軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1459 ジュニアの冒険:祭り真打ち

『老姫の乱』治まって、人魚国中心へと帰ってきた僕ジュニア。

そこで僕を待っていたのは、これまでともまったく段違いな熱狂だった!!

「フォォオオオオオオオオオッッ!!」

「フゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!」

「ワッショイワッショイワッショイワッショイッッ!!」

「ヘイヘイヘイヘイヘイヘイヘイヘイヘイッ!!」

「ハァ~~~ッッ!」

「ドッコイショー、ドッコイショ!!」

何事!?

僕の目前で奇祭が繰り広げられている!?

無数の男人魚たちが狂ったように踊り狂い、正気も消え去った海中には独特のテンションが燃え広がっている。

……いかんいかん。

アレをジッと見ていると僕まで正気を侵食される。

san値がピンチになりそうだ。

シーラおばあちゃん、これは一体!?

一緒に辺境から帰還してきた祖母に尋ねるしかない僕。

傍らを振り向いてみると……。

『ちわー、ヘルメス便でーす』

「集荷ご苦労様。こちらをオケアノスのポセイドス様宛でよろしくね」

『ありゃしゃーす』

「われもの扱いでお願いね。天地はどうでもいいから」

老姫が封印された壺を発送するところだった。

おばあちゃん!?

「あら、ごめんなさいね。そうそう、この目の前の怪奇現象についてね」

おばあちゃんまで怪奇現象の認識でいる!?

「だってそうとしか見えないでしょう? でもやってる当人たちはいたって真剣なのよ。それがお祭り騒ぎの神髄なのかもねえ」

お祭り騒ぎ……ですか?

「そう、これはお祭りなのよ。しかも男人魚たちにとって、人魚国全体にとってとても大事な、伝統ある祭り」

でも待ってください?

お祭り騒ぎであればつい先日、海下一魔女武闘祭が開催されたではないですか?

「あんなものはアタシの気紛れで突発的に行われたものでしかないわ!」

自分で『気まぐれ』って言った!?

「しかしこちらは違う! もはや数百年の歴史を持ち、その間に生み出された伝説は数知れず! 人魚族に生まれた男なら誰もが出場を夢見て、その戦史に名を残すことを渇望する! 男人魚の祭典、人魚族の歴史に欠かせぬセレモニー……」

それが……。

「武泳大会よ!!」

武泳大会!?

聞いたことがある。年に一度、人魚族の男たちが一堂に集って最強を決める大会。

男人魚の闘法は、銛状の槍を使って、海中を縦横無尽に泳ぎながらの突進や旋回でダメージを与える。

そうした戦い方に磨きをかけ、誰がもっとも強靭巧みであるかを年一のペースで決めるのだ。

僕も覚えがある。

幼少期は何回か観戦に訪れたことがあるはずだ。母に連れられて。

「そうねえ、あの頃のジュニアちゃんも可愛かったわぁ……」

しみじみ思い出に浸るシーラおばあちゃん。

しかし、そうかこれが……。

噂に聞く男人魚の祭典、武泳大会。

年に一回、そしてすでに数百回と繰り返されてきた大会は、たしかに多くのドラマと伝説と、そしてその主役となる名闘士たちを生み出してきた。

現代を生きる若き男人魚たちもみずから伝説にならんと、血のにじむ努力を続けてきたはずだ、この日に向けて。

……ああ、そうか。

ある時点からアロワナおじさんやナーガスおじいちゃん、男人魚人が気配を絶してまったく存在を感じなかったのは……。

この武泳大会へ向けて準備に集中していたからなのか!?

「男人魚たちよ……!」

噂をすればアロワナおじさん。

一番高いところで男人魚たちを統率する。

「勇猛なる男人魚たちよ……、今年もついにこの日がやってきた。お前たちの修練と忍耐が、水面に上がるこの日が……!」

ついさっきまで正気を疑う騒ぎようだった男人魚たちが今ではシンと静かに、むしろ軍隊のような規律さでもってアロワナおじさんの演説に聞き入っている。

あ、これもしかして開会の辞?

「この武泳大会の歴史は、人魚国そのものの歴史と切っても切り離せない。国難の時も戦時の際も、武泳大会は例外なく行われ、そのたびに活力を生み出し反攻のきっかけとなってきた」

マジかよ。

「今日のために鍛錬を怠らなかったすべての男人魚たちよ。今回もいつものように、己のすべてをここで絞り出そうではないか。人魚国に男人魚の武勇あり! この活力がある限り外憂も、内患も、人魚国を脅かすことなどできない! 人魚国に我らあり!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」「アロワナ陛下万歳!! アロワナ陛下万歳!! アロワナ陛下万歳!!」「今日は死んだっていい……!!」「地上最強の人魚が、今ここに決まる!」

多分出場者らしい男人魚たちの熱意が、さらにヒートアップする。

演説一つで、ここまで出場者のテンションを盛り上げるなんて。アロワナおじさんの人魚王としてのカリスマのなせる業だな。

「ホント……、アロワナちゃんも立派になったわねえ」

僕の隣でシーラおばあちゃんもホロリ。

やはり自分の長男だけあって思うところは大きいのだろう。

つい先日の老姫との対決も加味したら感慨もひとしおだ。

そしてアロワナおじさんのマイクパフォーマンスも続く。

「それでは、今年の主だった参加者を紹介していこう、まず一番手はやはり彼! 今年も当然出場だ! 連続出場記録断トツのトップ! その記録を今年も更新! 人魚国軍で武勇を鳴らすシャーク将軍だ!!」

「シャーッハッハッハッハ!! サメは老いても色 褪(さ) めねーぜぇええええええ!!」

紹介と共に飛び出してくる、歳の割に落ち着きのないオジサン。

「あらあら彼、まだ出場するのねえ。いい加減若い子に席を譲ってやってもいいでしょうに」

呆れるシーラおばあちゃん。

「次は、輝く新世代! 斬泳闘法は継承成ったか!? 父からの想いを託され参加する、タチウオ二世だ!!」

紹介を受けて飛び出てくる若い人魚。

さらに歓声湧き上がる。

「あら、タチウオちゃんのところは代替わりしたのね。優勝の夢は叶わなかったけれど、立派な後継者を育て上げたのなら上場の人生ねえ」

解説のシーラおばあちゃん。

「さらに常連が続くぞ、次なるはこの人魚王アロワナの右腕、有能な官吏は優秀な戦士でもある! 人魚国特別補佐官ヘンドラーだ!!」

ああッ、ヘンドラーおじさぁん!!

彼も知っている。昔から農場に出入りし、僕とも面識のあるヘンドラーおじさぁんだ!!

「人魚騎士団長は実力も確か! ヘンドラー家からの刺客ワイルド! 今年は同じくヘンドラー家からプラガットも出場だあ!!」

「あら、ヘンドラー家の三男もついに大器が晩成してきたわね。長い努力が実を結ぶっていいことだわ」

紹介される人物を見ながらシーラおばあちゃん寸評が助かる。

「まだまだいくぞ! ホウボウ道場から実力派が多数参戦! ズワイ! タラバ! モクズ! ホウボウ高弟三人衆だ!!」

「人魚王家からも参戦! 我が弟テトラ!」

「『海のギャング』の異名は本物か!? シャチ!」

「コイツも『海のギャング』? ウツボ!」

「デカァい!! 説明不用!! マッコウ!!」

「無名ながらも予選を圧勝してきたダークホース! 一体何者だ!? イエローテイル!!」

次々紹介される男人魚たち。

皆強そうで、見るからに圧倒される。

出場する誰もがこの日のために、鍛錬を惜しまず頑張ってきたんだろうなあ。

その時にシーラおばあちゃんの配慮がわかった。

彼らの鍛錬を無駄にしないためにも、あえて老姫の暗躍を秘密にし、誰にも知られないまま処置したのだ。

それがシーラおばあちゃんの思いやり。

「そして……ここで本大会大目玉の、スペシャルゲスト参戦者を紹介しよう」

お?

なんか空気が変わってきたな?

「……人魚国の恩人にして第一の友、聖者様の参戦が途絶えてから数年ぶりに陸からの参戦だ! そう聖者様の息子にして我が妹プラティの息子でもある! ジュニアくんだ!!」

ええええええええええええええええええええええええええええええッッ!?

僕ぅうううううううううううううううううううッッ!?

知らない知らない知らない!

僕は何も聞いていない!!

あまりに動揺しすぎて三回も『知らない』って言っちゃった!!

でも実際知らないんだもん!

僕はこの大会に出場するなんて意思を表明したことは一回もない!!

「あらジュニアちゃん。アナタもあの婿さんの息子ならこうなることぐらい予想できないとダメよ」

だから、こんな大会が行われること自体ついさっきなのですが!

こんな畳みかけられて予想もできるか!

「心の準備ぐらい一瞬でできなきゃダメよ。祭りには巻き込まれるものと心得おきなさい!!」

僕まだ若いからそこまで達観できない!!