軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1473 閑話:聖者観戦3/4

オッス俺聖者。

息子の頑張りを見守るつもりで武泳大会を観戦中。

しかし幼い末子たちと一緒だと、それも大変だ。

「パパ~、おしっこ~」

「ママ~、ねむい~」

ハイハイ、トイレ行こうね~。

「えぇ、この大歓声の中寝れるの? いいわよママが抱っこしてあげるから存分にお眠り!!」

幼い子どもとは、親を振り回すのが使命である。

第五子、第六子なので俺たちもそろそろ慣れてきている。この程度で揺らぐ親ではない!

なので子どもらの突発行動もいなしつつ、武泳大会の成り行きも見守っていく。

大きな波乱は終盤……決勝とか準決勝に起こるかと思いきや、序盤から中盤にかけても目を見張るドラマは目白押しだった。

「……負けたわねモビィくん」

まあ、仕方ないよ。相手はホウボウさんとこの道場生なんでしょう。

地上を拠点とする人魚はまだまだ珍しいが、ホウボウさんはそんな一人で現在道場経営に心血を注いでいる。

かつては前人魚王ナーガスさんと鎬を削った強豪人魚で、世代的にも後進の指導に回っている人だ。

彼の道場から輩出された人材は、地上人化した際の陸上戦闘力にも優れ、人間国魔国、そして農場国との交流に活躍している。

何しろホウボウさんの格闘スタイルは、『地上人化して二本になった足の有効活用』だからな。

自然と地上で活躍する人魚が増えていくわけだ。

モビィくんを撃破した道場生も、そういう手合いだろう。

「ホウボウさんも、道場経営が当たって忙しいみたいね。かつては人魚王ナーガスにに歯向かった唯一の凶人魚と恐れられたのに……」

そうやって海と地上の橋渡しのような役割についたホウボウさんなので、農場国を運営する俺たちとも関りが深くなった。

初めて会った時はこんなに密接な関係になるとは思わなかったがな。

その弟子と思しき一人が、モビィくんを下したわけだ。

海中でいながらあえて魔法薬で地上人化し、『渦巻旋風脚』を放ってきた時はモビィくんも面食らったのであろう。

対応が遅れて相手からの攻撃をモロに食らってしまった。

そのまま崩れた体勢を持ち直せないまま、押し切られたというのが一連の流れだな。

「モビィもまだ子どもだから、ああいうトリッキーな攻めには動揺するんでしょうね。敗因は経験不足……」

まあ、それならモビィくんはこれからガンガン経験を積んでいけばいいだけだ。

彼には若さという、無限の可能性があるんだからな。

そして中盤のハイライトといったら、なんと言ってもノリトのマブ友イエローテイルくんと前人魚王ナーガスさんとの一戦だった。

あれはまさに激戦だった。

最初対戦カードが公開された時、百人中百二十人が『まあナーガス様の勝ちだな』と思った。

何しろ先代の人魚王。かつて十年連続優勝で史上初の殿堂入りを果たしたナーガスさんなのだから。

そんなレジェンド戦士と、無名の若者。どちらが勝つかなんて結果はわかり切っているし、それ以前に多くの人々は伝説の顕現を期待している。

実際、試合開始力後はナーガスさんが圧倒していた。

伝説の力をい遺憾なく発揮しルーキーを捻じ伏せる。『ちょっと大人げない』と思うぐらいの一方的な戦いだった。

しかし無名のルーキーもただ黙ってやられるだけではなかった。

逆転の契機は、ノリトからの救援だった。

「イエローテイル新しい槍だ!」

と特撮番組の宣伝ばりに新たな武器を投げ入れたのだ。

ルール的にいいのアレ?

ノリトと彼との間に結ばれた友情が、熱い輝きを放つ。

新たに握られた槍から大量の気泡が放たれ、それと共に凄まじい速度で海中を奔るノリトの友だち!

「あれ、槍自体に推進機関を取り付けてない?」

プラティも気づいたか。

普段人魚の皆さんが使っている槍よりもさらに大きく、むしろ騎槍というか、それよりもっと大きい。

それも内部に推進機関を搭載しているからなのか。

まるでランスと水中スクーターが合体したような装備だ。

アレをウチの次男が開発したというのか。

「どうだ! これが特許出願中のウェード特別装備、自動推進騎槍、名付けてヤリンバだ!!」

ネーミングについてはもう少し会議を重ねようか。

「しかもヤリンバはただ飛び回るだけじゃない! イエローテイル叫べ! フォームチェンジと!」

「ふぉ……フォームチェンジ!?」

ああッ、彼の掛け声と共に、みずからの推力で奔る騎槍が形を変えていく!?

あれはまるで変形だ!?

「そう、ヤリンバは推進時の速度上昇、使用者の保護、そして攻撃対象へのより狂暴な殺傷能力を持った形態へ変形する! それがヤリンバひき逃げモードだ!!」

だからネーミングもっとよく考えよう!?

いやしかし……変形したランスは使用者であるイエローテイルくんを包み込み、鉄壁の防護を誇りつつ流線型のフォルムで水の抵抗を最小限に抑える。

さながら超小型の潜水艇のように超スピードで走り回るその姿は……カッコいい?

「旦那様……もしかしてアレって……?」

どうしたプラティ?

あれとは?

「いつだったかノリトが工房にこもって何か作ってた時、旦那様がウザがらみしてたじゃない。その時『変形機能あるとカッコよくね』とかしつこく言ってノリトにウザがられていたけれど……」

失敬な、ウザがられてないよ!

どこにでもある、ごくありふれた父と子のスキンシップだよ!

……ハッ、でももし、あの時ノリトが作っていたのがヤリンバであったなら……。

あの最速推進モードは俺にアイデアが発端ということ!?

つまりは父子合作!

素晴らしい!

「まあ、あの朝番組みたいな発想はいかにも旦那様っぽいけど。ノリトもよく受け入れたわねー」

「それだけ、につまってたー」

ザンカちゃん!?

そんなことないよ、ノリトは父のアイデアに光るものを感じ取ったんだよ!

さあそうなればノリトの友だちよ、俺たち親子の想いが詰まった必殺武器で、見事勝利をもぎ取るのだぁああああ!!

「もっすぅッッ!!」

「ぐあぁあああああああああッッ!?」

あ、やっぱ無理だ。

さすがにそれだけで倒せるほどナーガスさんは甘くなかった。

だってナーガスさんだもん。

きっとナーガスさん以外の相手だったら、アレで勝てたのに。

「イエローテイルぅうううううッッ!!」

おお、ノリトを始め、多くの友だちが駆け寄る。

精一杯すべてを出し切った、誇れる友に。

「はあッ? 何あの保護シャボン、アタシ知らないわよ? ノリトめまた新発明しやがったわね、あとでレシピを強奪しないと……!」

強奪までする必要はないんじゃないですかねプラティさん。

母子なんですから、もっと平和的にですね。

そんなノリトは、傷ついた友だちを両手で手厚く抱きかかえる。

「すまんイエローテイル。オレの設計が甘かったばかりに……ジジイの筋肉を読み誤った……!」

「いいえ、オレの筋肉が足りなかったのです。そのせいでエヌ様の発明品に砂をつけてしまいました」

男泣きにむせび泣くウチの次男であった。

「ノリトはひねくれてる風装ってる割りに、すぐ熱くなるんだから。キャラブレしてるわねえ」

いやいやいやいや……。

ツンデレという意味では一貫してるんじゃないか。

今はひたすら反抗期だけれど熱い魂を持ったヤツだよ。だって俺の息子だもん。

「まあそれはいいとして……。アイツの開発したランスは出来がいいわね。改良すればさらに完成度は上がりそうだし、こんな大注目の場でお披露目もできたんだからインパクトも高い。これ農場国主導で量産化したらいい商売にならないかしら……?」

プラティ?

また商売人の顔つきになって……?

「なんとかして設計データをノリトから取り上げられないものかしらね? そろそろ農場国にも新しい産業が欲しいと思っていたところだし……!」

だからデータを取り上げようとするな。

まあ、ノリトの方もプラティの魔法薬レシピとかパクって研究の土台にしてるんだからどっちもどっちなんだけども。

なんで母子で仲よく協力し合って研究を進められないのか。

友情はあんなに熱いのに。

友だちに向ける純真な想いを少しでも親兄弟に向けてほしいものだった。

そしてここから先は……。

我が子ジュニアにとっての佳境へと突入していく。