軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

103 餅つき

冬もたけなわ。

吹雪は吹くしクソ寒い。

雨どいにつららがぶら下がってたりする。

まあそれでも我が農場の住人たちは、各々独自の方法で冬を満喫しているようだが。

俺も負けじと俺自身の方法で冬を楽しんでみる。

まずジャガイモを雪の中に埋めた。

なんでそんなことを!? とシュール系ギャグみたいだが、こうするとジャガイモの甘みが増すらしい。

雪解けしてジャガイモが濡れる前に取り出すのがコツなんだそうだ。

あと雪キャベツなるものもあるらしいな。

同様に雪の底に埋めておくとめっちゃ甘くなるという。

こっちは土から離さず根付いたままにするそうだが、本当かたしかめるためにキャベツをいくつか収穫せずに雪に埋めてみた。

本当に甘くなるかどうか。

春を楽しみにしておこう。

あとヴィールの山ダンジョンで進行中の計画があるが、それはまだ未発表。

もう一つの冬のイベントに着目しよう。

* * *

「? 旦那様? 何しているの?」

俺が何かを始めたので、皆物珍しそうに寄ってくる。

今しているのは木工。

周囲の山から、適当な木を伐り出して適度な長さの丸太にする。

それを断面からくり抜いていた。

「よし、出来た」

作ったのは臼だった。

そう、餅をつく、アレだ。

つまり……。

「餅つきするぞー!!」

冬の風物詩。

冬と言えば正月、正月といえば餅つき。

この世界で冬に新年を祝うのかどうかは知らんが、冬の静謐を賑わす手段としてはうってつけだろう。

「え? 何やるの? 何やるの?」

「聖者様がまた面白いことを考えたらしい」

「美味しいことだったらいいなあ」

「わかった! あのハンマーで殴り合うんだわ!」

プラティたち人魚組や、オークボたちモンスターチーム。エルロン率いるエルフたちもワイワイガヤガヤ集まってくる。

やっぱり冬場で暇を持て余してるんだろう。

「いいか! これから俺がやるのは餅つきという競技だ!!」

「競技!?」

「我こそはと思う者は奮って参加するがいい! 俺は誰の挑戦でも受ける!!」

テンションが少しおかしいのは寒さに抗うためだ。

既に台所では蒸し器にかけたもち米が蒸し上がっていた。

こんなこともあろうかと冬前普通の米と分けて育てておいたのだ。

あらかじめ協力を頼んでおいたゴブ吉たちが、蒸籠ごともち米を運んで来て、臼の中に落とす。

百聞は一見に如かず、実際に餅をついてみた。

「そーれ、ぺったん、ぺったん」

杵も既に用意してあったので、つつがなく餅つきをする。

もち米の粒がハッキリしていたのが、杵で潰されどんどん一塊になっていく。

「うわあ! 何だかパン生地みたいになっていくわね!」

初めて見る者には、それが一番印象近いか。

何回も搗いて、餅らしくなってきたけれど、やはりこね役がいないと一方向しかつけないな。

「誰か交代しない?」

周りで見ているギャラリーたちに呼びかける。

「で、では私が……!」

こういう時、真っ先に出るのがオークボだ。

俺から杵を受け取ると俺は臼を挟んで対面へ移動する。

「我が君? 何を?」

「いいか? 今からお前が餅を搗くたびに、俺が手でもってひっくり返すから、それを繰り返していくんだ」

そうして偏りをなくし、米の粒が完全に潰れた餅を作り出すのだ!

「なるほど!」

「では始めるぞ! その前に注意しておくが、くれぐれも間違って俺の手を杵で打ったりしないように!」

そんなお約束はいらないからな!

「…………」

「…………」

「…………はい、わかりました」

なんで返答に間を置いたのかな?

「念のために言っておくけど、杵で俺の頭を直撃! とかいうのも絶対なしで」

「……」

「…………」

「…………はい」

信じてるぞ!

信じているからな!!

「はーい、ぺったんぺったん」

「こーねこーね」

妙な緊張感が伴ったが、無事餅がこね上がった。

これでもう出来上がったようなものなのであとは適当な大きさにちぎって皆に配る。

搗きたてだからアッツアツのモッチモチだ。

「うまあああああああッッ!?」

「ハフハフッ! 口の中アツッ!!」

案の定好評だった。

味付けは砂糖醤油。きな粉はまだ作っていないので仕方ない。

あとは海苔で巻いたり、味噌汁に入れたり。

俺もいただいてみた。

搗きたての餅ってこんなに長く伸びるのか。

「凄いこのパン生地みたいなの! どこまでもよく伸びるわ!」

初めて食べるプラティはなおさらビックリしてみる。

「旦那様! アナタまた、こんなに美味しいものを作り出して!」

「聖者様は神様です! どうしてこんなに広い知識をお持ちなんですか!?」

餅だけに。

いや。

「だがしかし、取っておきがまだ残っている……!」

「ッ!? まだ美味しいものがあるというの!?」

ここに取り出だしましたる、お椀に注がれた真っ黒な飲み物。

ぜんざい。

小豆が主原料の温かくて甘い飲み物だ。

そこに搗きたての餅をイン。

アイハブアぜんざい。アイハブア餅。

餅入りぜんざい。

「「「「きゃぴゃああああああああーーーーーーーッッ!?」」」」

プラティ始め女の子たちの歓喜の悲鳴が上がった。

鼓膜に突き刺さりそうな高周波音。

「なにこれ!? 甘いぜんざいにフワフワのお餅がああああッッ!?」

「白と黒のコラボレーション!?」

「これこそ甘味と食感の黄金配合!?」

白なのか黒なのか黄金なのかハッキリしろ。

「皆喜んでくれたようで本当によかった」

もち米はまだまだたくさんあるからたくさん搗いて、食べきれない分は固めて保存しておこう。

今度は俺だけじゃなく、皆も順番で餅つきに挑戦だ。

「絶対に手とか頭とかぶつけないでよね。絶対だからね!」

「は、はい……!」

やっぱり皆、前フリを忘れなかった。

実際は前フリじゃないんだけど。

こうして冬の寒い一日は、寒さを忘れるように過ぎ去っていった。

* * *

数日後。

ヴィールから怒られた。

「ズルいぞご主人様! おれがいない間に皆で美味いものを食ったんだって!?」

うるさい。

お前が一人で寒さを逃れてダンジョンに篭ってるのが悪いんだろうが。