軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

176 ハッカイ歎異

私はウォリアーオークのハッカイ。

このたび、アロワナ王子と共に諸国漫遊の旅に出ることを許されたオークです。

元来、聖者様の農場にて聖者様の手伝いをするのが役目の私たちですが、どうやら私自身、他のオークたちと変わったところがあるようです。

外の世界をこの目で見て、見聞を広めたいという願いが常にあったのです。

農場に出入りされるアロワナ王子が旅に出るという話を聞き「これはチャンスだ!」とお供になることを訴え出たところ、聖者様もリーダーオークボも快諾なさってくれました。

ハッカイという新しい名まで下さり、仲間たちの暖かさに感無量です!

* * *

そうして旅立った私ハッカイとアロワナ王子ですが、スタートするなり新たな同行者が加わりました。

同じ農場の仲間で、女人魚のパッファさんです。

「パッファ、何故お前が!?」

唐突に転移魔法で現れたパッファさんに、アロワナ王子も困惑。

どうやら見送りの際に贈ったペンダントに仕掛けがあるそうで、これさえアロワナ王子が身に着けていたら、いつでも転移魔法で飛んでこられるとのこと。

帰りは農場にある転移ポイントへ飛んでいけばいい。

ということでパッファさんは、アロワナ王子と旅しつつ農場の仕事を務めるという行き来生活を強行するつもりらしいです。

アロワナ王子は戸惑っていらしたが……。

……これもう観念するしかないですよ。

恋する乙女の執念は物凄いんですって。

* * *

そんなこんなで三人の道行きが確定した私たち。

最初にたどり着いたのは魔族の国、魔国の首都、魔都。

宿敵人間国を滅ぼし、今や地上の中心と言っていい位置にあります。

ここを最初の滞在先と決めたのは、単純に農場から転移魔法で向かえる、もっとも安直な場所だったから、とのことです。

魔都は魔王ゼダン様の本拠地。

アロワナ王子と同じくらい農場に出入りする魔王様は、王子とも肝胆相照らす仲。

魔王様も、アロワナ王子を手厚く迎えてくれました。

王子の希望で、歓迎は内密のものとされましたが、それでも日夜魔国の重鎮が代わる代わる王子との会談を行い、いきなり旅に政治的な趣が出ます。

その間も、パッファさんはアロワナ王子の隣に座り、時には上品な冗談で場を和ませたり。

私ハッカイもボディガードの名目で会談の場にいましたが、話を終えて退席する魔族さんたちの会話がちらりと耳に入って……。

「……いやぁ、人魚国の王子は、また見目麗しい奥様をお持ちですなあ」

「美人なだけでなく聡明でもあらせられる。ウチの魔王妃アスタレス様にも引けを取るまい」

「あの夫婦が国政に就いた暁には、我ら魔族もうかうかしておられませんぞ?」

…………。

確実に外堀が埋められている。

あと魔都では観光にも行きました。

二人並んで街並みを歩くアロワナ王子とパッファさんの姿はデート以外の何ものでもない。

仲睦まじく店を覗き、時に気に入ったものを買ったりしてましたが。

……。

えっ?

ちょっと待ってください? 今アナタたちが買ったその服、バティさん作の農場ブランド品じゃないですか?

高い金払ったみたいですけど、それ農場に帰ったらロハで配布されてるヤツですよ!?

* * *

そうして魔都に数日滞在したのち、いよいよ旅立つことになりました。

別れに際して魔王様が、アロワナ王子に贈り物。

「この交通手形には、アナタをこの魔王の『重大な友人』であると記してある。いまや旧人間国も我が支配下にあるので、これで通れない場所は地上にはあるまい」

「重ね重ね、お気遣い痛み入る。地上にて勉強させていただく所存です」

「帰ってきた時には、また相撲を取りましょうぞ!」

こうして海の王子と魔王は、固い抱擁を経て別れました。

……これ絶対平和だよね?

まあとにかく、ここから本格的に、無限に広がる世界へ我々は歩み出すのです。

地上の様々な自然や人々と触れ合い、経験を血肉に変えて成長するのだ!

……でも王子?

今さらなんですが、なんで地上を旅するんです?

王子は人魚なんだから修行の旅に出るにしても海の方が自然なんじゃ?

「……人魚にとって、陸は危険で困難な場所と認識されている。だからこそ陸を踏破することによって、さらなる実力と成長を得ることができるのだ!」

たしかに人魚にとって地上って異界ですよね。

でもそこまで想像を絶した困難が降ってくることも、そうないかと思いますが。

……ひゅるるるるるるるるるるる。

ずどーん。

と思ったら降ってきた!?

いかにも困難っぽいものが!?

『やあ、私は天の神ヘルメス。知恵と知識を司っている』

天から落ちてきた優男風の人は、急転直下というありえない方向から登場なさったではありませんか!?

しかし「それが何か?」とばかりに、何事もなかったかのように語り出します。

当然、私もアロワナ王子もパッファさんもドン引きして絶句。

『早速だがポセイドスの眷族くん! キミに頼みがある! キミの旅にこのアホ娘も同行させて、いろいろ勉強させてやってくれまいか!?』

と差し出されたのが、何だか痩せた上半身のわりに下半身が異様にムッチリしている女の子。

『この子は四千年ぶりに再起動したばかりでね。精神的にまだ不安定なんだ。キミらの旅に同行して、様々な経験を積むことで精神的な成長を期待しようというわけだよ! ワッハッハ!!』

勢いで押し切ろうという意図が明確に察せられた。

『言うだろう? 可愛い子には旅をさせよと! 何、別に厄介事を押し付けたいわけじゃないぞ! 彼女は色んな役に立つ! 連れて行って損することはないはずだ!』

「……どんなことができるんです?」

『世界を滅ぼせる』

「連れて帰って!!」

農場にいる先生やヴィール様やホルコスフォンちゃん並にやべー子じゃないですか。

でも結局連れていくことになりました。

将来立派な王となるための修行の旅なのだから、困難は多い方がいいというアロワナ王子の一言によって。

『では、よろしくお願いします。この子を加えた旅は、きっと実りあるものとなるだろう』

「よろしゃーっす」

……。

彼女の口振りに、私を含めた全員がほんの少しイラッと来ました。

「……で、肝心のことなんですが」

アロワナ王子が、もう腹を括った様子。

「彼女の名前は、何と言うのでしょう? まずそれを聞かなければ、旅の仲間にもしようがありません」

『そうだなあ、組み立て以前のネイコスフォン、ボノスフォン、ヒュスミネフォン、ロゴスフォン、リモスフォンの人格が融合してるってことは、それから一つを選択するのも筋が通らないし……』

何言ってるのこの神?

『……ここは新たに名をつけ直すのがベターだろう。そうだね、聖者殿の意図を汲んで……』

ソンゴクフォン。

と彼女は名付けられた。

私たちの旅路に四人目の仲間が加わりました。