「私は、聖者様の忠実な従者ベレナ! 農場の平和は私が守る!」

「フッ、勘違いするなベレナ……!」

「何ぃッ!?」

「私はお前を助けに来たのではない! お前は私が倒す! 私以外に敗れるなど決して許さない!」

「邪気魔将軍エリンソワ!!」

「ゆえに今日だけはお前の助太刀をしてやる! さあ、共に畑を耕すのだ!!」

* * *

「……みたいな感じに目立ちたいです!」

「…………」

ここにいる全員がたっぷりと脱力した。

解散。

解散です。

遠くから訪問なさってくれた方々は御足労頂いて本当に申し訳ない。

せめて今日はこのあと会食にして、食べて飲んで楽しんで帰ってください。

それからベレナ。

キミは今日から我が農場の事務交渉係に就任ね。

大事な仕事なので、しっかり気張って助けてほしい。

こうしてベレナの個性問題に終止符が打たれた。