軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1492 ジュニアの冒険:第四神界

ただいま海の神界で絶賛おもてなされ中の、僕ジュニア。

しかし海神ポセイドスさんの用意したOMOTENASHIはことごとく外し連敗更新。

『うごぉおおおおおおおおおッッ!!』

失敗の無念さに転げ回るポセイドス神だった。

見かねたアンフィトルテ女神が、イルカショーを開催して僕の目を楽しませてくれた。

おお、イルカ渾身の大ジャンプ!?

複数のイルカが抜群のコンビネーションで!?

イルカヒーローショー!?

イルカ新喜劇!?

想像以上に幅が広いイルカたちの芸達者に僕も興奮。

こんな洗練されたイルカショー、神界に来なければ見れなかったと来た甲斐を感じるのだった。

『このイルカショー総指揮はアタシの息子、トリトンちゃんです! さすがアタシとダーリンの嫡子はソツがないわね!』

『イルカショーいるか!?』

若干勢いで押し切ろうとしている節が気になるが、とりあえず海の神界まで来た有意義さは感じれたと思う。

僕ら若者は効率重視だからな。

っていうことでもう訪問の意義はできたと思うんですが、どうでしょうポセイドス神!?

『ほぉおおおおおおおおおッ! うふぃぃいいいいいいいいいいッッ!』

まだ転がっていた。

いい加減立ち直ってもらえませんか海を統べる大神よ。

『だってだってだって! 全然私の予定通りじゃないんだもん! 私の目論見通りなら今頃、聖者の息子はポセイ丼をガツガツ百杯お代わりして我が加護を受け取りホックホクだったはずなのに!』

そんなことになったら僕この神界から帰れなくなってたんですがね。

ヨモツヘグイって知ってる?

『知らん!!』

そんな力いっぱい返さなくとも。

『いいじゃないダーリン。ジュニアちゃんも、アタシたちの息子トリトンちゃんのイルカショーに大満足したんだから』

『ううむ、そうか……』

愛妻アンフィトルテ女神のとりなしで何とか正気を取り戻す。

そうです僕は大満足です。

というわけでそろそろ人間界へと帰していただけませんかね。

帰還を急ぐ?

そりゃそうだろう神の世界なんて人間がそう長くいていい場所ではないんだから。

さらにさっさと人間界に戻ってまっとうな海鮮丼を腹いっぱいに食べたい!

サーモンとイクラたっぷりにワサビを溶いただし醤油をかけて!!

『うわー、あからさまに帰りたがっているぅ。……まあよかろう、ここでのもてなしは種が尽きた。これ以上留まるのもよしなし』

わぁあああい、帰れる!

戦争が終わって故郷へ帰れるぐらいの感動!

『ではケートスよ、聖者の息子を背に乗せてくれ。これより移動する』

『ははッ』

良識的な怪獣ケートスさん。

彼もさっきまで僕と並んでイルカショーを満喫していたのに。

『もう帰っちゃうの? 寂しくなるわねえ』

『またいつでも遊びに来てくださいね』

アンフィトルテ女神とメドゥーサ女神が、母神らしい暖かな包容力で別れを惜しんでくれた。

……おばあちゃん?

『よぉし、聖者の息子を背に乗せたな? それでは出発ボンボヤージュ!!』

ポセイドス神と一緒に大海原を駆けだすケートスさん。

そのケートスさんの背に乗る僕。

ずさささささささーっと波を切って走る小気味いい感覚。

……あの、ポセイドス神まで一緒に出港する必要ななかったのでは?

海の大神で忙しいことでしょうに?

『ん? いいぞ、そんな気にすることなくて。私もこの先に用があってな。ついでだ、ついで』

この先に用?

人間界に?

人の世界に神様の用事って怖いな。……まさか滅びの神罰?

『何を言っているのだ?』

そうですよね、いかに神様だからってそう気軽に神罰は下さないっすよね。

『今から向かう場所が地上だと、誰が言った?』

え?

違うのはそっち!?

海の神界でのおもてなしは終わったのだからてっきり人間界に帰れるものかと!?

『ふっふっふ甘いな聖者の息子よ。神界はそれほど浅くはない。海の神界オケアネスでのもてなしは尽きても、次のパートが残っているのだ』

まさかの次ステージ!?

七つの海をすべて巡るとかいいだすんですか!?

『いいやオケアネス編は終了した。なので汝を次なる神界に案内しようというのだ』

次なる神界?

でも待ってください。

僕はこの旅でまず天の神界オリュンポス山に登り、次に事故って冥界に落ち、挙句の果てにここ海の神界オケアネス。

思えば遠くへ来たもんだと独り言ちたくなるが、この世界の神々が天地海の三種類で大別されるはずならば……。

神界だって三つで打ち止めのはずなのでは。

『ところがどっこいヤーレンソーラン』

ポセイドス神がヒトを食った表情で言う。

『神界が三つしかない? それこそ人の子の思い込みからくる誤解よ。いいではないか神の世界が四つも五つも、何百もあったって』

嫌ですよ神の世界の数=災いの数と言っていいんだから。

災いなんて少ないに越したことないでしょう。

神=災いの認識が不敬?

それはアナタたちの日頃の行いが原因ですので悔い改めてください。

『そうこう言い合っているうちに着いたぞ。ここが四つ目の神界にして、神の世界の新領域!』

僕らの目の前には、大陸が広がっていた。

いつの間にやら天空から降り立つ形になっていた僕ら。

眼下に広がる新大陸を俯瞰で見渡す。

「この大陸が……次の神界!?」

『そう! これこそ新大陸アトランティスだぁああああああああああッッ!!』

と誇らしげに言い放つポセイドス神。

何故アナタがそんなに得意満面なんですか。

『着地!』

どべッ!?

そして重力に惹かれるまま新大陸?……の大地へと降り立った僕ら。

僕は着地失敗して豪快に転んだけれど。

……ここが四つ目の神界。

どこまでも広がる平野、抜けるような青空、頬を撫でる爽やかな風。

なんとも居心地がいいが、それゆえに別段の特別さは感じない。

普通に地上のどこぞかのように感じる。

これが本当に第四の新界なのだろうか。

『まあゆくゆくは人の世界になる予定らしいから、人の汝が居心地いいのも道理よ』

どういうことですポセイドス神?

『さて、ここで待っていれば迎えが来る予定なんだが……』

そう言いつつ直立して待つポセイドス神。

僕も倣って隣で待つが……。

……。

どれだけ待とうと変化は訪れず。

「……はい、ここに○書いて僕の勝ちー」

『ふぎゃあああああッ!? これで我が十七連敗!?』

あまりにも暇を持て余した僕らは地面に描いて○×ゲームで遊んでいた。

ポセイドス神よ、いい加減そろそろ先行譲るのやめたらどうですか。

○×ゲームはね、どう足掻いても真ん中をとった方が有利になるゲームなんですよ。

『いいや、神たるモノが人間相手にハンデもやらずして何が神よ! 次の勝負も汝が先に書いていいからな!』

そうすか。

では次も容赦なく真ん中に○と……。

『ひぎゃああああああッッ!? コイツマジで容赦がねええええッ!』

農場戦法ナンバー2、敵の息の根が止まるまで容赦はするな、ですよ。

そうこうしていると地平の方から足音が響いてきた。

うおッ、なんだ!?

バッファローの行軍か!? と思えるほど派手な足音であったが意外にも迫ってきたのはたった一人だった。

いや一神?

『すまぬ遅れた! ちょっと業務が立て込んで!』

『もー、パパ上遅いー』

キショい抗議の仕方をするポセイドス神。

……ん?

今『パパ』と。

『改めて紹介しよう。この御方こそ我が父神にしてティターン神族の長、時と農耕を司る神クロノスだ。そしてこの新たな神界の支配者でもある』

『おお、お前か? ポセイドスが是非に紹介したいと言っている相手は? あまりにゴリ押ししてくるので何者かと楽しみにしておったぞ!』

と嬉しげに言うティターン神族の長クロノス。

僕は、まったく未知の領域に足を踏み入れてしまったのかもしれない。