軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1156 天使衝突

「お呼びとあらば即、参上! メチャイケキューティラブ天使ソンゴクフォオンとはあーしのことよー! マジ卍解!!」

あ、ソンゴクフォン久しぶり。

そういや聞いたよキミ、アレキサンダーさんところにお世話になってるんだって?

「聖者ちんもちょっと見ねー間にしょっぱくなっちまったよねー。どしたの? 歳食って潤いがなくなっちまったの?」

歳の話はするな!!

このギャル天使は……! 相変わらず会話が困難だ、人を食ってかかりやがって。

「ホルコスフォン! 救援要請! 同族なんだから扱いに手を貸して!!」

「断固拒否したいところですが、マスターの要請であれば致し方ありません」

そうだね快諾してくれて嬉しいよ。

そもそもコイツはキミの望みで復活したんだから少しはコイツを御するのに手を貸してほしい。

そもそも天使というのは数千年も前に一度滅びた存在だった。

それが時を超えて甦ったのがホルコスフォンとソンゴクフォンの二体のみ。

双方、世界を滅ぼしかねない力を持った、ノーライフキング&ドラゴンの世界に大災厄に並ぶ三つ目の災厄というべきもの。

「ソンゴクフォン、相変わらず終始何も考えていないようなお気楽ぶり、天使の品位を落としますね」

「えー? 今や天使ってあーしとアンタの二人きりだしー、残されたあーしらがどう振る舞ってもビッグデータになりえないじゃないすかー?」

「わたくしたちの振る舞いがそのまま天使のイメージになるのです」

大変だなあホルコスフォンも。

厄介な手のかかる妹を持ったような気分だろうか?

「とにかく……アナタは何の目的があってマスターを煩わせるのでしょう? マスターは本日大役を果たして大変お疲れなのです。世迷言は控えなさい」

キミもあんま人のこと言えないよね?

物産展の終了ギリギリに突入してきたレタスレートを補佐してたのはキミだよなホルコスフォン。

「世迷言じゃねーし! あーしもマスターのためになることを、いっしょーけんめー実行してるだけだし! なんせ今のあーしのマスターはアレキサンダーだからな」

「え? そうなの?」

マスター本人がビックリしていますが?

ちなみにホルコスフォンが言う方のマスターは、俺です。

「アレさんは、自分のダンジョンに客が来ねーことに不安がってんの! だからあーしが『宣伝すればいーじゃん?』ってアドバイスしてあげたっつーの!」

「つまり事の発端はアナタですか……!」

マスターのことを即刻『アレさん』呼ばわり。

「じゃあ『アレクさん』の方がいい?」

やめろ。

機械が反応する。

それにアレキサンダーさんなら『アレキさん』だろうが、『キ』。

「このようなあーしの綿密な計画の末にここまで来てやったんだから、少しは融通利かせてくれてもいいじゃん! りんきおーへん!」

「ソンゴクフォンよ、これくらいにしておこう、な? 無理を言っているのはこちらなんだから、相手を困らせてはいかん……!」

アレキサンダーさんの方がオロオロしながらソンゴクフォンを諫めるほどだった。

物産展はもう本格的に終わって解散ムード漂っているが……しかしこの新たに始まったイザコザに人々も興味が出たのか、撤収の手を止めて見物に集まっている。

最初にアレキサンダーさんがドラゴン姿で飛来したからな。

人々の注目を集めるのには充分だ。

「あー、いいこと思いついたし!」

ソンゴクフォンがほざいた。

しかし『いい考えがある』とか言ったヤツの考えが、本当にいい考えだったことなどあったためしがない。

「勝負しようぜ!」

「勝負?」

『デュエルしようぜ』みたく言うな。

「そうそう、勝負して勝った方のいうこと聞くっていうのはどうよ? ホワイトブラック、ハッキリつけようぜ!!」

「アナタらしい、実に短絡的な結論です」

それを聞いてホルコスフォンが翼を広げた。

彼女の背中に備わった天使の翼を。

「ならば闘場に立つのは第一声を発したアナタであるべき、その相手を務めるのは同類たる私であるべき」

「お、盛り上がって来たっすねー。一回試してみたかったんよねー。どっちが強い天使か」

「わかりきりすぎて証明の必要もないと思っていましたが、そこまで敗北を味わいたいというなら付き合ってあげましょう」

ホルコスフォンとソンゴクフォン。

二人の天使が空へと上がる。

物産展の参加者たちは地上から『お? なんか始まったか?』とばかりに天を見上げるのだった。

あの超巨大大豆と純白竜を見たあとだともう大抵のことには驚けない。

「マナカノン、発射!!」

「マナカノン、ふぁいやー!」

双方、天使の基本兵装でまずは撃ち合い。

光の軌跡が飛び交って、流星の雨が降るかのようであるが、地上の人々にとっては物産展の後夜祭みたいなものになっていた。

天使たちは持ち前の飛行能力で天空を駆け巡りつつ、一進一退の攻防を行う。

「ヘイヘイヘーイ! 空を飛ぶのにいちいち大げさな翼なんか出しちゃって! もっとスマートにやれないもんかねー!!」

ソンゴクフォンは、天使の象徴ともいうべき翼をもたずに、それでも空中を滑るように飛行する。

翼がないのに、じゃあなんで天使なんだよ? ともわないでもない。

「あーしは天空の神ヘパイストスから改修を受けて、あちこち新機能を搭載されてんだよー! 攻撃、防御、機動性すべてにおいて効率化ができている! 旧式のアンタに勝ち目なんかあるかねー!?」

「改修を受けることだけが改善の方法ですか?」

ホルコスフォンが空中を舞いながら受けて立つ。

「わたくしが四千年の眠りより覚めてから、幾年の年月が流れました。積み重ねた経験や知識は、わたくしのプラスとなって全身に息づいています。マスターやレタスレートと過ごした日々や、想いが、わたくしを成長させている」

「ぐぬえッ!?」

あッ!?

一瞬前まで空を自由に飛んでいたソンゴクフォンが、いきなり止まった!?

何かに無理やり拘束されたように!?

「無造作に飛び回りすぎです。アナタは今まで同格以上の相手が仕掛ける、狡猾な罠にはまった経験はないようですね」

「げぇええええーッ!? 何だこの……糸?」

糸だと!?

たしかにソンゴクフォンの全身に、細い糸がまとわりついている。しかも何重にもグルグルグルグル巻かれて、あれではもう自由に動けまい。

「アナタは空を支配しているつもりで、わたくしの領域に誘い込まれていたのです。アナタの知らぬ間に『納豆糸』が張り巡らされた魔の領域に」

納豆糸ッ!?

ってもしや、パック納豆からビニールを剝がしたときにうにょーんと伸びるアレ!?

あれはまあ、納豆表面で増殖する粘菌が生み出した糸で、たしかに知らないうちに手先にまとわりつくことはよくあるけど……。

それで敵の動きを封じるなんて聞いたことないけど!?

しかも相手は天使だよ!?

「我が天使力で強化された納豆糸は、鋼鉄よりも強く、絹よりもしなやかに伸びる、いかにアナタでも脱出は容易ではありませんよソンゴクフォン」

「うええええええッ! きたねえええええッ!」

「……その一言がアナタの命運を決めました。一撃で仕留めさせていただきますよ」

ホルコスフォン、手にした砲身をかまえて、照準をしっかり定める。

「マナカノン、全力照射!!」

「うげはぁあああああああああああッッ!?」

雁字搦めになった納豆の糸もろともソンゴクフォン、マナカノンをまともにくらって吹っ飛ばされた。

「安心なさい、峰打ちです」

峰打ちか。

ほな大丈夫か。

ホルコスフォンvsソンゴクフォオンの天使対決は、我ら農場のホルコスフォンが快勝で幕を閉じた。

地上から送られる拍手と歓声。

すっかり後夜祭の余興と化しているのだった。

「慢心しましたねソンゴクフォン。かつてアナタは人魚の方々と長い旅路をたどった。その時の気持ちをもってすれば、こうも簡単に負けることもなかったでしょうに」

「ぐぐ……ちきしょー……!」

「遊興に耽りすぎたのが仇となりましたね」

年長の貫録を見せつけるホルコスフォンであった。

彼女は現世に復活してから弛まず、相棒レタスレートと納豆への愛を積み重ねてきた。

その年季が掴んだ勝利といえよう。

これでソンゴクフォンの無茶な要求も無効となり、物産展も無事終わらせることができるはず……?

「まだだ! まだっすよ!!」

しかし相手はしつこかった。

マナカノンの直撃でプスプス言ってるくせにまだ元気が有り余っているソンゴクフォン。

「三本勝負! 三本勝負にしようぜ! ホルコスの姉貴が勝ったから農場チームが一点リードね!」

「何を言っているのですかアナタは……?」

本当にね。

自分が不利になってからの後付け変更ホントにやめろ。

「三本勝負など……何度戦ってもわたくしの勝ちは揺るぎませんよ」

「えー? あーしらが戦うなんて誰が言ったっすかー? 先入観に囚われるのは歳食った証拠っすねー?」

「コイツ……!?」

ダメだホルコスフォン挑発に乗るな!

しかしこのアホ天使は何が言いたいんだ?

「ちょうどよくあーしらのチームとそっちのチームで、世界最強の種族が揃い踏みじゃないすか。その代表で戦う三本勝負ってのはいかがっすかー?」

境最強の種族、それは……。

天使。

ノーライフキング。

ドラゴン。

……ってことか?