軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1446 ジュニアの冒険:育成ジェネレーション

海下一魔女武闘祭に激震走る。

いよいよ準決勝まで来て俄然盛り上がる本戦に、なんと第一線の魔女たちが乱入したのだ。

『冷蔵の魔女』ディスカス。

『火加減の魔女』ベールテール。

『熟成の魔女』ヘッケリィ。

『整頓の魔女』バトラクス。

いずれも農場で育ち、農場が誇る万夫不当の魔女たち。

この大会の審判役でもあり、優勝者には彼女たちの指導も受けられる賞品としての役割も兼ねたお姉さんたちが、何故この段階で乱入を!?

「乙女塾……前々から黒い噂がありましたが、まさか本当のことだったなんて……!」

「前人魚王妃みずからが指導に当たっているからって油断しすぎていたわね」

と魔女お姉さんたち、胡乱げな視線をシーラおばあちゃんへと向ける。

そして困惑するシーラおばあちゃん。

「あら? あらあら? 何かしら?」

マジで『何も心当たりがない』と言いたげなシーラおばあちゃん。

「「「「前王妃様……いいえ乙女塾塾長殿、アナタの指導法には大変問題があります!!」」」」

ズババーン! と糾弾の指摘を入れる魔女お姉さんたち。

もはや会場は、対戦のお祭り騒ぎとは打って変わって緊迫した面持ちとなり、参加者であるドミノクラウンさんたちも置いてきぼりだ。

可哀想に、ついさきまで自分らが主役だったのにポカーンとしているじゃないか。

「どういうことかしら? アタシは精一杯、誠心誠意を込めてあの子たちを育てたつもりですけれど……」

シーラおばあさん、突然ケチをつけられて戸惑いのご様子。

「もし事実無根の言いがかりなら……その放言の代償を支払う覚悟はあるんでしょうねえ?」

いや、違った。

対立者を前に、世界の破壊者であった往時の血が騒いでいらっしゃる。

「シーラお姉さまに楯突くなんて……若さって恐ろしいわ……!」

それを傍から見て戦慄するカープ学園長。

魔女として一人前となったディスカスお姉さんたちだが、それでも太古の魔女世代であるシーラおばあちゃんやカープ学園長から見ればまだまだヒヨッコなのだ。

「もちろん根拠はあります!」

「シーラ様、アナタの教育法はもう時代遅れなのです!」

果敢に論難していく魔女お姉さんたち。

「時代遅れ? それってもうアタシがシワシワのお婆さんって言いたいのかしら?」

「実際お孫さんいらっしゃるでしょう? しかもたくさん?」

「くッ……!?」

新世代、強い。

「わたくしだったら、あんなこと言った瞬間に自分で肝が潰れますわ……!」

横で聞いているカープ学園長の方が顔中脂汗でビッショリだった。

「では教えてちょうだいな。このアタシの乙女塾の指導法……どこが間違っていて、どこが時代遅れだというのかしら?」

「それはもちろん……!」

ディスカスお姉さん、ベールテールお姉さん、ヘッケリィお姉さん、バトラクス様お姉さん。

皆で息を合わせて……!

「「「「厳しすぎることです!!」」」」

堂々と元人魚王妃へ言及するその勇ましさ。

対して指摘を受けるシーラおばあちゃんはやや困惑気味で……。

「厳しすぎる……? そうかしら? アタシとしてはちょっと甘いかなって思っているくらいなんだけれど……!?」

「マジか……!?」「これがショウワ……!」

ヒソヒソと恐れおののく魔女お姉さんたち。

「お言葉ながら前王妃、時代は移り変わっています」

「いたずらに厳しく、限界超えてシゴキ回していれば成長するなどというテキトーな理屈は、今では通用しないのです」

現役最若手の魔女たちが、もはや長老たるシーラおばあちゃんに物申す。

そんな恐ろしいながらもフレッシュな光景が展開している。

「人を成長させるには、厳しいだけではダメなのです」

「肯定的な意見で若手のいいところ悪いところを浮き彫りにし、適切な対処法を提示しなければ」

「最初から否定的では、相手だって素直に聞いてはくれませんわ」

「『やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ』。聖者様が提唱する農場学校の教育方針です」

たしかにそれ父さん言ってた。

……でもな。

それ絶対、何かのパクリだって息子の僕は確信している。

「しかるにシーラ様、アナタの乙女塾での教育方針は真逆! 時代に逆行するものです!」

「油風呂! 剣山腕立て! 魍魎サバイバル! ギロチン!」

「いずれも現代では禁止確定です!」

「処刑法交じってない!?」

シーラおばあちゃんも『さすがにそこまではやっていないけれど……!?』と困惑気味。

「でもでも、厳しい指導法のお陰でウチの子たちは成長し、エリート学校のお嬢様たちを蹴散らせる実力を身につけられたのよ?」

それって成功じゃない? とシーラおばあちゃんなりの反論。

「能力を伸ばすことばかりが教育ではありません!」

「そうです、いかに高い能力戦闘力を育んでも、それを駆使する精神が真っ当でなければお話になりません!」

「しかるに! 乙女塾の生徒たちはどうです!?」

「あまりに厳しい指導で、人格がすさんでいるではないですか!?」

たしかに。

準決勝まで勝ち上がった二人の代表生徒だけ見ても、顔つきが劇画調になっていて眉毛ゴン太にもなっている。

アレが元々の顔つきだとは思いたくはない。

「シーラ様、アナタは教え子たちに知恵と力を身につけさせるため、代わりに何かを犠牲にさせてはいませんか!?」

「それはノーグッドです!」

「成長とは、時間と努力によって達成されるもの!」

「何かと引き換えであってはいけないのです!」

魔女さんたちの主張が効いたのか、シーラおばあちゃんの胸に何かが突き刺さる感じがした。

「そうね……言われてみればその通りかもしれないわ」

『姉さまが目下の言うことに同意している!?』と戦慄するカープ学園長。

「アタシは、下町で貧困にあえぐ子たちに成り上がりのチャンスを上げたくて……。生まれた頃から英才教育を受けてきたエリートの子に勝つには、生半可じゃ足りないでしょう?」

「その通り!!」

今まで沈黙で見守ってきた一人が、突如論戦に参入した。

それは乙女塾代表生徒の子だった。

「シーラ塾長の言う通りだ! そんな『褒めて伸ばす』だの『個性を重視』だのぬるま湯の方法で、ここまで強くなれたか我々は!?」

「憎きマーメイドウィッチアカデミアを打倒するには、ここまでする必要があったのだ! 部外者ごときにあれこれ口出しされるいわれはない!」

指導を受けた当人たちまでスパルタに賛同しているのだから、これ以上手の施しようがない。

普通ならば。

「お黙りなさい」

「「ぎゅばぐぅわーッ!?」」

そんな乙女塾代表生徒たちを魔法薬で吹き飛ばす、現役魔女さんたち。

……矛盾?

「自分で気づいていないの? そのマーメイドウィッチアカデミアへ対する異様なまでの憎悪」

「それ自体が、度を越した厳しさのトレーニングによって熟成されたものだと」

「アナタたちの修業がつらく苦しかったのは、マーメイドウィッチアカデミアのせい? 違うでしょう?」

「心を歪ませてしまうほどの過度なトレーニングは、やはり問題なのよ!」

そう指摘されて、乙女塾の代表生徒たちに変化が?

……ああッ、あの劇画調の顔つきが晴れて、普通の女の子の顔に戻っていく!?

「たしかに……その通りです!」

「なんで私たちは、あんなにマーメイドウィッチアカデミアに怒り憎しみを募らせていたの?」

やっぱり何かの呪いだったのか?

今日一番のビックリなんだけれど?

「そうは言うがよ……」

そこへ……あッ!?

パッファおばさん!?

先ほど逃げるようにご帰宅されていったパッファおばさんが舞い戻ってきた何故!?

「アンタたちを一人前まで育て上げたのはアタイやプラティやランプアイたちだけれど、そんなアタイらも相当スパルタで育ててきたよね、アンタらを。アタイらも古い世代だから」

最後の一言に含みを感じる。

「だからこそ、です!!」

「というと?」

「自分たちが辛く厳しいシゴキを受けたからこそ、それを次の世代にも繰り返したくないんです! 断ち切れ、負の連鎖!!」

何と立派な。

古き悪習に、自分自身が苦しめられてきたからこそ、その因果を次世代まで引き継がせてはならない。

普通なら自分も苦しんだだけ、他人にも苦しみを分け与えようというのに。自分のところで食い止めようとする自己犠牲の精神!

「フッ、どうやらアンタたちも、アタイらが想定する以上の成長を遂げたらしいね」

満足して微笑むパッファおばさん。

でもこの人、本当何しに戻ってきたんだろうか?