軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1306 ジュニアの冒険:山あり谷あり

それでまずは、不死山のいずこかに隠棲しているベルフェガミリアさんを見つけ出すことから始めないといけないわけか。

この異世界一大きい不死山から?

無茶だろう?

「とりあえずは頂上を目指そう。その途中で何らか手がかりが見つかるかもしれない」

また野放図な。

最悪、頂上まで登って帰ってくるだけでも意義があるか。

山登りはそれだけで意味があるものの……はず。

というわけでこれから僕の目的は純粋に登頂に定まりました。

目指せ不死山の頂上。そこに今の僕がまだ持ちえない何かが待っている……はず。

「よし! それでは行くぞ不死山の頂上!!」

揚々と進むゴティア魔王子の後ろについて登る。

……しかし、異変はすぐに僕たちに牙を剥いた。

「ん?」

違和感に気づいたのは僕の方。

「この道、さっきも通りませんでした?」

「そうか?」

ゴティア魔王子は特に怪しんでいない様子。

「気のせいではないか。山の風景なんてどれも似たようなものだろう?」

「いや、それにしても同じ景色が続きすぎる。……あの樹、枝ぶりや葉の付き具合がまったくまったく同じものが四回も現れるなんて偶然とは思えない」

何か既視感を覚える。

僕たちは数回……同じところをグルグル回っている。

真っ直ぐ頂上へ向かっていると思いながら。

「……石兵八陣」

「何?」

そうだ、だんだん思い出してきた。

幼少の頃、父さんに連れられて登った不死山でも、似たような力に阻まれて同じところをグルグル回り続けた。

これは結界だ。

人の感覚を狂わせ、空間を歪め、進むべき正解の道にけっして踏み入らせぬための異空間結界。

ここに踏み込んだからには突破するどころか、撤退することすら至難の業。

中でグルグルと堂々巡りさせることがこの結界の目的なんだから。

「ゴティアさん、少し下がっていてください」

「うむ……?」

僕は膝を折ってしゃがみ込むと、その掌で地面に触れる。

正確には、頂上へとつながるこの道を。

たどり着くべき目的地へと人を送るのが道の役目なら、その役割を『究極の担い手』で最大限以上引き出す。

結界による歪みなど吹き飛ばしてしまうぐらいに。

能力全開!!

「うおおおおおおおおおおおおおおッ!? 何だと!?」

まやかしの風景が吹き飛ばされ、散って消える。

『究極の担い手』で本来の役割を極限化させた道の前に、誤りへと導こうとする結界が丸ごと消失させられたのだ。

「まったく違う景色が……、どういうことだ?」

結界で歪められたまやかしではなく、真なる景色が現れて困惑するゴティア魔王子。

結界に惑わされている間は違和感の一つもないのだが、真実が現れると途端に異様さに気づかされる。

それほどの違和感を察知の外に置けるのも、結界の恐るべき能力というわけか。

「これは老師が張った結界……石兵八陣です」

「ろうし? せきへいはちじん?」

老師は、不死山を護るノーライフキング。

ただでさえ不死で恐るべき力を持つのイーライフキングの中でも老師は最強の部類に入る。

あの先生と同格とさえ言われている。

老師は、この不死山によからぬモノが近づいてくるのを防ぐために、その秘術でもって様々なセキュリティを張っているとか言う。

踏み入れた者を惑わせ決して先に進ませない石兵八陣もその一つだ。

「老師……不死山にそんな怪物が潜んでいたとは」

いやいや、老師はちゃんといい人ですよ。

話は通じるし、登山してきた僕たちを気遣ってくれるし。

……でも、そんな老師が石兵八陣を使って僕らの行く手を阻んでくるなんて。

何かあの人の気に障るようなことでもしたか?

してないか?

「う~ん、できればこのまま帰りたい」

だって進む先にいる相手が明らかにこっちを拒んでいるとわかったら、及び腰になっても仕方ないじゃん。

嫌われてるとわかっていて話しかけられるほど僕メンタル強くないんですよ。

「いや、大望のためなら多少の障害もなんのその! 共に行こうぞジュニアくん!!」

メンタル強めの人がいた。

僕は仕方ないとゴティア魔王子さんのあとに続いて山を登る。

「……だが疲れたな、休憩するか?」

体力少なめなのがネックだった。

そしてある程度進んだところで驚くべき光景に遭遇する。

それは、たくさんの人が集まっている修行場だった!

修行場!?

「走れ走れ! 体力づくりは基礎中の基礎だぞ! より体力をつけるように五周追加!」

なんか過酷なことをやっている教官風の人と、そのスパルタに駆られる練習生風の人たち。

……ん? その教官っぽい人は?

「ゴールデンバットさんじゃないですか!?」

「んお? お前は……お前は?」

ダメだ思い出してもらえない。

しばらくお会いしていなかったから仕方ないと言えば仕方ないが。

「……ああ、思い出したぞ! 聖者の息子だろう、たしかノリト!」

惜しい。

ノリとは弟です、僕は長男のジュニア。

「そうかそうか、こんなところであるとは珍しい。お前たちも登山か?」

人が山に登るのは当たり前と言わんばかりに尋ねてくる。

僕もそれで済めばいいなと思ってたんですが、そういうわけにもいかず。

僕らはこの山に隠棲しているというベルフェガミリアさんを探しに来たんですが。

ゴールデンバットさんはここで何を?

S級冒険者を務める人は、まあどんな秘境にいても不自然ではないですけれども。

「む? お前は知らないのか? オレはもう冒険者を引退したのでS級でもなくなった。今はギルド公認のスーパートレーナーを務めている」

スーパートレーナ―?

実像からかなり盛ってません?

「ふっふっふ、我が指導から新たなS級冒険者が山盛り生み出される。それはもはやギルドマスター以上の偉業だと思わないか?」

まだアナタ、ギルドマスターへの対抗心を燃やしているんですか?

かつてシルバーウルフと呼ばれるS級冒険者であったギルドマスター。

ゴールデンバットとシルバーウルフ。

この金と銀の最強冒険者が二枚看板で盛り上げてきた冒険者の最盛時代はたしかにあった。

しかしそれも遠い昔、今ではそれぞれが裏方に回り、積み上げた経験や知識を後進に伝える作業に従事している。

彼らの時代は去ったのだ、実に円満な形で。

それなのにまだ現役時代のライバルにライバル心を燃やしているゴールデンバットさんは……まあ、彼らしいというか……!

「今は、新人冒険者どもの強化合宿中だ。ギルドマスター……いやもといシルバーウルフからの要請でな」

そこは別にもとわなくていいのでは?

「あのオオカミ……まだオレに頼らないと何もできないとは、あれでギルドマスターができているとは到底思えんな……!」

とかブツクサ言う割にまんざらでもなさそうなゴールデンバット。

きっとギルドマスターさんが持ち上げたりなだめたりして上手く操縦してるんだろうな。

……っていうか、え?

つまりここ不死山の頂上辺りには、冒険者ギルド御用達の訓練場があるってこと?

それがここ?

「うむ、ここは訓練にはうってつけの場所だからな。標高が高くて空気が薄いから、少し動くだけで体力の消耗が激しい。ゆえに反復練習で体力をつけるにはうってつけだ」

はい、それはわかります。

隣でゼエゼエ言っているゴティア魔王子を横目に見て同意した。

「それにこれだけ人里から離れると脱走も容易ではないからな。そういう意味でも訓練場にはもってこいというわけだ。お前たちも何しに来たのかは知らんが、折角なら泊まっていくといい。寝床とメシぐらいは用意してやるぞ」

たしかに訓練場であれば、宿泊施設があっても何ら問題ではない。

アレ……すると僕が……。

こんなに重い思いをしてテントやら寝袋やら運んできたこと……。

意味がない?