軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1313 ジュニアの冒険:神仙師弟

僕ら今、絶賛死闘中。

元四天王ベルフェガミリアさんから挑まれた戦い。

それは彼の空間操作能力により圧倒的なものだった。

ベルフェガミリアさんは亜空間を創り出し、その中で炎や氷や暴風や地震や血の雨を降らして、さらには空間内の物理法則さえも自在に操って侵入者をなぶり殺しにする。

僕もゴティア王子も凌ぐので精一杯だ。

僕の『究極の担い手』で空間魔術を解除しようと試みるも、ベルフェガミリアさんの支配力の方が上で何ともできない。

自身が作り出した亜空間内に限定して、ベルフェガミリアさんが全空間において僕と同じことができるんだ。

さすればあとは、お互いの支配力次第。

幾たびの戦場を越えて不敗、四天王から魔軍司令を歴任したベルフェガミリアさんの経験に若僧ごときが敵うはずもない。

ということで終始劣勢を強いられる僕らだった。

「これは凄い!『金光陣』まで凌ぎ切るとはね! てっきりどこかでリタイヤするものとばかり思っていたのだが!」

相変わらず余裕なままベルフェガミリアさんが言う。

いやゴティア王子は半分リタイヤしているようなものですが。

そこで砂と氷と溶岩に埋まってヒクヒクしている。

とにかくベルフェガミリアさんは圧倒的なのだった。

空間自体を操る攻撃に、僕は対応することにばかり必死で、結局反撃に転じたことは一度もなかった。

戦闘中、僕がベルフェガミリアさんに触れるどころか狙うことすらできていない。

「いや、我が『十絶陣』にここまで居座り続けるだけでも大したものだ。普通は一つ目の陣で閉め出されるか、消滅するかだよ。キミたちの生存能力、感服するばかりだ。二人が支配者の座につく未来は明るいね」

そんな余裕たっぷりに言う。

「さて九つ目の陣まで突破されてしまって残るは『落魂陣』だけとなってしまった。まいったな僕の奥の手でもあるんだけどね。でもこうなったからには披露しなければ引っ込みがつかないなあ」

いえ引っ込んでしまっていいです。

くしゃみ以外は何でも引っ込んでしまえばいいんです。

「『十絶陣』のトリを飾る『落魂陣』の凶悪さは伊達じゃないよ。何しろ踏み入る者の魂そのものを消し飛ばす効力を持った異空間だ。コイツに飲み込まれて生きて出てきたヤツの心当たりは……ないなあ」

それデッドオアアライブなヤツですやんけ!

試練とかそんなノリで出すものじゃない! 正気に戻って! ベルフェガミリアさん!

「それでは行くよ、星落秋風五丈原……」

『子を責む』

「ぎゃあああああああーッ!?」

なんだなんだ!?

いきなりベルフェガミリアさんの背後からドロップキックをかましてきた何者かがいるぞ!?

一目見てわかる、明らかに人じゃない。

顔や肌はツルツル滑らかだが見た目からしての質感に生命感がない。

大理石とか石膏とかそんな感じだ。

そんな質感を持っている存在が生命なわけはない。

顔つきは整っていて、まるで紅顔美少年のようだが、とても少年とは思えない重厚さが気配から漂っている。

まるで数百年の経験を積み重ねてきた老賢のような。

そんな不可思議の存在、もしや……。

「いてててててててて……あら老師、お戻りですか」

『愚弟甚だし、懶惰なることもとより類なし』

あれが……!?

先生と並ぶぐらい強いと言われるノーライフキングの老師!?

『男子、三日会わざれば刮目して見よ』

「ジュニアくん久しぶりだね、大きくなったね……と言ってます」

はいッ!?

あッ、そうか過去にお会いしたことある!? 父さんに連れられて不死山に登った時か!?

すみません覚えてなくて!

「師匠ってば、僕に留守番させれるからって頻繁にあちこち飛び回るようになったからねえ。まあ元々プロトガイザードラゴンが解き放たれた不死山を監視する必要もないんだし、無理して僕が留守番する必要なくない?」

『食客、働くべし』

老師の乱入によって亜空間が消滅し、以前の山頂の景色に戻っていた。

ベルフェガミリアさんがみずから解除したのか、それとも老師が強制解除したのか。

どちらにしろゴティア魔王子はその辺に倒れてピクピク言っている。

「あ、あの……すみませんお邪魔しております……?」

とりあえず不死山の真なる主、老師さんへは仕立てに出ておこうと思う僕。

『気遣い無用、山は皆のものゆえに。山への敬意さえあれば誰でも門を叩く資格あり』

あ、なんか普通に喋った。

「ある時を境に不死山はあり方が変わったからね。世界を滅ぼす凶獣を封印する場所から、誰でも上り下りできる憩いの場へと……」

とベルフェガミリアさんが補足してくるが。

憩いの……?

何……?

「でも不死山は神聖にすぎるからね。結局主な利用法はストイックに修行場とかそんなものさ。キミらもここに来る途中見たろう?」

はい。

ゴールデンバットさんがハッスルしていたあそこですね。

「あれ共同施設で、冒険者ギルドが使わない時は魔王軍とかも利用してるんだよ。老師も不死山が賑わうのは歓迎らしくて普通に開放してるけどさ。自分が不在の時は僕に管理任せてるから怠けたい僕としては迷惑な限りなんだけれど」

怠けないで働いてください。

「気づいた? キミらが登ってくる時にはまった石兵八陣も敷いていたのは老師じゃなくて僕だったんだよ。老師が不在時の不死山の管理は全部僕任せなの。まあ寝ながらできる簡単な仕事ではあるんだけれど」

『起きてやれ』

老師からも鋭いツッコミが飛んだ。

「不死山を訪れる人たちと円滑なコミュニケーションが取れるように老師も普通の喋り方を心がけているらしい。『お前の言い方わかりづらいよ』と先生や博士から指摘されたらしい」

『…………』

「ところでゴティア殿下、どうでしたかな?」

急に話を振られるゴティア王子。

すみません彼はまだHPが回復していません。

ちょっと今回復させます。

気力注入、すはかぁッッ!!

「ふぎっぐッ!? あれ? 炎は? 隕石は? 稲妻や地割れや血の雨は!?」

「全部もう終わりましたよ」

アナタが精魂尽き果てている間に。

もう半ば辺りから意識失ってましたもんね。

「どうです王子? 我が十絶陣の試練を受けて自分の才覚を悟れましたかな?」

「ええと……!?」

ベルフェガミリアさんに正面から見つめられて、居心地悪くするゴティア魔王子

「自分の真の値打ちは危機の時ほど剥き出しになる。『十絶陣』に翻弄されて、自分は魔王となるに相応しい男だと確認できましたか?」

「いや、あの、それは……!」

自信なさげに目を逸らすゴティア魔王子。

まあ、途中から意識失ってたもんね。

「僕は知っていますよ、アナタがゼダンくんの跡を受け継ぐために、小さい頃からひたすら頑張っていたことを。しかし、今になって何を焦っているんですか?」

そうだよな。

ゴティア王子は明らかに焦っている。

僕と一緒に不死山に登っている最中も、彼は終始僕のことを急かしてばかりだった。

まるで何かに追い立てられているかのように。

『少年老い易く学成り難し、光陰矢の如し』

「そういうことじゃないです師匠、黙ってて」

老師に話の腰を折られる珍しい状況。

「殿下アナタは今危機感を感じている。自分が魔王になれないかもしれないと。だからこそ焦って形勢逆転を模索している。僕を再び魔王軍に迎えようとするのもその一環でしょう?」

ベルフェガミリアさんの強さはたった今、この身で味わった。

たしかにこの人は人類最強と呼ばれるに相応しい実力の持ち主だ。

あの空間操作能力が凄まじいだけじゃない。あの戦いを通じてもう一つ、恐ろしい事実が隠れていることを僕は気づいてしまった。

ベルフェガミリアさん自身はまったく動いていないということ。

それはつまり空間操作能力は小手調べでしかなく、彼自身の実力はいまだに明かされていないということ。

僕らが仮に空間操作能力を攻略できたとしても、ベルフェガミリアさんはまだ手札を充分残しているということだ。

その事実に背筋がゾクゾクする僕だった。

「王子、僕をただ寝ているだけのグータラ男と思わない方がいい。秘境で眠りこけていても下界の様子をつぶさに知っているが仙人というもの。だからアナタが誰を恐れているかということも知っています」

すべてお見通しと言わんばかりのベルフェガミリアさん。

彼から語られるゴティア王子の真実とは?