軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1248 最高のエクスプレス

人族のベテラン領主ハイランズだ。

今日は鉄道列車なるものになる。

いよいよ乗車という段階で周囲は盛り上がっているようだ。

「まどぎわーッ! ボクまどぎわのるー!」

「よーし、じゃあパパ頑張って席とっちゃおうかなーッ!!」

何だろうこの和気藹々とした雰囲気は?

新しい技術の吟味というより親子観光という感じではないか?

一体鉄道列車とはいかなるシロモノなのか?

ここに来て一切リサーチなく現場に望む私。だって実際に試乗するんだからその時に色々知ればいいかなって。

でもある程度の予想はしている。

鉄道ということだから鉄ということが関係しているだろうし、列車という言葉も気にかかる。

なのでこのハイランズ予想では……。

きっと馬車を何台も繋げて列をなしているのだと思う。

もちろんそれだけの馬車を繋げると相当重量になるだろうから、通常の馬ではとても引けない。

そこできっと超重量でも軽々引き回すことのできるスーパー豪傑馬……もしくはモンスターの類を見つけてきたんだろう。

画期的とはその部分だというのが私の見解。

そして、盗賊の類から守るために馬車の表面を鉄で覆う、それが“鉄道”の由来ではないのかな!?

以上が私の鋭敏な頭脳から導き出された推測だ!

それでは、答え合わせといこうではないか!

「なんじゃこりゃぁあああああああああああッッ!?」

鉄!?

鉄で覆われているのは正解だが……!?

鉄そのもの!

全身くまなく金属で構成された鉄の獣!

獣?

いや生物なのか!?

いくつもの荷車が連結して列をなしている……という予想は当たったが……。

いや、これは荷車なのか?

大きさも長さも、予想というか想像を絶している!?

「ハイランズ殿、何を一人で悶えているんですか? 早く乗らないと出発時刻になりますよ?」

ぬおおおおダルキッシュめ、わかっておるわ!

いや乘るの!? どこから!?

このハイランズ何もわかってなかった!

こうなったら人の流れに逆らわず身を委ねれば自然と目的地へ……。

「ハイランズ殿、そっちは女子トイレですぞー」

やっべぇ!?

ここはもう見栄を張らずに、素直にわかんないといってダルキッシュに案内してもらおう。

……おう、ここが列車内か。

何だこの調度は!?

まるで王宮の一室みたいなんだが!?

「さすがに農場の技術が結集していると一級の文化水準ですな。……おッ、我が子よ窓際に座ろうな」

壁の一部がなんだか透明なのだが!?

これだと外の景色がよく見えるというか……走り出したぁあああああッッ!?

本当に走るのか、この鉄の塊が!?

外見からして、ちょっとした倉庫街みたいになっていたんだが!

どんなバケモノ馬だったら引けるのか……というぐらいに戦慄したんだが、走り出したんだからさらに戦慄!

一体どうなっておるんだぁーーーーッッ!?

……いやッいやいやいやいや……!

わかるぞ、ベテラン領主の私にはわかるぞ!

進むと言っても所詮微速なんだろう!

そうだ、こんな大きな鉄の塊が、馬車のような速さで進むわけがない!

人が歩くようなのそのそとした速度で進んで、巨体なりの載積量の多さで効率を稼ぐつもりなんだろう!

つもりなんだろう!?

ガッタン、ゴットン、ガッタン、ゴットン……。

ガッタゴット、ガッタゴット、ガッタゴット……。

ガタゴトガタゴトガタゴトガタゴトガタゴトガタゴト……。

ガガガガガガガガガガガガガガ……!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

むっちゃ速く走るぅうううううううッッ!?

私が経験したことのないレベルの速さなんだが!?

馬車どころか乗馬でめいっぱい走らせてもこんな速度にはならない!

しかもその速度を、この透明な壁越しから視認できるという!?

景色が溶けていく!

こんな現象が起こりうるのかあああああッッ!?

「ハイランズ殿! その席はウチの息子の席ですので、どうかご自重を……!」

あッ、すみません……!

ベテラン領主たる私が、取り乱してしまった……!?

しかしこの大きさ、この長さ。

さらには総金属製で重量も気が遠くなるほどあるであろうに、それを馬すらぶっちぎる速度で走らせるなんて!

何なんだこれは!?

私の常識が何もかも通用しないではないかぁああああッッ!?

* * *

そして、気づいた時には目的地に到着しておった。

というかここが目的地なのか?

「そうですよ、魔国のロンドメルトの街です」

魔国ッ!?

待て待て待て……いくら人間国側のサンチョウメの街が国境沿いにあるからって。

普通に徒歩より詣でけりとなったら数日は楽にかかる道のりだぞッ!?

それを……一日もかからず!?

移動中も快適だった。

車窓から流れる景色を子どもらと一緒にキラキラした目で眺めたし、あと車内で食べたエキベンなるランチも非常に美味しかった……!

こうして実際に乗ってみてわかったが、鉄道列車というのは周囲が湧きたつほど素晴らしいものだ。

こういったものが我が領で走るようになれば物資の運送、人の移動などが劇的に円滑になり、それこそ世界が変わるであろう!

是非に! 是非にこの鉄道を我が領に、導入を!!

「えー、皆さま鉄道の旅は楽しんでいただけましたでしょうか?」

「おッ、リテセウス大統領だ」

おッ、よく見たら細長い鉄の管みたいなものは二本並んで伸びているな。列車はこれに沿って走るのか。

なるほど、だから“鉄道”というんだな!

「鉄道が、我々の生活に革命をもたらす技術だということはご理解いただけたと思います。その上で、さらなる躍進を遂げるための重大プロジェクトをこの場で発表いたします!」

執事や息子らが乗りたがっていた気持ちもわかるな。

それを押しのけて私が乗ってしまったんだし、お詫びもかねて何かお土産を買ってやることにするか。

せっかく魔国まで来たんだから魔国らしい特産品でもないかな?

「この鉄道で、我が国の王都と魔国の魔都を結ぶことが、先方の魔王さんとの合意に至っております!!」

魔族まんじゅうとかないかなって……えぇええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!?

「この計画が実現すれば両国の距離はぐっと近づき、人員の交流、商売取引の促進でもって二国の関係はより深まることでしょう! それにつきまして、これから路線が敷かれることとなる土地の領主さん各自に交渉が行われることとなると思います。その際は何卒よろしくお願いします!」

なんだってぇええええええッッ!?

もし!

もしも、その線路が我が領を通ることになれば、この恐ろしく速くて積載量も半端ではない鉄道列車も我が領内を走ることとなり……!

いや、この鉄道列車が一旦我が領で止まり、人や荷物を乗せたり下ろしたりするようになれば……。

利益は計り知れない。

だって王都と魔都に直通で行き来するんだぞ!

領主アイランズ脳、フルドライブ!

我が領と、王都と魔都の位置関係は……!

大丈夫!

ちょっと直線状からズレるかもだけれど充分に修正範囲内!

「後日、交渉の打診を受けた際は快く応じていただければ……!」

「大歓迎! 我が領は路線開通を大歓迎します! どうか我が領に駅を!!」

「えええええええええええええッッ!!」

我が領の興廃、この交渉にあり!

絶対に譲らん! 我が命に代えても王都と魔都を結ぶ線路を我が領に引き込むのだぁああああッ!!

「待ってほしい! ハイランズの領は王都と魔都を結ぶ線から見て南にズレすぎている! 線路なら是非とも我が領へ!」

「お前の領は高低差があって線路を引きにくいだろうが! 我が領は平野部で工事は簡単と思われます! 是非ともう我が領へ路線を!」

「我が領を選んでいただければ、お礼として大金を包ませていただきます!!」

「「「「「それ賄賂な!!」」」」」

ぬおおおおッ!?

私の他にも、なんとしてでも路線を自領に引こうとする輩共で溢れかえっている!?

そりゃそうだわな! こんな大儲けとわかっている案件見逃すわけがないわな!

しかし競争率が高いからって怖気づいていられるか!

チャンスは誰の目の前にも表れる! 掴み取るなら今!

ずわりゃあああああああああッッ!

「ウチは辺境だから関係ないなー」

このダルキッシュの野郎のんびりしやがって!?