作品タイトル不明
1048 究極オークボ城
そして冬……。
オークボ城の季節だ!!
もはや恒例の、皆が集まってアスレチックをクリアしていくイベント!
農場と世界中のもんなの触れ合いの日とも言ってよい。
今年も漏れなく開催するのだが、そんな今回は例年とまた違った意味合いを持つ。
出産ラッシュ直後ゆえに、いま世界中は浮かれまくっている。
お祭り騒ぎだ。
……え?
子育てという現実を目の前にしてそれどころじゃない?
それならなおさらオークボ城というお祭り騒ぎでしばし現実を忘れ去っていただきたい!!
そんな雰囲気の中で執り行われるオークボ城だ。
今年のオークボ城のテーマはズバリ『パパからママへの感謝』だ!
出産に死力を振り絞ってくれた女性。
そんな奥さんたちに対して男どもは特に何もできるでもなく、脇でオロオロする以外になかった。
精々『頑張れ』と応援することぐらいしか……。
だからこそ頑張ってくれた奥さんへの感謝を最大限伝えるためのオークボ城!
この困難な障害たちを乗り越え、勝利の座に上ることで奥さんたちの出産の苦しみを追体験し、大変さを分かち合おう! という企画なのだ!!
『そんなこたいいから少しは子育てを手伝ってほしい』という奥さんたちの声が聞こえてきそうだが、それはそれ。
子育てにもちゃんと参加します!
その上でのオークボ城!!
もちろん気分的なものだけでなく現実的な子育てサポートも今回のオークボ城には盛り込んだぞ。
毎年、オークボ城の全アトラクションを突破した選手には賞品が贈呈されるのであるが、その内容が育児応援一色であった!!
豪華賞品から一部を紹介しよう!
その一!
農場特製ベビーベッド!
農場で育てた上質の木材を使い、建築大好きオークたちと手先が器用なゴブリンたちが協力し、心を込めて一つずつ製作しました!!
寝心地よいのはもちろん頑丈で、たとえ隕石落下からでも赤ちゃんを完璧に守ります!!
頑丈である分長持ちもするので、今いる子が大きくなっても次の子を寝かせるのに役立ちましょう!
その二!
農場特製ベビー服!
農場が抱える一大服飾家バティがデザインし、製作にもかかわったベビー服!
今年はバティ自身も身重のため自分の子どものための服製作に傾倒したが、それでも彼女の創作意欲は噴出し、多くのベビー服が世に生まれた!
それらを一般に大放出!
俺や農場関係者に配り回ってもまだ大量に余るほどのベビー服を作ったんだからさすがのバティ!!
肌に優しいシルクを素材にしつつ、特殊な製法で夏は涼しく冬温かい理想の着心地を確立しつつ、今や魔国のトップデザイナーとなったバティの謹製だけあってデザインも抜群!!
その三!
農場特製ガラガラ!
赤ちゃんのオモチャは不可欠!
その代表格であるガラガラは、もっとも基本にしてどこの家にあっても邪魔にならない!!
赤ちゃんをリラックスさせるために最高の鳴り心地を追求して作られたこのガラガラ!!
研究にはノーライフキングの先生まで加わり、魔術付加されたことでガラガラの音色を聞けば荒れ狂うモンスターですら眠らせることができる。
ほぼ実質魔法のアイテム!
その他にも様々なベビー用品も用意しておりますが、中でも最大の目玉賞品がある!!
それがコレ!
紙おむつ!!
ファンタジー異世界には新概念となるであろう使い捨てのおむつが登場です!
清潔さを保つという点でおむつはやはり汚れるたびに捨てた方がいいというのは当然。
農場の製紙技術をフル活用し使い捨てにしても惜しくないコストでかつ、赤ちゃんの柔肌を傷つけない繊細な肌触りを目指した。
さらにはお漏らしをしっかり吸い取るように高分子ポリマーを……またこっちの世界にはない新物質を開発してしまった……!
これらの組み合わせで、紙おむつの品質は向こうの世界にも劣らぬものとなったはず……!
しかもこの紙おむつを……オークボ城全アトラクション制覇の賞品として贈るのではなく……参加賞!!
ただ参加しただけでプレゼントいたします!!
なんという太っ腹でしょう! 自賛!
そのためにオークボ城開催の今日に合わせて、総計4万の紙おむつを用意。
使い捨てだから、最低一組の家族に十は持って帰ってもらおうと思います!
それと同時に各国市場にも紙おむつを解き放つ!
安価で安定して供給できるように!!
このオークボ城は、そんな紙おむつをサンプルとして振舞える絶好の場所というわけだ!!
子育て応援企画!!
もちろんそれだけでは終わらない!
オークボ城はあくまでアスレチックイベントなのだから!
それに参加するお父さんたちは、なおさら情熱に燃えていた!!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
「父親の威厳を示す好機ぞぉおおおおおおおッッ!!」
「アラララーーイ!! アララララララララーーーーイッッ!!」
「父親としての興廃、この一戦にあり!!」
「天気明朗なれども波高し!!」
「昼間のパパはちょっと違うってことを見せてやるぜぇえええッッ!!」
参加する父親の皆さんも士気高揚だった。
毎回のことながら参加している魔王さんやアロワナさんは無論のこと、他多くのパパさんたちが子どものために、そして奥さんへの感謝を示すために戦場へと名乗りを上げた。
開催地の領主であるダルキッシュさんや、ギルドマスターであるシルバーウルフさんも、例年であればその立場を鑑みて出場を見合わせる。
しかし今年は迷いなしの参戦。
彼らも父親としてカッコつけたいのだ。
しかしそれ以上にレアなのが、オークボとゴブ吉だ。
彼らの出場は異例中の異例。
だって彼らは本来開催者側。これまでずっと企画を立案し、アトラクションを作成し、企画を進行することに尽くしてきたのだから。
そんな彼らが今回まさかの参加者側に回る。
その一事だけでも関係者一同を騒がせて充分なインパクトだ。
二人も父親となって、その覚悟を示す機会を探していたのだろう。
二人のオークボ城に懸ける執念は、これまでとは異なったものがあり、無論気炎も比べ物とはならない。
それこそ魔王のごとき威圧感を周囲に振り撒いている。
正真正銘の魔王さんは向こうにおられるが。
累計五人の子どもを得てすっかり威圧感より貫禄が出てしまっている。
そして何より俺だってやる気充分だぞ!!
よくぞ俺の子を三人まで生んでくれました!!
その感謝と『愛してる!!』という気持ちを、この一戦で表明するんだ!!
そのためには、他の出場者一人残らず薙ぎ倒す所存!
他の出場者たちも同じ心境だろうがな!!
……ん?
大会で優勝するよりもミルクやり替わってくれた方が全然感謝を感じるって?
それは毎日やってるじゃん!
もっと大々的に気持ちを示したいの!
そのために今日のオークボ城は絶好の機会!!
皆行くぞ!
父親魂を天地に向けて知らしめるのじゃああああああッッ!!
では開会の辞。
壇上に上がったのは農場オークの一人、オークラ。
今回はオークボが参加者側に回ったため、代理の登板だ。
「……えー、今回諸事情により主催、総指揮を務めますオークラです。つまり、今年に限りこの城はオークボ城ではなく、オークラ城」
ん?
「新生したオークラ城はさらに言うならニューオークラ城! 困難でラグジュアリーな障害で挑戦者の皆様を待ち受けよう! さあくるがいい! 父親の誇りをかけて! オークラ城は! すべての挑戦を力でねじ伏せてくれよう!!」
ちょっと野心が見え隠れしたような気が先でもないが、威厳を示そうとする父親たちの前に立ちはだかったニューオークラ城!!
相手にとって不足なし!!
力の限り暴れ回って、父親の愛がいかに偉大かということを示してやろうじゃないか!!
行くぞ父親の皆!
目指すはニューオークラ城の天守閣!
父親軍団出陣じゃぁああああああ!!