軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1404 ジュニアの冒険:改革者

「ねえねえ! ニンゲンって皆アナタみたいに強いの!? アナタってニンゲンで何番目くらい!? 一番? 二番? 三時のおやつは文○堂!?」

こちらの強さを認めた途端、嵐のように質問攻めしてくるボウアちゃん。

やはり年齢相応に好奇心旺盛なようだ。

「まあまあ、ボウアちゃんたらあんなにジュニアくんのこと気に入ったみたいで。いい友だちができてよかったわ」

「ウチのジュニアに馴れ馴れしいんじゃないかなー」

その一方で、アードヘッグさんは崩壊した龍帝城の修理に追われていた。

ボウアちゃんが散々暴れたあとの城内は、半壊状態になっている。

「ボウアめ、ここまで壊せるようになったとは……成長したなあ」

しかしながら父親の感想は、思っていたのとはなんか違うっぽい。

成長を喜ぶシーンか、ここ?

「ねえねえ、答えなさいよ! アナタが人類最強よね? ね!?」

お姫様からガクガク揺さぶられる。

しかしそんなに揺さぶられても、僕が人類最強とはならない。

「少なくとも僕より確実に強い人が、少なくとも四人はいるからなあ……」

「三人!? じゃあトップ5には入るってことね! つまり私は人類トップクラスの実力には追い付いている!」

ポジティブシンキングだなあ。

ちなみに人類以外に枠を広げたらもっといますからね。世の中は広いんですよ。見上げても見下ろしてもキリがない。

「その通りだぞボウア。これからは竜族が世界最強などという驕りは捨てなければならん」

城の修理を終えて、アードヘッグさんが話に混ざってくる。

というか、え?

もう修理完了したの? 早すぎない!?

「破損部分にマナを通して具現化させるだけだから……」

無茶苦茶便利。

「かつてドラゴンは、最強生物と恐れられたものだ。事実ドラゴンに対抗しうる生命はなく、精々死の呪縛から解き放たれたアンデッドの王が並ぶだけだった」

世界二大災厄ってヤツですね。

ダンジョンでもこの二つと遭遇したら死あるのみだって父さんが言ってました。

僕は生まれた時から毎日会ってたけれど。

「しかし最強の座すら時間の流れによって揺らぐ。……おれは、ドラゴンたちの未来を考えて竜の国を築いたが、結局こちらに移住した者は全ドラゴンの半数にも満たなかった。残り半分以上は依然として地上に残り続けた。そうして残留した者の多くは……」

……どうしたんですか? 溜めて?

「……みずからのダンジョンを所有するドラゴンだ」

ああ。

「たしかにドラゴンは、ダンジョンを根城にする者が多いのだー」

特に山ダンジョンにね。

濃厚なマナの滞留地であるダンジョンは、ドラゴンやノーライフキングにとって優良な根拠地となると先生から習った。

「気持ちはわかる、彼らはそれぞれのダンジョンを棲家と定め、様々に工夫を凝らし安全に住みよくしてきたのだ。長年かけて築き上げてきた我が家を捨てて『移住しろ』と言われてもそう簡単には受け入れられまい」

そうだね……。

ウチの父さんだって長年愛着のある農場を捨てられずに、農場国を行き来しているし。

「彼らの意思を尊重し、地上に残ってダンジョンに住み続ける者はそのままにしておいた。しかしいつ頃からか、そうして残った者たちが竜の国へやってくるようになったのだ」

「えッ?」

それは何故?

「ニンゲンにやられたと」

その言葉にボウアちゃんだけでなく、多くの者が固まった。

ヴィールが声を震わせて……。

「おいおいウソだろう。農場関係者とかならわかるけれど、そう簡単にドラゴンがニンゲンに負けて堪るか?」

「私も初めて聞いた時は耳を疑ったけれど、マジらしいのよ」

ブラッディマリーさんもこめかみを抑える。

「ダンジョンに侵入してきた者がいて、脅してやろうと出て行ったら逆にボコボコにされて、泣きながら竜の国へ避難しに来ました、と……」

「アードヘッグが竜のための新天地として築き上げた国が、避難場所として利用されるなんて……!」

ブラッディマリーさん納得がいってないご様子。

「一体何ごとかと頭を悩ませている。ただでさえ何の用もなくダンジョンに入ってくるなどニンゲン側の目的がわからんのだが……!」

その話を聞いて僕の脳裏によぎる者があった。

用もないのにダンジョンに潜る輩……心当たりがある。

冒険者という、あえて危険に挑む酔狂な生業人が。

そしてその中でもトップクラスのS級冒険者……。

一件のヒットが浮かんだ。

「コーリー兄ちゃん……」

一昔前程度なら、いかに世界最高峰のS級冒険者といえどもドラゴンに正面挑んで勝ちようがない。

当たって砕けるだけだ。

当時の現役S級冒険者たちも『確実にドラゴンから逃げれる』ことを自慢にしていたぐらいだし。

しかし時代は変わった。

コーリー兄ちゃんは一時期、農場国の開拓団に加わり汗水たらした御仁。僕も幼少の頃よく遊んでもらった。

農場国では先生が出張指導しにくることもあるし、プロトガイザードラゴンのテュポンさんがダンジョン開設したりして修行にもってこいの場もあった。

お陰でコーリーお兄ちゃんは目覚ましい躍進を遂げ、歴代最強のS級冒険者となった。

人間国で再会できなかったのは残念だなあ……。

で、そのコーリーお兄ちゃんなら一直線にダンジョンを掻き分けて、大ボスのドラゴンを正面から駆逐するなんて周回プレイみたいなマネも充分可能だ。

可能なんだ……!

「このように、いまではドラゴンを圧倒するニンゲンも出始めている。ヒトと竜の差が埋まり始めているのだ。いつまでも最強生物とお高く留まっていれば、足元を掬われかねない」

滾々と、ドラゴンの驕りを戒めるアードヘッグさんであったが、僕はそれどころじゃない。

急ぎ冒険者ギルドへ戻って、ダンジョン内で遭遇してもせめてドラゴンを追い出すことがないように進言しなくては。

「でもでもお父様、これまでは何千年もずっとドラゴンは最強だったんでしょう? どうして今になって急に、ニンゲンの方が強くなりだしたの?」

「それもそうよねえ。……まさか、ガイア様によって在り方を変えられてしまったことで、竜全体の力も抑えられたとか?」

「ありえない話じゃないぞ。有性生殖で繁殖できるようになったドラゴンは、以前のように個体数を管理できなくなった。他の生物との兼ね合いもあって総体的に力を抑えられた……というのも」

「もしそうだとしたら迷惑千万だわー」

なんか議論が起こり上がっている!?

しかし、そんな熱い議論の中でも冷静に一人、考え込む者がいて……。

「いや……、違う」

アードヘッグさんが言った。

「我々ドラゴンの力は変わっていない。変わったのはニンゲンたちの方だ。ドラゴンが弱くなったのではなくニンゲンが強くなったのだ」

たしかにコーリーお兄ちゃんに関してはそう言えるだろうが……。

「いや、ジュニアくんなど特殊なケースの話ではない。ニンゲンは全体的に強くなって、今やドラゴンに迫ろうとしている」

「どうしてそんなことが言えるの? 根拠はあるの?」

「根拠はある、そこに……」

アードヘッグさんの視線が伸びる。

そして多くの人々の視線もそれを追う。

そして、視線の集まった先には……。

「……ヴィール?」

またヴィールの表情がバツの悪そうで。あからさまに目線を逸らしている。

こんな彼女の表情見たことねえ。

「ヴィールよ、お前よくラーメンをニンゲンたちに振る舞っていたな」

「振る舞って悪いかコンチクショー」

「そのラーメンの中にはドラゴンエキスが混入されているとか。竜気がたっぷりと宿ったエキスを、ニンゲンが耐えられる程度まで薄めて摂取させる。結果ニンゲンは竜の気を取り込むことになり、そうなれば当然能力も……」

「…………」

場に、沈黙が流れる。

「「「「お前のせいかああああああああッッ!!」」」」

ああッ、ヴィールが非難の的に。

でもしょうがないか、それだけのことをしているんだから。

「じゃあ人類強化の元凶はアナタだったってことヴィール!? 何敵に塩を送るような真似をしているのよ!? 利敵行為よ!」

「うるせえな、ウチのは塩ラーメンじゃねえ、長い時間をかけてじっくりグツグツ煮込んだゴンこつラーメンなのだ!!」

そういうことを言ってるんじゃねえ。

「大体テメエらが際限なくドラゴンエキスを送ってくるから処理に困るんじゃねえか! ヘタに捨てたら自然にどんな影響が出るかわからんって! ご主人様に禁止されたから何とかニンゲンどもに食わせる形でコツコツ消費してきた、このおれの努力を讃えろよ!」

「そのお陰でドラゴンの自然界での地位が下り始めてるって言ってんのよ! アンタはドラゴンとニンゲンどっちの味方なのよ!!」

「ラーメンを愛する者の味方なのだ!」

ある意味この世界にもっとも影響を与えているドラゴンは、ヴィールなのかもしれない。

ヴィールがゴンこつラーメンを配り歩き、人類全体の能力を底上げしたことで、これから繁殖していくドラゴンにも対抗できるかもしれないのだ。

生物学的な均衡がこれで保たれるのかもしれない。

その上で……。

「ヴィールおばさま……しゅごい……!」

何故かボウアちゃんが、ヴィールのことを尊敬の眼差しで見詰めていた。