軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1448 閑話:ある乙女人魚の観戦

私はマイ!

イソギンチャクも恥じらう乙女人魚!

私も順調に成長して、もうすぐマーメイドウィッチアカデミアに入学する歳になるわ。

全女人魚の憧れ。

横びれは乱さないように、尾ひれは翻さないように。

そんなお淑やかで優雅な学園生活が私を待っているわ!

「いやあの……、進路のことなんだけど……!」

どうしたのお父さん!?

店のお手伝いはしているし、勉強もちゃんとしているわ!

……そうなのよね。

私のマーメイドウィッチアカデミア道へのもっともネックな障害は……資金!

ウチの両親は商家を営んでいるけれど、率直に言って街の雑貨屋程度にすぎない。

その娘である私も、小庶民の枠に入ってしまう。

大貴族、大商家が集まるマーメイドウィッチアカデミアにおいて私のような小庶民は場違いなのではないか。

そう思うと、これからの行く先が不安で仕方がないわ。

でもマーメイドウィッチアカデミアは私が憧れる王妹、プラティ様が青春を過ごした場所。

卒業の日まで、知性と品位をあの場所で培ったというわ。

私もプラティ様のように優雅で可愛い青春をマーメイドウィッチアカデミアで過ごしたい!!

それは私のようなうら若い乙女人魚なら誰でも夢見ていることよ。

しかし現実とのギャップが夢への道に立ちはだかる!

ああ、一体どうすればいいのかしら!?

このまま親に負担になることを承知でマーメイドウィッチアカデミアの門をくぐるか、それとももう一つの夢、七つの海の格闘王に上り詰めるか!?

「そんな我が娘に、吉報があるんだけど?」

何々お父さん?

まさか、この店を抵当に入れて、入学金を確保してくれた!?

「元からローンだよこの店は。そうじゃなくて何か面白い催しがあるらしいぞ」

何ですって?

海下一魔女武闘祭!?

こんなお祭りが開催されるというの、この時期に!?

しかも前評判によると、あの才媛淑女の集まりマーメイドウィッチアカデミアからも代表生徒が数人、選手として出場するという。

なるほど、この大会を観戦して憧れのマーメイドウィッチアカデミアの理解度を深めよということね!

わかったわお父さん!

私この海下一魔女武闘祭とやらを見学してくる!

開催日はお店の手伝い休むけど、よろしくね!!

「まあ、休日ぐらいしっかり遊んできなさい」

理解のある親でよかったわ!

さあ、いざゆかん海下一魔女武闘祭の会場へ!

* * *

そして当日。

前日から徹夜で並んだお陰で、いい席を確保できたわ!

(※絶対にやめましょう)

開会式での四魔女様のパフォーマンスも最高だったし、イベントとしても充分に見応えがあるっぽいわね。

それで、私の最注目はマーメイドウィッチアカデミア代表選手の皆様たち。

既にチェックは万全よ!

まず、現役生の中でもっとも家格の高いシュリンプ様。

その優雅な所作、何人もの下級生を束ねるカリスマ性で、現マーメイドウィッチアカデミアの在籍生でも名実ともにトップと言われるわ!

次にラミレジィ様は実力豊かな上級生!

複数属性の魔法薬を使いこなし、その扱いの色鮮やかさは魔女に匹敵するとまで言われているわ!

あと、家格の高いドミノクラウン様!

他!

そんな感じに私の集めたマーメイドウィッチアカデミア代表生徒のデータは完璧!

いつか私も、あのお姉さまたちのように輝きたいわ!

きっとこの大会は、マーメイドウィッチアカデミアの代表生徒たちで優勝準優勝ベスト4と上位を総舐めにするはずよ!

その圧倒的勝利を見て、自分の目標を見定める!

さあマーメイドウィッチアカデミアのお姉さまたち、一方的な蹂躙劇を私に見せてくださいませ!

「一方的に蹂躙されたぁああああッ!?」

何ですって!?

マーメイドウィッチアカデミアの代表生徒が負けた!?

しかもまったく無名の人魚に!?

彼女らは一体何者!?

お……乙女塾ですって!?

そう言えば聞いたことがあるわ。

最近スラム地区で開設された新学校。

授業料ゼロという破格のコストで入学できるものの、授業内容はとことん厳しく多くの生徒が脱落していくという。

その噂を聞いた時『私は無理だわ』と思ったものだわ。

だって私褒められて伸びるタイプだし。

でも、その乙女塾がここまで勢力を伸ばしているなんて、想定外だわ。

マーメイドウィッチアカデミアの代表生徒を打ち破るなんて……!

……ああッ、また一人マーメイドウィッチアカデミアの代表生徒が乙女塾に敗退したわ!?

乙女塾の進軍、留まるところを知らず。

実際、乙女塾のトップを張る生徒は凛々しく美しいわ。

ああ……、あのオトシンクルス様の耽美な眼差し……。

私、考えを改めるべきかもしれないわ。

これからの時代は乙女塾!

そうよ、厳しいからこそ見合った成長を期待できるのよ!

将来は私も乙女塾に入って、オトシンクルス様を姐御と呼んでお慕いするわ!

その一方で……。

次の試合はマーメイドウィッチアカデミアが一本奪い返したわ!

ドミノクラウン様の頭脳戦勝利!!

まさか折れた剣をブーメラン状に繋ぎ直すことで、相手の背後からの奇襲攻撃を可能にするとは……。

ただ機転が利くだけじゃないわ。

必殺のタイミングを待ち続ける精神力、それを相手に悟らせないクールさ、どれをとってもただの温室育ちお嬢様には備わらないタフさをドミノクラウン様から感じられるわ!!

マーメイドウィッチアカデミアと乙女塾。

一方が先んずれば、もう一方が抜き返す一進一退の攻防。

双方一歩も引かないわ。

どちらも優雅、どちらも剛健。

ああッ、会場では既に準決勝まで進み、勝ち残った選手たちが真っ向からにらみ合っているわ!

マーメイドウィッチアカデミアと乙女塾、奇しくも二対二の顔ぶれで。

こうなれば、この戦いの勝敗で私の進路を決めるという手もアリね。

勝者こそが優れたるというのは昔からの鉄則だものね。

さあ、私の運命も載せて戦いが幕を開ける……かと思いきや。

四魔女のお姉さまたちが乱入することで乙女塾のスパルタな教育体質が問題視されることで、勝敗はうやむやとなった。

しかも準決勝まで残ったマーメイドウィッチアカデミア&乙女塾のお姉さまたちは、エキシビション的に出場してきた四魔女の一人ディスカス様に一捻りで蹴散らされていったわ。

……やっぱり現役の魔女が一番強いってことね。

私もやっぱり最終的には魔女になるのが夢ね。

あらゆる魔法薬を操って、皆から憧れられる未来の私。

そのためにもまずは、素敵な学校に入って自分磨きに励まなきゃ!

そしてその最有力候補はマーメイドウィッチアカデミアか、乙女塾か……?

乙女塾は、厳しさがネックだけれど四魔女様に摘発されたことで待遇改善するかもしれないし。

そうなれば授業料が安い分、乙女塾の方がより有利と思えてくるわ。

でもマーメイドウィッチアカデミアに長年の憧れがあるし……!

ああ、一体私はどっちを選べばいいの!?

「……なあ、我が娘よ」

なに、お父さん!?

また授業料の話!? そんなの私が特待生として入れば奨学金だってもらえるでしょう!

それでコストも最小限に抑えられるわよね!?

「いや……それ以前にお前、特待生どころか合格できる学力もないだろ」

……え?

「お父さんの小遣い切り詰めて私塾に行かせてやってたけど、そこの先生言ってたぞ。『おたくのお嬢さん頑張ってますけどねー。頑張っているんですけどねー』って」

何その努力だけは認められてる口ぶり?

「乙女塾も、貧民救済の観点から一定以上の家庭からは授業料もとれば入学テストもあるようだし。お前の成績だと多分……落ちるぞ」

マジで。

……。

……実は私、本当の意味で憧れている御方がいるの。

それはパッファ王妃様!

無学でありながら魔女の一人に数えられ、人魚王妃にまでなった。

そのアグレッシブさとバイタリティに私は強く憧れるわ!

私はパッファ王妃様のように唯我独尊の道を歩んで、頂点に立ってみせるわ!!