作品タイトル不明
1291 閑話・新世代の詐欺師
我が名はチッポシ。
魔国の慈善業者だ。
何の事前業かって?
人々に夢を与えるのがオイラの仕事だ!
人々はオイラの与えた夢に酔う。
その対価としてオイラは報酬を受け取る。
どうだい? WIN-WINな素敵な関係だろう?
でも最近はクレームをつけてくる嫌な客もいてな。
オイラのことを“詐欺師”とか中傷してくるんだ。
他にも『ウソつき』とか『騙し屋』とか『他人の儲けをかすめ取るヤツ』とか『社会のダニ』とか不当な悪口を言ってくる。
根も葉もないことを言ってきやがって。
オイラは人々に夢を売ってあげているだけだろ。
夢は覚めれば消えてなくなるのは当然のこと。
その夢に金を払ってるんだから、文句言うなってんだい。
そう思っているのに魔国のバカどもは聞く耳もたず。
魔王軍にいまで通報して御尋ね者となってしまったオイラ。
『詐欺師チッポシ』といえば、指名手配書が出回るほどの賞金首となってしまった。
ま、顔なんていくらでも変えられるがな。
しかしこうまで警戒されるようになっては、もう魔国での商売はやりにくい。
こうなったら河岸を変えるしかないか。
で、色々と候補を挙げてみたところ打ってつけが浮かんだ。
人間国だ。
人間国は何十年か前まで戦争していたが、今ではすっかり平和になって両国の行き来も簡単だ。
他の候補もあったが人魚国は海の中にあって行くのも一苦労。メリットとデメリットが吊り合わないと判断した。
農場国? ダメダメあんなん、できたばかりの新興国に行ったって金なんかあるか。オイラは金が欲しくて働いてるんだよ。
そうして無事、人間国へ入れた。
身分を偽っての入国なんてチョロいぜ。
さて、人族どもにどんな夢を売ってやろうか?
何せこっちではオイラの存在なんて知れてないんだからな。いわばやりたい放題。
魔国で積んできた経験と技術もあるわけだから、駆け出しだった頃よりもっとデカいことができるはず。
ここは心機一転チャンスと思って、よりドデカい商売を打ち建ててやるぜ!!
* * *
そして数年経って……。
オイラの……いや私の商売は素晴らしく軌道に乗っていた。
もはや私の名はチッポシなどというケチ臭いものではない。
スゲタァーヤ・モドロフ。
王都魔法学院長スゲタァーヤ・モドロフだ!!
ドゥフフフフフフフフフフ!!
私が、人間国に市場をリサーチし見つけ出した必勝コンテンツ。
それは魔法だ。
人族どもは魔法が使えないらしい。
よっしゃ、それでは魔法を教える学校などを開いて生徒をたくさん募集、授業料を巻き上げてヨッシャヨッシャというのはどうだ?
素晴らしすぎるシステム!!
私はすぐさま構想を実現するために後援者を募ることにした。
こういうのは真面目にチマチマやっても何の意味もないからな。
やるときは、多少ウソを混ぜてでも景気よくドバーッと! それが儲けの秘訣だ!
頑張りの甲斐あって、私は有力な後ろ盾を得ることができた。
いずれも戦争に負ける前の時代、高い地位にいて甘い汁を吸いまくっていたヤツらだ。
数十年経った今でも生き残っていたとは、権力の亡者というのはしぶといものだなあ。
しかしそんな彼らも新政権の締め付けによって好き放題不正もできず、今では青息吐息状態の様子。
だからこそ私の持ちかけてきた儲け話に飛びついてきた。
私の設立する学校には政府の認可がついた。
王都魔法学院がこれより開校じゃぁああああああああああああああああッッ!!
ドゥフフフフフフフフ!
入学希望者が押し寄せてくるぞ!
人族どもがこれほどまでに魔法へ憧れを持っていたとはな!
その憧れをもっと抱くがいい! 我が魔法学院が“夢”を売ってやるぞ! 世界最高の魔術師になれるという“夢”をなああああああッッ!
こうなれば魔法学院はもはや権威。
多くの支持者、後援をもって一大勢力として成り上がった。
こうなればもっと上を目指すべきというのが男の在り方だ。
人間国を裏から支配する隠然たる権力者に。
この国に魔法が浸透して、誰もが魔法を使い、魔法がなければ成り立たない国となれば……。
魔法を教える教育機関の存在は必要不可欠となる。
この魔法教育機関の頂点に立つ私の権力は他に並び立つ者がない。
ドゥフフフフフフフフ!
いいぞ、もはやケチな詐欺師だったチッポシはどこにもいない。
人間国を裏から操るフィクサー、魔法学院長スゲタァーヤこそが私だ!
そのためにもまずは、冒険者ギルドを取り込まなくてはな。
冒険者ギルドは、今や世界中に広がる冒険者たちの統率組織。
そのギルドを支配下に置ければ、魔法学院の影響は世界中に及ぶ。『冒険者には魔法修得が必須だ』などと理由付けはどうとでもなる。
今いるギルドマスターを引きずり下ろして、同とでも動かせる私の傀儡を後釜に据えれば、冒険者ギルドの権力も利権も私のものだ!!
ドゥフフフフフフフフ!
世界の支配者の座が見えてきたぜ!!
そんな順風満帆な矢先であった。
とある報告がもたらされたのは。
冒険者ギルドで強力な魔法の使い手が現れたという。
郊外に発生した巨獣を一瞬にして吹き飛ばす。そんなことができるのは魔法以外にあり得ないと。
うぬぬぬぬぬぬぬぬ……!
冒険者ギルドめ、我々に危機感でも持ったか?
それでどこぞから応援を?
いや、これは考えようによってはチャンスだ。
強力な魔法の使い手なら、逆にこっちが取り込んでやればいい。
理屈は何とでも通る、魔法の使い手は魔法学院にこそいるべきなんだからな。
その自然な論法で強力魔術師をこちらに取り込み、さらに冒険者ギルドを追い込んでくれよう。
さあ、抗議の使者をギルドへ送れ!
……戻ったか。
成果はどうだ?
何々? 何と当人が入学希望している!?
よくやった!
え? 入学ではなく体験入学希望?
そんなのどっちでもいいわ。希望のホープが我が手駒に加わるという事実にはな。
我が魔法学院の豪華さ素晴らしさを見れば、すぐさまこちらに鞍替えすることは目に見えている。
冒険者ギルドなどのみすぼらしさとは比べ物にならんだろうからな。
そして、その希望のホープがついにやってきた。
期待以上の実力だ。
学院内の訓練場を経った一発の魔法で吹き飛ばしたのだから、凄まじい魔力だ。
凄まじすぎて腰が抜けるかと思った……!
だが予想以上に凄い!
あの希望のホープは思った以上に使えることだろう!
あれほど派手な魔法は宣伝にはもってこいだし、『魔法学院で学べばこんなこともできる!』と触れ回れば入学希望者も爆増することだろう。
何としてでも我が手に収めなければ!
この希望のホープを!
そのためにはやはり、この私の最大の武器……話術によってあの希望のホープを懐柔するのがよい。
一旦ヤツらと離れて……魔法の知識を注ぎ込む!
……これでよし。
座学にて我が知識を披露すれば、あの期待のホープからの尊敬を得られることだろう。
期待のホープよ、お前を我が愛弟子として末永く可愛がってくれようぞ!
ドゥフフフフフフフフ!!
と思い、魔法の歴史から滾々と説いてきたのだが……。
なんだ?
次から次に横やりを、一体何を言っている!?
「この学院の他にも既に魔法を教えている学校はある。魔法薬学は、魔術魔法法術魔法に並ぶ世界の三大魔法の一つ。それを教えるマーメイドウィッチアカデミアは人魚国そのものと共に数百年の歴史を重ねてきた伝統ある学校だ」
なぐッ!?
いや、我が魔法学院こそが史上初と言っておいた方が感動が伝わりやすいと思って……!
「人魚族の魔法薬学。それに人族の法術魔法。最低限この三つを網羅しておかなければ、魔法の教育機関を名乗る資格はないのではないでしょうか?」
何を言う? ……魔法といえば魔族の魔法がすべてではないか?
「大地のマナを著しく傷つける教会式法術魔法は廃れましたが、それら問題を改善した新法術魔法と呼べるものが存在している見よ! ハァアアアアアアアアアッ!」
ズバゴッ!?
ひえッ? 彼が拳を突き出しただけで向こう側の壁が突き破られたッ!?
ただのバカ力では!?
何なんだこの小僧は!?
私の知らないことまでペラペラと喋り出して?
まさかコイツ……!?
魔法の実力だけじゃなくて頭までいい?
くそ、厄介なのが出てきおった。
こういう小賢しいのが一番扱いにくいのだ。『それってアナタの感想ですよね?』で何でも論破できると思いやがって!