作品タイトル不明
1181 精霊王を求めて
というわけで世界の危機に対処することとなった俺ら。
その元凶とみなされる精霊王を探し求めることにした。
この世界の運行に直接関与する精霊。
その精霊たちの長、精霊王。
そんな超越的存在が世界のどこかにいるという。
で、具体的にどこにいらっしゃるの?
どうすればご尊顔を拝謁できんの?
それらの疑問を解消するところから始まっていくのだった。
まずは一番手近なところで大地の精霊たちに尋ねてみた。
『精霊王ってどこにいるの?』と。
「せい! れい! おー!」
「ですー!!」
いや……、そんな『えいえいおー!』みたいな語感で言われても。
「せいれいおうさまはー、この世界のどこにもいないですー」
「そして、せかいじゅうのどこにでもいるですー」
そして謎かけめいたことを言い出した。
普段から輪をかけて何を言っているのかわからない精霊たち。
見かねた先生が、さらに案をひねり出す。
『こういう時にこそ神に尋ねてみるのがよろしいでしょう』
そうか、神々だ!
精霊王という概念の判明で益々この世界のために何してるのかわからなくなったアイツら!
しかし世界の管理者を自称してるんだから問題があった場合に対応ぐらいはしてくれるだろう!
早速、先生にお願いして神と対話を試みた。
『召喚! にゃむにゃむにゃむ~!』
相変わらず適当な詠唱で、神を呼び出す先生。
そして現れた冥神ハデス。
『ぐぉあああああああッッ!? このタイミングでッ!? 次の次の次で余の順番が回ってくるというのに!?』
何故か、召喚されたそのタイミングで取り乱しているハデス神。
お取込み中でしたか?
『今年の年商はなんとか余がトップで切り抜けられそうなんじゃあああ!! もう少しあのオーディンのヤツにキングボンビーを擦り付けられればああああ!! しかし 聖者に呼び出されたというなら致し方ない! 用件ならできるだけ手短に済ませていただきたい! ごはんなら大急ぎでかき込むぞ!!』
ご馳走するために呼んだんじゃねえ。
アナタたち神はいつだって欲望を優先させやがって。
埒も開かないので早々に用件を伝える。
『は? 精霊王?』
ハデス神は拍子抜けを食らったような顔で……。
『ヤツかぁ……精霊王は、余らとはまったく管轄違いの存在だからなあ。同じ超越者でも。だから直接通じるラインは持ってないし……いや、余らが一方的に嫌われてるってわけではないんだぞ、マジで』
そう改めて念押しされると余計に疑惑深いんだが。
『だから別系統の余らよりもやはり同類に聞く方が効率いいのではないか? ほら、お前たちのところは余の祝福によって精霊たちとも言葉を交えられるだろう?』
そりゃ、まず一番最初に大地の精霊に話は聞きましたけれども。
しかし彼女らとでは致命的なところで意思疎通がですね……。
『せいれいおーとまっぴんぐですー!』
『せいれいおーしゃんびゅーですー!』
このザマで。
それを見届けてハデス神。
『何も大地の精霊だけが精霊ではない。精霊は森羅万象の霊格であり、自然の様相の数だけ彩異なる精霊がいる。全精霊の元締めである精霊王に会うのだ。その一面に過ぎない大地の精霊だけでは到底足りぬと言えば納得できるのではないか?』
ハデス神のいちいちもっともな指摘に頷く。
なんだ、色々あったが結局はためになるじゃん神様からの助言。言い換えれば神託。
『というわけであとの詳しくは精霊たちに聞いてくれ。余はみずからの戦いに戻る! うぉおおおおおッッ! 熱海の物件はすべて余が買い占めるんじゃぁあああッッ!!』
と叫びながらハデス神は神界へと戻っていった。
精霊に聞いてみる……か。
真っ先に思い当たる大地の精霊たちには既に聞き取りしてどうにもならないということが判明しているからな……。
「せいれいぴょいですー!」
「ずきゅんどきゅんはしりだせいれいですー!」
以上のような感じだ。
しかし冥神ハデスは仰った。
大地の精霊は、森羅万象たる自然の一面に過ぎない。そのすべてを統括する精霊王まで行きつくのに大地の精霊だけではピース不足、ということか。
『古来より言われています。自然のありようを表するにもっとも基本的な四要素』
先生が仰る。
おお、アレですな! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!
『それはまた別の概念です』
地水火風!
たしかにゲームでも、精霊はこの四種類でワンセットだからな!
俺たちのお馴染み可愛い大地の精霊は、その中だと地属性に当てはまるだろう!
誰だ地属性は不遇とか言ったの!?
大地の恵みは、俺たち人間にとって必要不可欠なんだぞ!!
「つまりオレたちは外の三属性と何とか交信を試みなければならないということか?」
火と水と風。
これらの精霊から話を聞いて、すべての情報をパズルのように掛け合わせることで所在不明の精霊王の居場所なり、交信方法がわかったりするのかもしれない。
それこそゲームのように!
クエストスタート!
しかしそう考えると一つ目の条件は既にクリアしている状況はありがたいぜ!
『四属性のうち、既に一属性とは意思疎通しているのですからな』
「いしのそつうですー!」「だいちだけに、いしなのですー!」
で、他の精霊とどうやって交信していけばいいのだ?
大地の精霊みたいに実体化してくれないのかな? ハデス神の残した不思議パワーとかで。
『ハデス神の祝福を受けているこの土地はたしかに特殊ですが、元が大地を司る神の効力ゆえに他属性には及びづらいですからなあ。しかしまったく及ばぬというわけでもありません。神の祝福があるだけで、この地は比較的精霊の言葉が聞こえやすい区域ともいえましょう』
そういうものか。
可能性はあるということだな。
では様々な属性の精霊との交信のために模索していこうぜ!
続き先生にご意見を窺う。
『人と精霊が交信するためには、自然に近しい心が必要です。重なる思いがあってこそ気持ちとは通じ合うものです』
自然と通じ合う心……。
あれか? ラララランランラン♪ というヤツか?
そんな宮崎チックな心境を持つ人が我が農場にいるかどうか、となればなあ……。
「その役目! 私がもらった!!」
おおうッ!? なんだ!?
……エルフのエルロンじゃないか?
どうした、今日の仕事は終わったの?
「自然と通じ合う心! それこそ我らエルフに打ってつけではないか! エルフは森と共に生き、自然に寄り添って生きてきた種族! 誰よりも自然と心を通じ合える自信がある!!」
エルフ全体はそうかもしれんけれど、エルロンは元盗賊だろ?
チャキチャキの街エルフじゃん。
そんなキミらが自然と心通じ合えるの?
「大丈夫だ! 私たちはこの農場の生活において充分に自然と接してきた。農場暮らしも大分長いからな! もはや普通のエルフよりもずっと自然に通じるエルフと思ってくれていい!!」
通常のエルフは、それこそ生まれてからずっと自然と接しているわけだが。
『それに、別の問題もありますのう』
先生が言う。
『たしかにエルフが、自然と共に暮らし、もっとも自然に近い心根を持っているという主張は正しい』
「そうだそうだ! さすが先生、よくわかってらっしゃる!!」
『さらに詳細に言い表せばエルフは森に行き森と一心同体の種族。それを地水火風の四属性にあてはめれば、その属性に近いかといえば地属性でありましょう』
たしかに。
森は大地の上に生い茂り、大地の養分で繫栄しているわけだし。
森に生きるエルフたちにもっとも近い属性は、地属性でファイナルアンサー。
そして当の地属性は……。
「ちぞくせーは、ダテじゃないですー!」
「ためされるだいちですー!」
あのように精霊本人が実体化していて、今更取り立てて交信する必要はない。
……。
……あの、間に合っていましたということで……!
「だッ、大丈夫だ! 我らエルフはエコロジー! 心を集約させればきっと水属性や風属性とも心を通じ合えるはず! だってエルフは自然と一心同体なのだから!!」
そう言って念じだすエルロン。
「ふぉぉおおおおおおおおッッ! 自然よ我と通じたまえぇええええええッッ!!」
あの執念的に、太古の邪神と交信できそうな気がするんだが。
しかしエルロンの思いが通じたのか。
何もなかった虚空に、何ぞやかが集約しだし、一つの物質として結合する。
何かが姿を現した。
「炎の精霊です」
「は?」