軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1415 ジュニアの冒険:みんなでおでかけ

こうしてなんとか現世に帰ってきた僕。

空気が美味しい!

これが娑婆の空気!!

何やかやで大冒険だったからなあ。

一時は生きて帰れぬやもと心底ビビったが、結果こうして現世の地とを踏めて今、心よりの安堵を噛みしめている。

やっぱりアレよ、神域って迂闊に踏み込んじゃダメなんよな。

天界でも俄かにそういう臭いをかぎ取ったけれども、冥界の『行きはよいよい帰りは恐い』度は段違いだった。

さすが『ここに入る者はすべての希望を捨てろ』と言わしめるだけはある。

今後は誘われても踏み入らないようにしよう。

それぐらいに恐ろしい場所なのだ、冥府とは。

『いやー……久々に遠出して、肩が凝りましたのうー』

そんな中、先生も元気溌溂。

生死の境を越えて戻ってきたというのに、あんまり堪えていないのが凄い。

「うわぁああああああーーッ! ジュニアぁああああああああああッッ!!」

ドゴゴゴゴゴゴゴ、と接近する轟音に気づくと共に吹っ飛ばされた。

ヴィールが弾丸の速度で抱き着いてきた。

「うぐおごッ!?」

踏みとどまれずに吹っ飛ばされる僕。

ヴィールは感極まって僕へ頬ずりするのだった。

「今回ばかりはマジでヤバいと思ったのだぁーッ!! 無事でよかった! マジでよかったジュニアぁあああああああああッッ!?」

ヴィールも相当心配だったのだろう。

竜の国で、僕が足を踏み外して以来の再会だからな。

のん気に冥府観光している間ヴィールを随分やきもきさせてしまった。

反省点だな。

「アードヘッグのヤツに随分ヤキいれて反省させたからな! 次からはちゃんと安全装置が働いて、足踏み外してもキャッチされる仕組みになるのだ!!」

アードヘッグさんには、余計な仕事を増やしてしまって申し訳ない。

僕の不注意で……。

「もー、こうなったらジュニアの傍から離れないのだ! いつ何時もおれが近くにいて守ってやるぞ!」

あまりに心配しすぎて今度はヴィールが過保護になってしまった。

ヴィールが守ってくれたらあまりに無敵すぎて修行の旅が意味なくなってしまうのだが……。

しかしこんなにも心配させてしまった手前、無下にするのも可哀想だし……。

『しばらく好きなようにやらせなされ。どうせヴィールですのですぐ飽きて別のことをしだすでしょう』

先生の、ヴィールへの認識が猫のそれなんですが。

しかし事実もそれに近いので、助言の通りにしておきますか。

『おお、そうだ。ではワシのお出かけに付き合ってはくれませんかの?』

先生から提案された。

『ヴィールが飽きるまでの間ですので。この間再会したワシの生徒から、オススメスポットの話を聞きましての。是非行ってみたいと思っていましたのじゃ』

オススメスポットですか。

ノーライフキングがそんな女子会でのお喋りみたいな経緯でお出かけするのか。

『せっかく外まで出たから、ついでに寄っていくのもよかろう。二人とも同道してはくださらんかの?』

もちろん、命の恩人にもなった先生の頼み。

それぐらい聞かなきゃ恩知らずにもほどがある。

冥府から生還してすぐ落ち着かない感じもありますが、僕でよければご一緒しましょう。

「ジュニアが行くならおれも行くのだー」

話がまとまった。

僕とヴィールと先生。

この並びっていわゆる最強パーティなのでは?

ウチの父さんがこの面子で、一体どれだけの障害を薙ぎ倒してきたことか。

「では行くぞ死体モドキ! ジュニアをつまんねーところに案内したら承知しないのだー!」

『その点なら心配無用よ。我が生徒がオススメしてくれた名所なれば、間違いなどあるわけがない!』

先生の生徒さんたちへの信頼が尋常ではない。

元より先生は、生徒の信頼MAXなんだが。

「よぉーし! ではジュニアの生還祝いも込めて、楽しいスポットへ繰り出すのだー!!」

最強パーティでの行軍が決まった。

* * *

そして辿り着いたのが、とある街角。

地方都市というのだろうか。

僕も初めて訪れる、街の名を聞くのも初めての都市だった。

そんな世界中どこにでもあるような街角を、僕たち三人は並んで歩く。

当然、現地人たちの注目の的だった。

「ノーライフキングがいるぞ……!」

「アレがノーライフキング……!?」

「初めて見た」

「ママ何あれー?」

そりゃあ皆も気になるに決まっている。

ノーライフキングと言えばアンデッドの王。

強さといい魔力といい神にも等しい存在で、一般の方々が普段お目にかかれるものではないのだから。

こんな街中で遭遇するノーライフキングなんてまずいない。

この先生を除けば。

「この世でもっとも気やすいノーライフキングだからなコイツは」

ヴィールがやや苦々しい表情で言った。

その間にも先生は、こちらをめっちゃ凝視してくる赤ちゃんに向かってにこやかに手を振っていた。

「まったくコイツは超越者としての威厳もあったもんじゃねえのだ。一応ドラゴンと並び称される脅威だっていうのに。死体モドキが侮られる分は全然かまわねーが、その影響でドラゴンまで格落ちされたら堪ったもんじゃねーのだ」

まあまあ。

先生が皆に分け隔てなく優しいのは、いいことじゃないか。

「よぉーし、ここは一つニンゲンどもに、超越種の恐ろしさを再教育してやるのだ。思い出せ! おれらに支配されていた恐怖をなーッッ!!』

言いながらドラゴンに変身するヴィール。

その姿は巨大で、街の人々を混乱させるには充分なものであった。

しかし……。

「こらッ」

『やめんかッ』

僕と先生の両方から、左右の脛を殴られるヴィール。

『いてててでぇーーーッッ!?』

『人々の迷惑になることをしてはいかん。マナーを守ってこそ異なる種族が平和に暮らしていけるんじゃぞ』

僕と先生が見守ってる中でやったら、即こうなると決まっているだろうに。

やられたらますます竜の威厳が落ちるんではないだろうか。

「ところで先生……」

『はい?』

そろそろ目的を教えてくれませんか?

今のところオススメスポットと銘打たれただけで、具体的にどこへ行くかはお知らせしてもらっていませんが。

『そうでしたかな? 楽しみはあとに取っておこうと秘密にしておりましたが、そろそろいいでしょう』

街にも入ったことだし。

茶目っけが聞いている先生。

『この街に、美味しいパンケーキを出すお店があるそうで』

パンケーキッ!?

それはもしや、ウチの父さんがよく作ってくれる甘味カテゴリのアレ!?

「パンケーキだとッ!? マジかマジかマジかッ!?

パンケーキの名を聞いてヴィールも途端に目の色変える。

それほどにパンケーキとは魔性の品だった。

『生徒たちの情報によると、とある料理人が世界中を旅した末に開発したという最強のパンケーキというものらしいですぞ』

「なにぃいいいいッ!? そんな大層なものなのかッ!? じゅるるるるるる……、いやッ、最強のパンケーキはご主人様が作ったモノに違いないのだ! その看板に偽りがあるか、このおれ様が審判を下してやるのだぁああああッ!」

言いつつもヴィール、ヨダレダラダラ流しているじゃないか。

食欲が勝つのか、それともドラゴンとしての矜持が勝つのか。

どちらにしても、僕も甘くて美味しいパンケーキのことを想像するだけでお腹がすいてきた。

冥府で、焼肉パーティが開かれていた隣でヨモツヘグイがあるから、ずっと食べるの我慢してきた僕。

その我慢が実を結ぶ時、来たか!?