軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1262 土いじり

結局その後、アードヘッグさんは他の竜たちに宣言した。

「我々は、これから他種族と平穏な付き合いをしていくためにも種族としてのまとまりを持たなくてはいけない。一部のはねっ返りの言動もまた種族全体の落ち度となる。それをおれは皇帝竜として許すわけにはいかない!!」

「きゃー! アードヘッグ、カッコいいわ!」

隣でブラッディマリーさんがはしゃいでいた。

竜たちは自分らをまとめるためのルールを創っていくことを合意。

「竜の王国は?」

「とりあえず今は各自で連絡を取り合うだけでとどめておくのがいいんじゃないですかね?」

ただでさえ今まで自由気ままにしてきた竜たちだ。

ルールを課されるというだけでも慣れないことなのに、それ以上に国家単位でまとまるなどという拘束は過剰なストレスになるだろう。

現時点では『他種族と不用の軋轢を生まない』というルールだけを遵守させるにとどめる。

それだけを決定して、その日は解散していった。

「詳しいルール作りは専門家たちに協力してもらおうと思います」

「「「うッ!?」」」

それを聞いて息を詰める魔王さんとアロワナさんとリテセウスくんだった。

ただでさえ忙しい人たちがさらに用件増える。

そうして竜たちの騒動は終わりを迎えた……。

* * *

そして、農場国の方でも動きがあった。

これまでは人の住めるスペースを確保するために、木を伐って伐って、伐りまくってきた。

おかげさまで平地は広がり、家を建てられる地形も増えてきた。

しかし作業はそれで終わりにはならない。

人はそこに存在するだけではダメなのだ。

生きていくために継続していくために、様々なものが必要になってくる。

その中でもっとも重要なもの、食物。

これまで食料の類は各国の援助で送られていたもので賄われていた。

農場からもいくらか送り届けられていた。

しかしこのままではいけない。

自分の食い扶持は自分の手で。自給自足ができてこそ一国として自立できる。

我が農場国も自分で自分の食料を生産ができるようにならなくてはならない一日も早く。

そういうことで、これからはその話となっていく。

俺は現地にて、開拓者たちを集めて言った。

「えー、キミたちにはこれから開墾してもらいます」

いや、木を伐採して平地を作っている時点でそれも一つの開墾と言えるんだが。

「土を耕し、フッカフカにした上で肥料を撒き、とても栄養ある土地にするということです。そうなった土地に種を撒けばすくすくと元気に育ちます」

何の種を撒こうというのだね?

お花?

いやもちろん違う。

野菜や果物。そういう実や根や葉っぱを口に入れてお腹いっぱいになれるもの。

そう言ったものを育てて我が国の自給自足を確立させようというのだ!!

もちろんお花も眺めて心が豊かになれるがな!!

「伐採が進んで、田畑として利用できるスペースも確保できるようになりました。しかしそれが最終到達点ではない! 通過点にすぎぬ!!」

開けたスペースに田畑を作り、作物を育て、収穫して、そして我が地の住民を満たせる食物を生産すること。

それこそが到達点だ!

「というわけで頑張って田畑を創作しようぜ、皆!!」

「「「「「「おー」」」」」」

一応返事が返ってきたものの、なんとも気が抜けてるな。

いか○やさんが聞いたら『元気がないもう一度!!』と怒鳴り散らしそうなぐらいのテンションの低さだ。

ん? どうした皆?

これからついに我らが領土で畑づくりができるんだぞ?

新しい段階に踏み入ることでテンションアゲアゲにならないものか?

そう思っていたら開拓者の一人がおずおずと告げてきた。

「いやあの……必要なのはわかるんですけど……!」

わかるけれど、なんだい?

「なんというか……、やることが地味というか……!」

あぁ?

地味? 地味とな?

「これまで聖者様がしてきたことが派手なことばっかりだったので……!」

「それらと比べるとどうしても見劣りするというか……いや、バカにしてるわけじゃないんすけれど……!!」

開拓者たちはそれなりに苦労も積んできたのでフォローも行えた。

むむむむむむ……!

そりゃまあ開拓地で彼らを迎えてから豪邸を立てたり鉄道を引いたり、ダンジョンも創造したりして目を引くこともしてきたけれども。

度重なる刺激が彼らの感覚を麻痺させて。

必要なこととはいえ、畑づくりじゃ興奮しない体にしてしまったのか。

しかし!

そこで挫ける我にあらず、ちゃんと今回も派手な要素を用意してあるわい!

民のやる気を引き出すことも為政者の大切な仕事なのだから!

「フフフフフフフ……そう言うと思って、俺は悔恨に当たってある特別な制度を施行することにした」

「制度?」

そう、今回の派手要素はそこだ。

俺が施行する制度とは……。

「墾田永年私財法だ!!」

「「「「「墾田永年死罪法ッ!?」」」」」」

字が違う。

説明しよう墾田永年私財法とは。

声に出して読みたい日本語ナンバーワンを張り続ける響きの素敵な言葉だ!

……ではなく。

奈良時代頃に実際発令された法律で、ごく簡単に言うと『アナタが作った田畑は永遠にアナタのものにできますよ』ということを認める法律だ。

これを現在の農場国で施行すれば……。

「すると……オレたちがここで開墾した土地は、そのままオレたちの土地になるってことですか?

そういうことだ。

「すげえええええええッッ!! そういうことなら、滅茶苦茶開墾してやるぜぇええええええッ!!」

「この辺の土地全部オレのもんだぁああああああッッ!!」

理解した途端に目の色を変えてゲンキンなことよ。

やっぱり暴利を得られるとなるとモチベーションが高まるものだ。

これこそ鉄道建設やダンジョンに匹敵する、開墾作業の派手派手さだ!!

……まあ、墾田永年私財法自体もそれなりに問題のある法律なんだが。

しかしその危険性を加味しつつも声を出して言いたくなってしまう墾田永年私財法の響きのよさが恐ろしい。

どっちにしろ墾田永年私財法は建国期の限られた期間のみの限定法にしておこう。

そう言ったわけで開拓者たちは喜び勇んで鍬を振るっていった。

畑づくりは、ただ土を柔らかくすればいいだけじゃない。

作物がしっかり育つために栄養たっぷりの土にしなければいけないんだ。

そのためにも土を耕しながら様々なものを混ぜ込んでいく。

卵の殻や砕いた動物の骨など。

それらが腐って分解され、重要な栄養素として土に吸収されるのだ。

この辺の土地も元は木々をニョキニョキ生やしていたので体力はあるだろうが、それでも自然のものなので理想的な栄養分布を保つためには人の手を加えなくてはな。

畑もまた、人の手が入った以上は人工物なのだ。

「聖者様! 畑ができた暁には何を植えるんです?」

「うむ……」

それは考えてある。

もちろん農場と同じ野菜を育てれば味はいいし輸入にだって繋がるだろう。

しかし忘れてはいけない。

農場で育てている野菜は俺が『至高の担い手』によって芽吹かせたもの。

実はそうやって育てた野菜からは種が取れないのだ。

何故そういう仕組みなのか?

いたずらに生態系を壊さないための神の采配なのか?

むしろそういうお陰で農場の品種が流出しなかったというメリットはあるのだが、そういうわけで農場国にまで俺の野菜を広めるのは気が引けた。

ここで俺が能力で野菜を育てていけば、この国全体がいつまでたっても俺に依存し続けていくことになる。

俺とて聖者などと言われているが、永遠に存在し続けられるわけではない。

きっと多分。

この国が、俺に依存し続けるのが当たり前となってしまったら、俺がいなくなる時がこの国の滅びだ。

そんな不健全な状態になるのは何としても避けねばな。

「そのために、これを用意した」

「おお!」

豆だ。

ただの豆と侮るなかれ、あのレタスレートのヤツが品種改良を重ねに重ねて完成した逸品だ。

アイツの趣味で、俺に頼ることなく俺の能力に匹敵する美味しさの品種を作り上げた!

恐るべき豆愛だ。

しかもギフトで作り上げたものじゃないので、当然種子は遺り次代へと引き継がれる。

レタスレートの情熱と愛が、この国の根幹を担うのだった。

豆なら栄養満点だし、主食としても担えそうだからな。

開墾された畑一面に、豆が実る日が楽しみだ。

……アレ? となるとこの国、レタスレートに乗っ取られることになるんじゃ?