軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1179 最強の非チョコミン党

てな感じで我が農場で流行りだしてから数日後……。

変わった客が訪れていた。

神だ。

しかも女神。

地母神デメテルセポネが、先生に召喚されて急遽農場に降臨なされていた。

『…………』

……あの?

しかしデメテルセポネさんは召喚後一言も喋らず、何やら雰囲気がピリピリとしている。

それが異様にその場を緊迫させた。

デメテルセポネ女神がこのような緊迫感を出すなど、これまでにないことだ。

女神は、この地上に萌えいずるあらゆるすべての母……大地母神の特性として、その性格はおっとり穏やか。

彼女の夫であるハデス神と一緒に召喚されるときも常になだめ役に回っていた。

そういえばいつも大抵セットで召喚されるハデス神もいない。

これまた珍しいことだ。

あれもこれもイレギュラー尽くめで一体これから何が起ころうというのか?

息苦しくてやめてほしいんだけども。

『夫は今、王級貧乏神に取り憑かれて泣きわめいております。だから地上の出来事にも目が届いていません。私にとってもその方が都合がいいですので……』

はあ……?

何の話だ? 冥界神に貧乏神が取り憑くって事象的にあり得るものなの? あったとして簡単に祓えるものじゃないの?

そして相変わらずデメテルセポネ女神の雰囲気もピリピリしていて息が詰まる。

「して、今日はどんな御用で?」

息苦しさから逃れたくて、ついこちらから話題を振ってしまった。

もしかして、また何か食べ物をご所望ですか?

何かスイーツでも?

ならばちょうどいい、つい先日開発された最新お菓子が……!

……いやでも人を選ぶか、アレは……!?

『聖者さん、何やら新しいお菓子を作ったそうね?』

!!

もしやそれを聞きつけて神界からいらっしゃったんですか!

何と耳聡い!

デメテルセポネ女神のアンテナ感度に驚きつつも同時に俺は嬉しい気持ちになった。

まさか女神様みずからチョコミントを求めて降りてくださるとは!

召喚されてまでチョコミントの話題を出すってことはそう言うことだろう!?

神々の間にもチョコミン党はいるんだなあ!

同志が増えたこと、この聖者心より歓喜いたしますぞ!

『……ミント嫌い』

は?

『勘違いしないで。私は神罰を下しにきたのです。ミントという、もっとも罪深い作物をお菓子に使いし大罪に。聖者さんアナタのことは見込みがあると思っていたのに残念です。このような裏切りを神にしてのけるとは……!』

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

ここに来てデメテルセポネ女神の怒りのボルテージが上がっていく。

さっきまでは息苦しいぐらいで済んでいた周囲の空気もビリビリひりつき、充満する気配の正体が怒気だということもハッキリわかる。

なんで?

いや、ここまで来た以上は明確だった。

デメテルセポネ女神はミントが大嫌いだったのだ!

だからミントで菓子作りをした俺に腹を立て、降臨してまで糾弾したのだった。

神すらもここまでキレさすほどのミント!

好き嫌いが分かれると言っても、ここまでのことだったとは!

「ままま……待ってください! デメテルセポネさんもミントのスーッとする感じが嫌いなんですか? それとも歯磨き粉の風味ですか?」

何度でもいうがミントが歯磨き粉なんじゃない。歯磨き粉がミントの風味なんだ!

さらに言うなら歯磨きをしやすくするためにミント風味をつけるんだから、ミントがなかったら歯磨き粉なんてとても口に入れられるようなシロモノじゃないと思うんだ!

つまり俺たちは歯磨きをする時、常にミントに助けられている、ということ!

それなのにミントを歯磨き粉呼ばわりして嫌うのは忘恩の徒だと思いませんかね!?

『そんなの知ったこっちゃないけれど』

え?

『わかっていないようね聖者さん。私がミントを嫌うのは、もっとちゃんとした理由あってのことよ! 私の話を聞けば、アナタだって私の訴えの正当性をわかってくれることでしょう!!』

はあ、これは……話を聞く流れですか?

まあ他に選択肢もなさそうだから黙って聞くけどさ……。

『まず言うべきことは……私の夫、冥神ハデスはとてもいい神なんですのよ。私は女神ではありますが、いい夫に恵まれたと今でも身に染みて思います』

はい?

いきなりのろけ話ですか?

『だって、この世界の男神たちなんて大抵浮気上等のクソ野郎どもですよ。ゼウスは一番飛び抜けたクズですし、同格のポセイドスだってベストオブクズには及ばないもののそれなりに女をとっかえひっかえしてきた見下げ果てたヤツです。それに比べてウチの夫は……』

デメテルセポネ女神。

ほう、と吐息を漏らし……。

『誓いの式を上げてからずっと私一筋。他の女など目に入れずに私だけを愛してくれたわ。根が真面目なのよね。大地の統括だけじゃなく冥府の管理もしているし、これだけ大変なことゼウスやポセイドスには絶対真似できないわ。地味にコツコツするところも私の好みだし……』

とダンナ自慢が続く。

これがミントとどう繋がるんだ?

『でもそんなハデスがね……一回だけ浮気したことがあるのよ。メンテーっていう名前のニンフなのだけれど。まあ綺麗な方じゃなかったかしら? ハデスが一瞬……明らかにいつもと違う目つきであの女の姿を追ったのよ! これはもう完全な浮気よ!』

……。

えッ?

まさか目を奪われただけ!?

それだけで浮気って厳しすぎません!?

いかんなこの地母神、ダンナがいくら純真一筋だからって浮気され慣れしなさすぎ。

こんなんでゼウスやポセイドスの奥さんどもから窘められたりしないのか?

『しかもそのニンフがまた憎たらしいヤツで……!「サーセン地母神様、私のおっぱいが大きいばかりにぃ」とかこれ見よがしにブリッ子しやがってぇええええええええええッッ!!』

過去にあった出来事であろうことをついさっきのように怒りだす。

こうやって思い出すたびに怒りを重ねているんだろうな。

……で。

この話がいい加減どこでミントに繋がるんだ?

『そのメンテーが、ミントの精に当たるニンフだったのよ』

あぁ……。

『だから私は! ミントを見るたびにコケにされた記憶が甦って……! あぁあああああああッッ!! ムカつく! この世界からミントを根絶やしにしたい!』

季節外れのイチジクが実をつけないことにブチ切れて根絶やしにした人みたいなこと言わないでください。

しかしここまで辛抱強く聞いて、ようやくデメテルセポネ女神がミントを嫌う理由がわかった。

要するに個人的な恨みにうよるものだから、風味とか歯磨き粉とか関係ない。

純粋にチョコミントアイスの味を確かめてもらえれば、きっとその素晴らしさをわかってもらえるはずだ!

どうか女神よ!

チョコミントをイートイン!

『アナタ、この大地母神デメテルセポネに憎きミントを賞味しろというの? この……憎しみしかないミントを……!』

とデメテルセポネ女神は不快感をあらわにする。

しかし目の前にあるのはミントそのものではなくミントエキスを混ぜて作り、さらに粉々のチョコチップも混合したチョコミントアイスである。

彼女もウチで散々たかってアイスリームの美味しさはわかっているはずなので、食用にはあらがえずスプーンで一掬い、とったチョコミントを口に運んだ。

『…………!』

その瞬間、女神は感じとったであろう。

口から鼻へ突き抜けていく清涼感に。

『こんなッ! 今まで食べたどのアイスとも違う! ミント成分とアイスの本物低温のダブルパンチで口の中が急速冷凍! そこへチョコチップの甘みがズドンとくる! 今までにない味だわぁあああああッッ!!』

ニヤリ、堕ちたな。

これで大地母神もチョコミントの虜、これでもうミントを根絶やしに使用などと物騒なことはナシだぜ。

『悔しい! でも美味しい! また私は、あのミント女に敗北するというの! うぅあああああああああッッ!!』

こうして俺の異世界ミントムーブ引き起こしは、一女神の脳を破壊したとことで総仕上げとなった。

美味しいチョコミント。

皆も食べようぜ!