軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1490 ジュニアの冒険:神話の海鮮丼

『たまには子どもの元気な姿も確認したいじゃない。あと、男性経験のない乙女だけじゃなくて他の人も乗せないとダメよ』

『それオレじゃねーし!! あんな変態と一緒にするなし!!』

『自分以外のオスは皆死ね! とか言わねーし!』とぼやきながらペガサスは去っていった。

本当に流星のように一瞬で通り過ぎていったな。

あれがペガサス、空駆ける天馬。

ウチのサカモトと競争させてみたかったな……。

『さて、我が子らの紹介が済んだところで、本格的なおもてなしを始めようではないか!!』

ポセイドス神が勇んで立ち上がった。

浮気ネタで散々いびり倒されていたが、一旦置くことで元気を取り戻したようだ。

『せっかく聖者の息子に来てもらったのだから、海の神界オケアノスを心行くまで楽しんでもらわなければ海神族の沽券に関わる! ここまでは所詮顔見せに過ぎぬ、メンバー紹介が済んでこれからが本番よ!』

俄かに悪役みたいなことを言い出すポセイドス神。

真実は心からのおもてなし実行宣言だけれど。

『そこでまずはヤツを呼び出す!』

また誰か呼ぶんですか?

もうペガサスさんみたいに大したようもないのにご足労させるのは迷惑ですよ?

『心配ない、ヤツには重大な使命があるのだから! 来たれ、海を蹂躙せし最強の獣よ!!』

なんかポセイドス神の呼びかけで、海が大いに荒れだした。

どこまでも広がる神界の海。波一つない穏やかな海原が一点、荒れ狂う大時化の大海流へと変わる。

「ななななななななな、何事だ!?」

その海面に立っている僕としては大わらわなんですが。

やがて荒れ狂う海を突き破るかのように巨大な何かが浮上してきた。

あの大海獣ケートスさんよりなお大きい。

常識を超えて、僕の想像を遥かに超えて巨大雄大なその生物は……いや生物なのか?

蛇のように長い体躯を持った、鱗ある巨大海竜だった。

何だコレ!?

オケアノスに来てからもっとも大きい何かだぞ!?

あれだけ『ドデカい!?』と思っていたケートスさんよりも数十倍デカい!?

この大海竜は……!?

『ハハハハハハハハハハ驚いたか聖者の息子よ! さすればこやつを呼んだ甲斐があるというもの! この大海竜リヴァイアサンをな!!』

大海竜リヴァイアサン!?

なんかまた物凄いものが出てきた!?

リヴァイアサンとやらが海上に顔を出し、こちらを見下ろすような体勢になる。

それだけで空が覆いつくされ海一面が日陰となり、まるで地面が空から迫ってくるかのような感覚に陥る。

『どもー、リヴァイアサンです』

シャベッタ!?

またしても大怪物の類の方がシャベッタ!?

もう人型じゃないからと言って無礼な振る舞いは絶対できない神界では。

『いやーリヴァイアサン、遠いところまで来てもらって悪いな!』

『いえいえポセイドス様、呼ばれれば来るのが私の仕事ですのでね。たとえ次元の向こうであろうと馳せ参じますよ』

巨大海竜は、意外にも気さくで話しやすい。

『おやおやお初にお目にかかります。私はリヴァイアサン。土地によって最強の魔獣、大悪魔、幻獣王、神々の供物などと色々呼ばれておりますが、気軽にリヴァイアさんと呼んで下されたら幸いです』

リヴァイアさん!?

『だって「リヴァイアサンさん」なんて呼びにくいでしょう? 最初は呼び捨てでもいいと言っていたんですが、やはりフォーマルな場だとどうしても差し障りがありますから……ねえ?』

ねえ? と言われましても。

それでこのように巨大な大海竜(表現重複するほどに巨大)が出てきて、これから何が起こるんですか?

まさか終末戦争でも……?

『いやいや、リヴァイアサンには食材を届けて貰いにきたのだ』

ポセイドス神が言う。

食材!?

『リヴァイアサンは、地元では神に捧げられる供物として扱われていて、終末のあとに絞められて、人々の食料として提供される……んだっけ?』

『そうです!……こう見えて哀れな存在なんですよ私は』

さめざめと泣く素振りのリヴァイアサン……いやリヴァイアさん?

『そんな逸話を聞いて、この海神ポセイドスは思った。終末を生き残った選ばれし民に提供されるぐらいなら、リヴァイアサン美味いんじゃね? と!』

海の神がまた変なこと考え出した。

『おもてなしに必要不可欠なもの、それはご馳走! 美味しく、口の中が蕩けて皆が幸せになる美味しい食事こそ、歓迎の意を示すのにもってこい! それは農場の聖者が示し、我々に教えてくれたことだ! その聖者の息子をもてなすのに、聖者の流儀に則ることこそジャストミート!』

言わんとしていることはわかりますが……。

それでこのリヴァイアさん……神の供物的な高級食材。

『そんなわけでお届けします。リヴァイアサンの大トロです』

『うむ、たしかに受け取った! これでご馳走作りも捗るわ!!』

食材当人(?)から提供されるのも妙な気がしますけれども?

『なぁに、私ぐらい巨大になると、ニンゲンさんが満腹になる程度の量を切り取ったところでかすり傷にもなりませんから、お気になさらず!!』

そうでしょうねえ!

この巨大海竜から見たら人間などノミほどのスケール。その人間の腹が膨れる量としたら細胞一個分にも満ちるかどうか。

『これでメイン食材が届いたが、まだまだ完全には足りない。この海神ポセイドスが思い描くご馳走のイメージには!!』

一体何を調理するつもりなんだポセイドス神?

すると周囲の海面が、さらに“ずもももも……”とせり上がって……。

現れたのは、リヴァイアさんほどではないがやはり巨大な蟹。

……僕は、その蟹を知っている!?

「デスマスくん!?」

『ジュニアくんお久しぶりですます! 大きくなったですますなあ!』

デスマスくんは蟹の上級精霊。

農場に訪れたこともあって僕とも仲良しだ。

そんなデスマスくんが何故ここに!?

『そりゃあポセイドス様に呼ばれたからですます。ボクも海に棲む上級精霊である以上、直属の主がポセイドス様ですますからなあ』

言われてみればそうか。

何と言うか……大変そうですね……!

『デスマスくん!』

『リヴァイアさん! キミもいたんですますか!!』

リヴァイアさんとデスマスくんが互いに呼び合って再会を喜び合う。

……というか知り合いなんだ。

『デスマスくん!』

『リヴァイアさん!』

しかし呼び合い方になんとも癖がある……というか?

『そしてポセイどん!』『ポセイどん! ですます!!』

『いや待て、なんで急に鹿児島弁になる?』

そして巻き込まれるポセイドス神。

『仮にもこっちは大海原を司る海神なんだから敬称で呼べよ。敬いを込めて』

『敬意と親しみを込めて!』『ポセイどん!』

『だからやめろ!』

しかしデスマスくんまで呼んで何をする気なんですポセイドス神?

『もちろん、デスマスくんにも食材になってもらう』

『食べられるんですます!?』

『かつて聖者の農場でご馳走になった時、中でも飛び切り美味しい抜群の料理があった。それは色とりどりの海の食材を生のまま、ごはんに載せて食べるという豪快ながらも宝石箱のように色鮮やかな料理の名は……』

海鮮丼!

僕も食べたことあるよ、農場の食卓に上がる定番メニューで、夕飯が海鮮丼だとわかった日には兄弟で大盛り上がりであった。

父さん特製の海鮮丼はイカありマグロありサーモンありイクラありで、頬っぺたが落ちるほどに美味しいんだ。

神がリスペクトを受けたとしてもおかしくないほどに。

『だから私は思った! この神界に存在する最高級食材をふんだんに使用した神の海鮮丼を振る舞って、聖者の息子へのおもてなしにしようと!!』

『そういうことなら協力するですます! どうせボクの手足はちぎってもまた生えてくるですますー!』

そう言って自分の足をブチっといくデスマスくん。

豪快。

『リヴァイアサンの大トロに、巨蟹デスマスくんの脚、クラーケンのエンペラもあって他にもヴィシュヌの化身魚マツヤの切り身、カムイチェプの魚卵、ヴィーナスが入っていたホタテ貝!』

『色んな世界から食材を集めてるですますなあ』

『それらをご飯の上に凝縮し、混然一体となったこれこそ神の海鮮丼! これを特別に名付けて、ポセイ丼とする!!』

商品名が決まった。

『どうだ聖者の息子よ! これほどのご馳走を食せること、人の誉れと思うがいい!!』

ここまで心づくしのおもてなしをしてくださったことに感動する。

手間暇かけて、食材を集めて最高の逸品になるように仕上げてくれたんだ。

……でも、どっちにしろ神界の食べ物を口にしたらヨモツヘグイになるのでは?

『あ』

大変申し訳ありません、神の海鮮丼は食べられません!!

出来上がった神の海鮮丼は、アンフィトルテ女神とメドゥーサ女神が美味しく召し上がりました。