軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1051 気配りの王女

観客の勇者モモコです。

SASUK○よ!!

○ASUKEだわ!!

まさか異世界でSAS○KEが開催されているなんて!

思ってもみなかったわ!

こっちの世界じゃ現代に通用するものは何一つないと思っていたんだけれど、そんな中でも現代に匹敵するお祭りがあったのね!!

しかし完全にS○SUKEと同じではなくて、それなりにオリジナリティがあるのも高評価だわ!!

オークボ城ということで、城攻めをモチーフにして巨大な敵情を攻めとるためにいくつもの難関を乗り越えて行こうってことなのよね!

今までにない斬新な発想だわ!!

「あッ、見てくださいモモコ、頭一つ抜けた集団がいますよ」

豆をポリポリやりながら観戦は続く。

周囲より速い速度でアトラクションを越えて、先へと進む集団がいるようね。

物凄い形相の男たちだわ。

勝負にかける執念が違う、さすがSA○UKEは出場者を駆り立てるのね!!

「先頭を走っているのは……我らが魔王さまです!! さすが魔王様! いかなる場所でもナンバーワンをとる!」

え?

……アレが魔王!?

あのいかにも人のよさそうなオッサンが!?

腹回りも何だかでっぷりしていて、厳つくはあるけどどこにでもいそうなオジサンじゃないの!?

「魔王様も、旧人間国を平定なされてから五人の御子に恵まれましたし、名君として安定していますよね。最近は体型も恰幅が出てきて、ますます威厳も増した様子。年齢も年齢ですしね」

それってただの中年太りじゃ!?

しかしあの中年太りのオジサン、太い割りにキレのある動きだわ!!

機敏に落石をかわしていき、怒涛の勢いで駆け抜けていく!

「魔王様も一旦太り始めてから減量に成功したことがあると聞きますからね。たとえ恰幅ある肉体になったとしても、激戦時に振るわれた強さは健在ということでしょう」

動けるデブってことね!?

きっとあの厚い贅肉の下には、今なお強靭な筋肉が潜んでいるに違いないわ!!

しかし私勇者なのに、ここまで来て最初に見た魔王があんな感じってどうなの!?

そんな幸せ太りのオジサンの横で、競い合うように隣を駆けていく逞しい男性がいる。

何ていうのかしら……暑苦しいながらもどこか清涼さを感じさせる……サーファー風?

「あれは、人魚王アロワナ陛下ですね。魔国と並び立つ大国の長。今や魔王様と二人合わせて世界最重要人物といっていいでしょう」

人魚!?

この世界に人魚がいるの!?

でもアレ? 人魚って言ったら下半身が魚じゃないの!? あの人普通に二本足で走ってるんだけれど!?

「人魚の世界では、飲むと地上人に変身できる薬があるそうです。薬の製造が盛んな国で、魔国や人間国より遥かに進んでいるそうです」

へえええ……。

この世界に人魚がいるなんて私全然知らなかったわ。

この世界にやってきて随分あるけれど、まだまだ知るべきことが多いわね。

……あッ、向こうの方にも注目が集まっているわ!

あれは……人間じゃない!?

オークとゴブリンだわ!

モンスターまで出場できるの異世界のS○SUKEは!?

しかもあのオークもゴブリンも、尋常じゃない動きをしているわ!

彼らの活躍は、新たなエリアで発揮された。

落石エリアを抜けた先……。

第三関門というべきかしら?

そこでは妨害役と思しき……何アレ!? 気持ち悪い!?

モンスターとも人ともつかないナニカが蠢きながら選手に襲わんとしている。

勇者冒険者として長年モンスターと戦い続けた私にも異質に映るわ、あの生命! ……生命?

かどうかもわかりづらい!!

アレは私的には“妖怪”にカテゴライズしたいわ!

ぬっぺふほふ的な感じの!

「あれも人魚国の薬学魔法で作り出された疑似生命体でホムンクルスというそうですよ。あんな自立稼働型の使い魔を発生させられるなんて、やっぱり人魚国の魔法薬は驚異の技術ですね!」

セレナがちょっと興奮気味。

……そういやこの子、魔法関係になると興味が迸りがちになるオタク体質だったわ。

そんな群を成して迫ってくるホムンクルス? とかいうの。

その集団に対し、前述のまずオークが立ち向かうわ。

「はぁッ!!」

オークは凄まじい覇気を出して空間を覆ったわ。

そしてホムンクルスどもは、その覇気に威圧されて動きを止めるどころか……、吹っ飛ばされた!?

物理作用まで引き起こす破棄!?

どういうこと!? 信じられないわ!?

さらにわけがわからなうのはゴブリンの方だったわ。

気がつたらもうホムンクルスのエリアを突破していた。

群れを成すホムンクルスの陣列には一部の隙もなく、アレを突破するには必ずどこかを押し広げるなりして強行突破しないといけないだろうに。

超スピードや催眠術みたいなチャチなものでは断じてない、もっと恐ろしいものの片りんを味わった気がするわ!

……異世界のSASU○Eも大分レベルが高いのね……。

主に参加者の方がだけども。

……ううむ、私も燃えてきたわ!

勇者であり冒険者であり女子レスラーでもある私のチャレンジスピリッツにビンビン来てよ!

「私もあのSA○UKEモドキに参加したい! 今からでも大丈夫なのかしら!?」

「サ○ケ? 誰ですそれは?」

セレナが訝しんでくるわ。

そうだった。異世界の人がS○SUKEを知るはずないものね。

伝わらない言葉を使おうなんて配慮が足りなかったわ。

まるで悪役令嬢モノでフラグとか逆ハーとかの語句を濫用する転生ヒロインみたいじゃない。

「えーと、SASUK○っていうのは年末によくやるスペシャル番組で……、ってそこはいらない説明だったわ! とにかく私が今から参加できるオークボ城はあるの? ないの?」

「それでしたら……、午後の部の参加受付がまだ締め切られてないんではないですかね?」

よっしゃぁあああああー!

ならば私も名乗りを上げるわよオークボ城午後の部に!

そして私も華麗にクリアして、アスレチックの女王の称号を得ようと思うわ!!

「モモコならそう言うと思いましたよ。アナタがある程度ノリと勢いで生きているのはこれまでの付き合いでわかっていましたからね」

セレナ!

「もう随分長い付き合いですからね私たちも」

そうよ!

セレナも一緒に出場してワンツークリアを目指しましょう!

「でもその前にレタスレート王女から呼び出しかかるんじゃないですか? お昼も売店大分混みそうですからね」

……そうだったわ。

私たち今日は、あの豆王女の手伝いとして駆り出されていたんだったわ……。

実際のところ『なんで私たちが?』という気がしないでもないけれど、一度引き受けたからには最後まで遂行するのが仁義ってものよね。

仕方ねえ!

また客足が賑わい始めるお昼、手伝いに行ってあげようじゃないの!!

と意気揚々豆売りコーナーへ戻ってみると……。

「アナタたちの仕事? 特にないわよ?」

ズコー!?

どうして!?

開催前あんなに込み合っていたんだから、昼だって当然込むでしょ!!

そして実際込んでいる!

「午前のオークボ城に出場してた人たちがね、午後からは手伝いに来てくれることになってるのよ。だから人手は足りてるってわけ」

ええー!?

じゃあ私たち午後から丸々暇になるってわけじゃない!

私たち半日働き!?

そんな中途半端にヒトを駆り出さないでよ!

「あら、私は緻密な予想の上に計画を立てたつもりだけれど? どうせアナタたちも出たくなったんでしょう? オークボ城に?」

!?

まさしくその通り……!

じゃあ、レタスレート王女、こうなることを見越して……!?

「大体見物に来た人は自分も走りたくなってくるものよ。遠慮せずに行ってきなさい」

王女様。

アンタってホントは凄い人だったのね!

こんなにも先が読めて、しかも気配りができるなんて!

「走る時はこの看板を首から下げて行ってね」

と言って渡された看板には『豆』と書かれていた。

……宣伝か?