軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1361 ジュニアの冒険:農場神拳vs農場聖拳

「しかぁし!!」

ノリトが吠える。

その目は真っ直ぐこちらを見据えている。

僕を?

「オレがやりたかったのは仲間に囲まれることでも、事業に成功して一国一城の主になることでもない!」

では、何を?

「兄貴、アンタを超えることこそオレの目標! オレの生き甲斐! それに比べれば事業など鍛錬! 仲間など寄り道にすぎん!」

「エヌ様!」「それでもオレたちはエヌ様についていきます!!」「エヌ様の目指す先がオレたちにとっても目標です!!」

ええい、いちいち絆をアピールするな。

「ゆえにオレは、オヤジから預かったこの土地を整えて、事業を進めるのと並行し、自分自身を鍛えるのを怠らなかった! 兄貴を……いやジュニア、お前を超えるために!」

ノリトから……鋭い闘志が湧き起こる?

「オヤジの能力を継承しなくても……努力が才能を凌駕することをオレが証明してみせる! そのためにオレは研究を重ねた! アンタの『究極の担い手』を、それを戦いに応用した農場神拳の分析し、その弱点を突く技術を編み出した、それが農場聖拳!」

やはり、農場聖拳の源流はノリトにあったのか。

ノリトが編み出した戦法だからこそ、その名に“農場”を冠することが許された。

「『究極の担い手』を封じるために考案した様々な攻略法が、数多くの分派を生んだ! そのいくつかをオレの仲間たちが実践することで、データの蓄積に一役買ってくれた!」

「「「「「それが我ら農場六聖拳ッ!!」」」」」

「私は厳密に関わってないけど」

レタスレートさんが補足をつける。

「どうやらリルレイたちはアンタを倒せなかったようだな。それもまたデータだ。コイツらが試した方法ではアンタに届かなかった。それが実証されるのもまた利益」

うう、アンタアンタって……。

実の兄にそんな余所余所しい……。

「いい気になるなよ。勝利など一つの結果に過ぎない。たかだか四、五通りの攻略法を破ったところで、農場聖拳は破れたりはしない。農場聖拳はさらに広くて奥深いのだ!」

「そうですエヌ様!」「エヌ様こそ農場聖拳の神髄!」

仲間の声援を受けて、ノリトの闘気が益々湧き上がる。

この流れから行きつく先は、恐らく……。

「さあ戦うぞ兄貴。いい機会だ、オレとアンタの宿命に、ここで終止符を打つ!」

やっぱりそういうことに!?

いや、そう言われましても……僕としてはすぐ下の弟に思うところは何もないわけで……戦う理由もないし。

やめません?

何事も平和が一番ですよ?

「平和など不用! オレがオレであるためには戦いもやむなし! それが宿命というものだ!」

勝手に宿命を設定しないでほしい。

「さあ、ジュニアよ! オレの挑戦を受けるがいい! それとも弟に負けるのが怖いか!? 尻尾を撒いて逃げるか!?」

「そうだそうだ!」「逃げるな卑怯者!」

取り巻きたちまでヤジってくる。

どうしてもここで僕らに兄弟対決をさせたいってことか。安易に追い込みやがって。

僕としては普通に他の弟妹同様にノリトは可愛い弟。

敵意など欠片もない。

それなのにノリトはそんなに僕のことで思い悩んでいたなんて。少しも気づかなかったのは不明だ。

その落とし前のために拳をかわすのはやぶさかではないが……。

……でも、いいの?

結局僕が勝つよ?

* * *

「ぐわぁああああああああああああああッッ!?」

農場神拳奥義、裏サマーソルト十六連。

激しく蹴り上げられて空を舞うノリト。

「「「「「エヌ様ぁああああああああああああッッ!?」」」」」

悲痛な叫びを上げるノリトの仲間たち。

「農場神拳と言いながら、決め技に蹴りとは……。小癪な……!?」

いや、拳法なら大体蹴り技あるだろ。

別に僕らが使う技は厳密に拳法でもないけれども。

勝った。

いや、しかし大変だった、なかなか。

ノリトの戦い方はそれこそ僕を封殺することだけに全集中していて、される側としてはウザったらしいことこの上ない。

なんでそこまで徹底的に対僕なの? と思ってしまう。

僕としては既に五回も彼らの設定した僕メタを返り討ちにしてきたんだから、今更追い込まれまいと思っていたところ、さらに多くの手札をブチ込んできたので『さすが源流』と思ってしまった。

それらに対応してこっちも手数を求められるし、そもそも向こうの手の内を破ってもまだ勝てないのがしんどい。

ノリトに普通に根性があるから崖っぷちで踏ん張るんだ。

『決まった』と思ったのに決まっていないのホントにしんどい。メンタルが削られる。

メタ特化に粘り強いってメンタルにしんどい二大巨頭ではないのか。

その両方を兼ね備えた相手と戦わされるこっちの身にもなってみろ。結局勝つけど。

「やったなジュニア殿! フライングクロスチョップをまともにくらっても相手が耐えきった時はどうなることかと思ったが!」

ゴティア魔王子が駆け寄ってくる。

勝利しながらもフラフラとなった僕の身体を支えてくれる。敵しかいないこの状況で唯一味方してくれる彼の存在がスーッと効く。

「本当に大変な戦いだったな。致命傷となりそうなダメージを六回はくらったのに立ち上がってくる相手の精神力には驚嘆したが……」

本当にね。

アレ僕の弟なんすよ。

僕としては十一回は決め手となる一撃を入れたと思ったんだが……倒したと思ったのに倒せてないの本当ストレス。

そして一方で、一敗を喫したノリトは大の字に倒れ、取り巻きたちに群がられていた。

「エヌ様! エヌ様ぁーッ!」

「エヌ様が負けるなんて……!?」

「そんなことより治療だ! 魔法薬を!」

「いやそれより時間逆行魔法……!!」

めちゃくちゃ気遣われている……。

ちょっと勝った僕にももうちょっと注目集まってもいいじゃんと思うのに、完全に捨て置かれていた。

「豆拳法、神決集!」

「ぶるおぉッ!?」

レタスレートおねえさんがノリトに一撃を。

「生命を活性化させる秘孔を突いたわ。これで少しは回復も早まるでしょう。でも一番よかったの早めに降参することだったんだけどバカね、最初に決め手を貰ったところでやめとけば、ここまで重傷は負わなかったのに」

「バカ言え……簡単に諦めるなんてできねえよ。特にコイツらの前ではな」

治療を受けつつも不敵に笑うノリト。

「別に自分から望んだわけじゃないか、コイツらのアタマを張ると決めたからには無様な姿は見せられん。……結局は負けて無様を晒したがな。こんな弱虫がトップとなったらお前らも幻滅したろう、去ってくれてもかまわんぞ」

「そんなことしません!」

取り巻きたちが言う。

「何度倒れても立ち上がって挑戦する、その姿! 感動しました! エヌ様を尊敬します!」

「オレたちが見習うべき姿です!」

「絶対に諦めないエヌ様に、オレたちも協力させてほしいっす! オレたちは一つだ!」

「皆で進んでいきましょう!」

敗北しながらもノリトの雄姿は、仲間たちの心に強く響いて益々の彼らの結束を強くしたようだ。

感極まった彼らはノリトを担ぎ、胴上げし始めた。

「ワーッショイ! ワーッショイ!」

「エヌ様ばんざーい! エヌ様ばんざーい!」

いや、怪我人を乱暴に扱うな。

賑やかだなあ向こうは。

それに比べてこっちときたら……。

……。

「じゅ、ジュニア殿?」

ゴティア魔王子が気づかわしげに話しかけてくる。

……たしかに僕は父さんから至高にして究極の力を引き継いだ。

そしてゆくゆくは、あの人が築いた王国も引き継ぐ。

しかしながらあの弟の……大勢の人間を惹きつけるカリスマ性、巨万の富を生み出す計画力、それに、たとえ不利であろうと立ち上がって食らいつく根性。

ただ単に父さんのギフトを継承しなかっただけで、指導者となるべき資質の数多くをノリトは持ってるんじゃないか。

僕と比べても。

……なんか自信なくなってきた。

「きッ、気を落とすなジュニア殿! 貴殿には我がついているぞ!」

とりあえず、こんなにゴティア魔王子が頼もしく見えたことは今までなかった。